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台風シーズンの長い小笠原諸島 強い台風20号が接近・通過

饒村曜気象予報士
小笠原諸島に接近中の台風20号の雲(10月26日21時)

小笠原諸島へ台風20号の接近

 日本の南海上にある台風20号が発達しながら北上しています(タイトル画像参照)。

 10月28日(木)には強い勢力となって小笠原諸島に接近・通過する見込みです(図1)。

図1 台風20号の進路予報と海面水温(10月26日21時)
図1 台風20号の進路予報と海面水温(10月26日21時)

 台風情報は最新のものをお使いください

 八丈島など伊豆諸島南部では暴風域に入る可能性はありませんが、小笠原諸島では、28日昼前から夜遅くにかけて、暴風域に入る確率が80パーセントを越えています(図2)。

図2 小笠原諸島が台風20号により暴風域に入る3時間ごとの確率
図2 小笠原諸島が台風20号により暴風域に入る3時間ごとの確率

 小笠原諸島では暴風や高波に厳重に警戒し、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水に注意、警戒してください。

 台風の中心付近の海面水温は、台風が発生・発達する目安となる27度を上回る29度以上であり、小笠原諸島付近までは27度以上の海面水温です。

 台風が温帯低気圧に変わるのは、小笠原諸島を通過し、日本の東海上に達した29日(金)になってからです。

 東日本に接近する可能性はなくなりましたが、台風20号または台風20号から変わった低気圧からのうねりがはいってきますので、東日本の太平洋岸でも高波に注意が必要です(図3)。

図3 波浪予想図(10月29日15時の予想)
図3 波浪予想図(10月29日15時の予想)

伊豆諸島および小笠原諸島への接近数

 台風の接近は、台風の中心が気象官署等から300キロ以内に入った場合をさします。

 平成3年(1991年)から令和2年(2020年)の30年間の平均値を平年値といいますが、台風の日本への接近数の平年値は11.7個です。

 月別には、8月と9月が一番多く、次いで7月で、10月は4番目です。

 しかし、伊豆諸島および小笠原諸島に接近した台風数となると、一番多いのは9月の1.5個、次いで、10月の1.3個と、季節が進んでからの接近が多くなります(図4)。

図4 月別の日本への台風接近数と伊豆諸島・小笠原諸島への接近数
図4 月別の日本への台風接近数と伊豆諸島・小笠原諸島への接近数

 平成15年(2003年)12月1日に台風21号が伊豆諸島・小笠原諸島に接近したように、12月も30年に1回くらいは接近していますが、10年に1回以上接近する月は、4月~11月です。

伊豆諸島・小笠原諸島の台風シーズンは、4月~11月と、他の地方に比べて長くなっています。

 台風について、いろいろな統計が作られているのは、昭和26年(1951年)以降です。

 これによると、伊豆諸島・小笠原諸島への接近数が一番多かったのは、昭和43年(1968年)の10個、少なかったのは昭和48年(1973年)の1個です。

 平均は5.4個と平年値と同じ数字です(図5)。

図5 伊豆諸島・小笠原諸島への年間台風接近数
図5 伊豆諸島・小笠原諸島への年間台風接近数

 令和3年(2021年)も、5月に台風5号が、8月に台風10号が、10月に台風16号が接近しており、台風20号が4個目となっても、平年より少ない接近数です。

タイトル画像、図1、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図4、図5の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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