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「台風一過」のイメージとは違う 台風10号通過後の猛暑

饒村曜気象予報士
日本海西部を北上する台風10号の雲と東海地方を中心とした雲(9月7日15時)

「台風一過」

 騒動が収まり晴れ晴れすることを「台風一過」といいます。

 台風が通り過ぎたあと、空が晴れわたって過ごしやすい天気になることから転じた言葉ですが、ここでいう台風は秋の台風です。

 秋の台風の通過後は、北からの涼しい空気を南下させることが多いからです。

 特別警報を発表する可能性のあった台風10号は、中心気圧が920ヘクトパスカルまでさがり、あまり勢力を落とさずに奄美大島から九州の南海上を北上し、九州・沖縄地方は、暴風と大雨などで大きな被害が発生しました。

 台風10号は朝鮮半島に上陸後、日本海西部を北上していますが、日本列島は空が晴れわたって過ごしやすい天気にはなっていません。

 台風10号の東側には停滞前線ができていますが、西側には前線ができていません(図1)。

図1 地上天気図(9月7日21時)
図1 地上天気図(9月7日21時)

 晴天をもたらす寒気の南下がないからです。

 地上天気図では、太平洋高気圧に覆われていますが、南海上から発達した雲が次々に北上しているため、東海地方を中心に局地的な大雨となっています(タイトル画像参照)。

 局地的な大雨ですので、晴れている地域も多く、晴れているところは気温が高く、湿度も高くなっています。

 つまり、熱中症の危険が高くなっています。

台風10号通過後の熱中症

 台風10号通過後の9月8日、関東や北陸などで、熱中症警戒レベルが「極めて危険」や「危険」の所があります(図2)。

図2 熱中症警戒レベルの日最高値の予想(9月8日)
図2 熱中症警戒レベルの日最高値の予想(9月8日)

 「台風10号一過」は、局地的大雨に注意するとともに、熱中症にも注意が必要です。

 日本列島は太平洋高気圧に覆われる状態が続きますので、この猛暑は、東日本は今週いっぱい、西日本は来週も続きます。

 ただ、ウェザーマップの発表した各地の10日先までの最高気温予報では、猛暑日(最高気温が35度以上の日)は、台風10号が持ち込んだ暖気とフェーン現象によって気温が上昇した、8日の仙台と新潟だけです。

 晴れて日射があっても、真夏日(最高気温が30度以上の日)になっても、猛暑日には届かなくなっています。

 その真夏日も、来週後半にはとぎれそうです(図3)。

図3 各地の10日先までの最高気温予報(ウェザーマップによる)
図3 各地の10日先までの最高気温予報(ウェザーマップによる)

 「台風一過」という言葉が示す、事実上の秋の到来は、まだ先ですが、厳しかった令和2年(2020年)の猛暑も、終わりが見えてきました。

 

タイトル画像、図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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