台風11号発生 令和2年の台風は南シナ海と東シナ海がキーワード
初めての5日先までの熱帯低気圧情報
気象庁では、24時間以内に台風になると予測した熱帯低気圧を、「発達する熱帯低気圧」とし、情報を発表しています。
令和2年(2020年)9月15日15時に南シナ海にある熱帯低気圧についても、「発達する熱帯低気圧」の情報を発表しました(図1)。
南シナ海の海面水温は、台風が発生する目安とされる27度をはるかに超える30度ですが、台風が急発達することなく西進してインドシナ半島に上陸するという、日本には直接影響がないという予報です。
そして、初めての5日先までの熱帯低気圧の予報です。
というのは、令和2年(2020年)9月9日15時までの「発達する熱帯低気圧」の情報は、24時間先の予報まででした。
従って、気象庁が特別警報を発表する可能性のあった令和2年(2020年)の台風10号の発生直前の8月31日21時の「発達する熱帯低気圧」の予報は、小笠原近海の熱帯低気圧が24時間以内に台風になるというもので、日本に影響するかどうかは、分からないものでした(図2)。
しかし、その24時間後、9月1日21時に熱帯低気圧が発達して台風10号が発生したときの予報は、5日先にかなり強い勢力で西日本に襲来するというものでした。
もし、台風10号のときから熱帯低気圧の予報が5日先までであったなら、熱帯低気圧発生の段階で、西日本に影響するとの情報が発表されたと思います。
遅い台風の発生ペース
南シナ海の熱帯低気圧は、発達して9月16日3時に台風11号になりました。
台風統計のある昭和26年(1951年)以降で、5番目の遅い発生です(表)。
台風11号の発生が一番遅かったのは、平成10年(1998年)の10月15日9時で、この年の年間発生数は16個でした。
台風11号の発生が遅い年は、台風の年間発生数も少ないということができますが、上陸数も少ないというわけではありません。
どの年も、台風は日本に複数上陸しています。
令和2年(2020年)は偏った台風経路
令和2年(2020年)に、これまで発生した10個の台風のうち、半分の5個は南シナ海で発生しています(図3)。
台風1号、2号、3号、6号、7号の5つ、全て南シナ海から出ていません。
また、残りのうち4つ(台風4号、5号、8号、9号)は、沖縄の南海上で発生し、北上して沖縄近海を通過し、東シナ海を北上しています。
南シナ海と沖縄の南海上以外で発生した台風は、台風10号しかありません。
その台風10号も、小笠原近海で発生したあと、奄美大島付近を通って東シナ海を北上しています。
つまり、今年の台風のキーワードは南シナ海と東シナ海です。
9月16日に発生した台風11号も南シナ海でした。
ラニーニャ現象の発生
現時点で、日本に影響する台風はありませんが、気象庁は9月10日に「ラニーニャ現象が発生したとみられる」と発表しました。
平成29年(2017年)秋以来3年ぶりで、令和3年(2021年)2月頃まで続く可能性が高いとしています。
ラニーニャ現象とは、東部太平洋の赤道域で海面水温が平年より低くなる現象です(図4)。
ラニーニャ現象に対応して、フィリピン近海など、西部太平洋の赤道域で海面水温が高くなり、雲の発生が多く、台風が発生しやすくなります。
つまり、台風が北上して日本に影響する可能性が高くなります。
前回のラニーニャ現象が発生したばかりの平成29年(2017年)10月は、西日本・東日本ともに記録的な雨となり、10月22日の衆議院選挙の投開票日は、超大型の非常に強い台風21号が東日本に接近しています。
そして、23日3時頃、超大型の強い勢力で静岡県掛川市付近に上陸し、死者8名、住家被害3000棟、浸水被害8000棟などの被害が発生しています。
令和2年(2020年)は、今の所、台風の発生数が少なく、上陸数は0個ですが、しばらくは台風に注意が必要です。
(本記事は、投稿直後に台風11号が発生したため、記事の一部を書き換えました。)
タイトル画像、図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。
図3、表の出典:気象庁資料をもとに著者作成。
図4の出典:気象庁ホームページ。