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近年10月の上陸台風が増えている 台風14号が沖縄・西日本へ

饒村曜気象予報士
予想天気図(10月8日9時の予想)

台風14号の発達

 日本の南海上で台風14号が発達しています。

 10月4日(日)頃から雲の塊が集まりだし、台風14号が発生した5日(月)15時の時点では、まだ台風中心の北西側には雲があまりありませんでした(図1)。

図1 台風14号の雲の変化(左から10月4日15時、5日15時、6日15時)
図1 台風14号の雲の変化(左から10月4日15時、5日15時、6日15時)

 それが、6日(火)15時になると、台風の眼の中心を取り巻くように雲の渦巻きができ、発達したことを示しています。

 台風が発達する目安の海面水温は27度といわれていますが、台風14号が存在している海域の海面水温は29度もあります。

 そして、台風14号が進む海域の温度も27度以上です(図2)。

図2 台風14号の進路予報(10月6日21時の予報)
図2 台風14号の進路予報(10月6日21時の予報)

 台風の進路予報は、最新のものをお使いください

 このため、台風は発達を続け、中心気圧が960ヘクトパスカルの強い台風に発達する予報となっています。

難しい進路予報

 台風14号は秋の台風に間違いがないのですが、いわゆる秋台風とは違っています。

 10月の台風の多くは、秋になっても海面水温が高い緯度10度から20度の海域で発生し、そこで西進しながら十分に発達し、のち北上し、偏西風にのって加速しながら北東進して日本へ接近してきます。

 このため、秋の台風の多くは速い移動速度で日本に接近します。

 しかし、台風14号の発生緯度は北緯22.2度と、秋の台風の割には高緯度の日本の近くで発生しています。

 これは、日本の南海上では、海面水温が平年より1度以上高いことが原因の一つと考えられます。

 そして、日本の近くで西進しながら発達して西日本・沖縄に接近し、その後、北上ということですので、いわゆる秋台風のように日本接近時の速度は速くありません。

 また、台風を動かす上空の風が弱いために進路予報が難しく、これを反映して、非常に大きな予報円となっています。

 10月10日(土)の夜は「近畿地方から沖縄のどこかに」、11日(日)の夜は、「東北地方から中国・四国のどこかに」台風14号が進んでくるという予報です。

 このように進路予報が難しい台風14号ですが、気象庁が発表している暴風域に入る確率を見ると、沖縄県大東島地方では、8日(木)12時から15時が一番高くなっており、この頃に最接近と思われます(図3)。

図3 沖縄県大東島地方と鹿児島県奄美地方北部が暴風域に入る確率
図3 沖縄県大東島地方と鹿児島県奄美地方北部が暴風域に入る確率

 また、鹿児島県奄美地方北部では9日(金)3時から6時頃に最接近と思われます。

 そして、東日本から西日本の広い範囲が予報円の中に入っています。

 令和2年(2020年)は、これまで台風の上陸がありません。

 台風14号は、令和2年(2020年)初の上陸台風になるかもしれません。

台風の遅い上陸

 気象庁では、台風の気圧が一番低い場所が、九州・四国・本州・北海道の上にきたときを「台風上陸」といいます。

 島の上の通過や、岬を横切って短時間で再び海に出る場合は上陸ではありません。

 この定義による台風上陸数は、平年(昭和56年(1981年)から平成22年(2010年)の30年平均)では2.7個です(表1)。

表1 令和2年(2020年)の台風発生数と上陸数、および平年値
表1 令和2年(2020年)の台風発生数と上陸数、および平年値

 そして、台風の上陸が一番多いのは8月の0.8個、次いで9月の0.8個などとなっていますが、10月も0.2個上陸しています。

 つまり、5年に1回は10月に台風が上陸しています。

 台風の統計が作られている昭和26年(1951年)以降、令和元年(2019年)までの69年間では、10月以降に台風が19個上陸しています(表2)。

表2 遅い上陸台風(昭和26年(1951年)以降)
表2 遅い上陸台風(昭和26年(1951年)以降)

 昭和26年(1951年)からの30年間で7個、昭和56年(1981年)からの30年間で8個、平成23年(2011年)からの9年間で4個(30年換算で13個)の19個です。

 つまり、近年は10月以降に上陸する台風が増えているといえそうです。

 なお、台風の上陸が一番遅かったのは、平成2年(1990年)の台風28号で、11月30日に和歌山県白浜町付近に上陸しました。

 当時、気象庁予報課の予報官で、予報当番の関係でこの台風の上陸情報を作成しました。

 それまで11月の上陸台風はなく、あと1日遅ければ12月の上陸台風となるということで、季節外れの台風であること、大雨警戒に加えて大雪警戒も必要ということなどを加味しなければならず、情報作成で苦労したことを思い出します。

 昭和26年(1951年)以降の上陸台風の推移をしめしたのが図4です。

図4 台風上陸数の推移
図4 台風上陸数の推移

 昭和26年(1951年)から昭和58年(1983年)までは、上陸数の最大が5個、最小が1個と台風が上陸しない年はありませんでした。

 しかし、昭和59年(1984年)に初めて上陸数が0個となるなど、ときどき上陸数が0の年が出現するようになりました。

 その反面、平成16年(2004年)は上陸数が10個となるなど、上陸が多い年も増えています。

 台風の上陸は、10月以降の上陸が増えていると同時に、年間発生数の変動が大きくなっています。

 過去の常識と呼ばれるものは、変わってきているのかもしれません。

 

 台風14号の動きが遅いということは、風や雨の継続時間が長くなるということから、大災害が発生する危険性があります。

 しかも、台風14号によって日本の南海上にある前線の活動が活発となり、台風接近前から大雨の懸念もあります(タイトル画像参照)。

 台風の動きが遅く、進路がはっきり定まっていませんので、最新の気象情報に注意し、警戒することが大事です。

タイトル画像、図3、表1の出典:気象庁ホームページ。

図1の出典:ウェザーマップ資料をもとに著者作成。

図2の出典:ウェザーマップ提供。

図4、表2の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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