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日本は晩秋でも台風21号と台風22号が同日発生

饒村曜気象予報士
日本海の寒気を伴う筋状雲と南海上の3つの雲の塊(11月9日15時)

晩秋の気温

 日本列島は東側に低気圧、西側に高気圧がある、冬に多く発生する「西高東低の気圧配置」となっています。

 「西高東低の気圧配置」になると、北よりの風が吹き、寒気が日本海に南下します。

 そして、相対的に暖かい日本海から熱と水蒸気の補給を受けて大気が不安定となって積雲や積乱雲が発生し、筋状に並びます。

 この筋状に並んだ雲は、北よりの風によって日本海側の地方に流入し雨や雪を降らせています(タイトル画像参照)。

 一方、太平洋側では晴れて乾燥しています。

 晩秋の「西高東低の気圧配置」は長続きせず、すぐに移動性高気圧におおわれて日本海側の地方をふくめ、ほぼ全国的に晴れの日が多くなります(図1)。

図1 各地の週間天気予報
図1 各地の週間天気予報

 しかし、気温は晩秋らしい気温に下がっています。

 そして、冬に向かうにつれ、「西高東低の気圧配置」が頻繁に現れるようになり、しかも長続きをして、より強い寒気が南下してきます。

台風の同時発生

 日本列島は晩秋らしい気温となっていますが、日本の南海上では、まだ夏が残っています。

 11月9日3時には、南シナ海で台風21号が発生しました。

 北西太平洋または南シナ海で発生する台風防災に関する各国の政府間組織である台風委員会(日本含む14カ国等が加盟)は、平成12年(2000年)から、加盟国などが提案した名前(アジア名)を付けています。

 国際協力で台風災害を防ごうとするシンボルが、この台風のアジア名です。

 台風21号は、「アータウ(Etau)」というアメリカが用意した名前がついています。

 意味は「嵐雲」です。

 台風21号は、台風が発達する目安となる海面水温が27度以下の海域を進みますので、あまり発達することなく西進してベトナムに上陸しそうです(図2)。

図2 台風21号の進路予報(11月10日3時の予想)と海面水温
図2 台風21号の進路予報(11月10日3時の予想)と海面水温

 あまり発達することはないといっても、ベトナムの令和2年(2020年)6個目の上陸台風になりそうです。

 台風21号が発生した12時間後、フィリピンの東海上で台風22号が発生しました。

 11月に台風が同じ日に2個発生するのは、昭和26年(1951年)以降の70年間で4回目ですので、ほぼ20年に1回の現象です。

 この台風は、台風が発達する目安となる海面水温が27度を上回る29度くらいの海域を進みますので、強い台風に発達してフィリピンのルソン島に上陸しそうです(図3)。

図3 台風22号の進路予報(11月10日3時の予想)と気象衛星から見た雲
図3 台風22号の進路予報(11月10日3時の予想)と気象衛星から見た雲

 台風22号の進路予報は最新のものをお使いください

 台風22号のアジア名は、ベトナムが用意した「ヴアムコー(Vamco)」です。

 意味は、ベトナム南部の川の名前です。

 台風22号は、フィリピンに上陸した後、南シナ海を発達したまま西進の予報ですので、ベトナムにとっては、令和2年(2002年)の7個目の上陸台風になるかもしれません。

 さらに、台風22号の約1500キロくらい東にも発達した積乱雲の塊があります。

 地上天気図では、低圧部に対応しています(図4、タイトル画像参照)。

図4 予想天気図(11月10日9時の予想)
図4 予想天気図(11月10日9時の予想)

 天気図上で低気圧は、中心がはっきりわかるので、その中心に「×」を記入し、「低」または「L」と記入します。

 しかし、低圧部は、周囲から見れば気圧が低いというもので、中心がはっきりしませんので、天気図上では「×」を記入せずに、「低」または「L」と記入します。

 熱帯域の低圧部は、この領域から中心がはっきりした渦である熱帯低気圧が発生することがあります。

 つまり、台風のタマゴのタマゴということができるでしょう。

 今後の動向が気になります。

台風シーズン後半は台風発生ラッシュ

 令和2年(2020年)は、台風の統計が作られている昭和26年(1951年)以降はじめて、7月の台風発生数がゼロとなるなど、台風シーズン前半は、7月までは台風の発生が少ないものでした。

 しかし、10月の台風発生数が平年の約2倍の7個となり、これまで最多だった平成25年(2013年)、平成4年(1992年)、昭和59年(1984年)と並んで、最多タイの記録となるなど、台風シーズン後半は、台風発生ラッシュです(表1)。

表1 令和2年(2020年)の台風発生数(上段)と上陸数(中段)および台風の平年値(下段)
表1 令和2年(2020年)の台風発生数(上段)と上陸数(中段)および台風の平年値(下段)

 11月も2個発生し、早くも11月の平年値の値です。

 平年並みの台風発生数まで、あと4個です。

台風の国別上陸数

 現時点で、令和2年(2020年)の台風の国別上陸数をみると、一番多いのがベトナムの5個で、フィリピンと中国(台湾を除く)の4個、韓国の3個、北朝鮮の2個の順です(表2)。

表2 令和2年(2020年)の台風の国別上陸数(11月9日現在)
表2 令和2年(2020年)の台風の国別上陸数(11月9日現在)

 そして、台湾と日本は台風上陸数が0個です。

 例年では、日本、ベトナム、台湾が約2個の台風上陸、韓国や北朝鮮は0.5個未満の台風上陸(2年に1個も上陸しない)となっていますので、令和2年(2020年)の国別の台風上陸数には次のような特徴があります

・ベトナムへの台風上陸数がかなり多い。

・韓国と北朝鮮への台風上陸数が記録的に多い。

・中国への台風上陸数が例年に比べれば少ない。

・台湾と日本への台風上陸数が0。

 

 日本の台風シーズンは終わっても、アジアの台風シーズンは続いています。

タイトル画像、図1、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図4の出典:気象庁ホームページの図に著者加筆。

表1の出典:気象庁ホームページ。

表2の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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