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初の大学入学共通テストは、強い寒気南下の中で実施の可能性あり

饒村曜気象予報士
大学入学のための共通試験のイラスト

今年は寒冬

 令和2から3年(2020から2021年)の冬は、前年の暖冬から一変し、これまでで3回強い寒気が南下しています。

 1回目は12月14日頃から南下したもので、群馬県みなかみ町藤原では12月15日16時から17日16時までの48時間に199cmも降るなど、日本海側を中心に記録的な大雪となっています。

 集中豪雪の影響で、新潟・群馬県境の関越自動車道では、16日夜からの交通障害で1000台以上の車が立ち往生したことから、新潟県では自衛隊に災害派遣を要請しています(後に2000台以上の車が立ち往生していることが判明)。

 2回目は年末年始の強い寒気の南下で、西日本にも寒気がおりてきましたので、北日本の日本海側や北陸だけでなく、山陰地方まで大雪となり、鳥取県大山では12月30~31日の2日間に104cmの降雪がありました。今冬は寒気が次々に南下しています。

 3回目の強い寒気の南下は、1月7日から8日で、東北の日本海側から北陸地方、西日本の日本海側のみならず、普段は雪の少ない九州でも雪が降りました。

 特に、北陸地方では短時間に強い雪が降り、初めて「顕著な大雪に関する気象情報」が発表されました。

 この「顕著な大雪に関する気象情報」は、試験運用が始まったのは平成30年(2018年)12月25日からで、新潟県、富山県、石川県、福井県の4県が対象でした。

 正式運用は平成31年(2019年)11月13日からで、試験運用の4県に山形県、福島県の会津地方が加わった6県が対象です。

 過去6時間に顕著な降雪が観測され、その後も大雪警報の発表基準を一定量上回ると思われる時に発表されます。

 数年に一度の記録的な大雪への注意を速やかに呼びかけることで、市民生活への影響の低減を狙っている情報で、記録的短時間大雨情報の雪版ともいえるでしょう。

 なお、「顕著な大雪に関する気象情報」発表のきっかけとなったのは、平成30年(2020年)2月に発生した福井県を中心とする北陸の大雪です。

 そして、今週末には、4回目の強い寒気が南下してくる予想です。

 1月15日に朝鮮半島付近に発生した低気圧が、発達しながら日本海から北日本をつうかし、その後、西高東低の冬型の気圧配置になるからです(図1)。

図1 予想天気図(1月15日9時の予想)
図1 予想天気図(1月15日9時の予想)

大学入学共通テスト

 4月に入学となると、1~2月に入学試験となりますが、この頃は、一年で一番寒い時期です。しかも、天気は、全国各地で大きく異なることが多い季節です。

 大学の入学試験の方法は、時代とともに変わっており、今年度から実施されるのが大学入学共通テストです。

 令和3年(2021年)1月16日(土)と17日(日)に最初の大学入学共通テスト(第一日程)が行われますが、この頃に今冬4回目の強い寒気が南下してきます。

 北海道は雪、北日本の日本海側と北陸では雨か雪の予想で、気温は全国的に前日までと比べて低くなってきます(図2)。

図2 全国の天気予報(1月16日(土)の予報)
図2 全国の天気予報(1月16日(土)の予報)

 このような天気の中で、大学入学共通テストの1日目が始まります。

 翌日の大学入学共通テストの2日目の天気分布は1日目と似ていますが、気温はさらに下がってきます。

 1日目で雨の地方も、2日目は雪に変わるところがある見込みです(図3)。

図3 全国の天気予報(1月17日(日)の予報)
図3 全国の天気予報(1月17日(日)の予報)

 日本列島に南下する寒気の目安として、上空約5500mの気温が使われます。

 上空約5500mの気温が氷点下30度以下なら強い寒気、氷点下36度以下なら非常に強い寒気で大雪の可能性もあります。

 週末に南下してくる4回目の強い寒気は、現時点の予想では、これまでで一番強かった3回目の寒気よりは弱い見込みです(図4)。

図4 上空約5500mの気温予想(1月16日夜の予想)
図4 上空約5500mの気温予想(1月16日夜の予想)

 とはいえ、氷点下36度以下の非常に強い寒気は北日本まで南下してきますし、氷点下30度以下の寒気も、関東北部から北陸まで南下してきます。

大学入学共通テストが8月に行われたら

 全国一斉の試験ですので、受験生が天気によって大きな不利にとなる地方がでないよう、試験に関係する多くの人が、当日の天気予報をもとに対策をとっています。

 つまり、試験を受けるのは受験生だけではありません。試験の関係者は、当日の天気の問題についての試験が行われているのです。

 順調に試験が行われてあたりまえ、順調でなければ非難をうけるという責任を伴った受験です。

 現在の日本の大学のほとんどは、4月入学ですが、欧米の大学のように、大学入学が10月となり、全国一斉試験が8月となった場合はどうなるのでしょうか。

 暑さ対策が必要ですが、多くの年は冬ほどの地域差がでません。ただ、台風がやってくる年があり、その場合は、深刻な影響がでる可能性があります。

 試験関係者に対する「当日の天気の問題」は、1月試験の場合は難しい年が多く、8月試験の場合は易しい年が多くても、極端に難しい年が交じっているという、どちらにしても、大変です。

 試験の規模が全く違いますが、気象予報士試験は、毎年1月と8月に、全国6か所(北海道、宮城県、東京都、大阪府、福岡県、沖縄県)で一斉に行われます。

 令和3年1月31日(日)に行われる予定の気象予報士試験は、55回目ですが、この間、気象が原因で中止となったのは、38回(平成24年(2012年)8月)の沖縄県の1回だけです。

 1月の中止はありません。

 この38回の気象予報士試験では、大型で非常に強い台風15号が沖縄県に接近したための、沖縄県だけの中止で、沖縄県の受験生に対しては、後日、全く違った問題を使って再試験が行われました。

 受験生は、最新の気象情報の入手に努め、寒さ対策などをして実力を発揮してください。

 どんなに寒い冬でも、春の訪れが多少遅くなることはあっても、必ず暖かい春がやってきます。

タイトル画像の出典:饒村曜(平成10年(1998年))、天気のしくみ、新星出版社。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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