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台風8号が発生し沖縄へ、四国沖の亜熱帯低気圧にも注意

饒村曜気象予報士
日本を襲う台風8号と亜熱帯低気圧の雲(8月22日9時)

台風8号の発生

 台風8号(アジア名は「バービー」)が、8月22日9時に沖縄県・与那国島の南海上で発生しまし、北上しています(図1)。

図1 台風8号の進路予報と海面水温(8月22日12時)
図1 台風8号の進路予報と海面水温(8月22日12時)

 台風の進路予報は、最新のものをお使いください。

 台風8号が発生した海域は、与那国島の南南西約110キロですから、発生と同時に先島諸島は台風の影響下に入っています。

 台風8号の東側や南側には、活発な雨雲が広がっていますので、沖縄県では24日にかけて、大気の状態が非常に不安定となり、大雨となるおそれがあります。

 23日6時までの雨量は、多い所で250ミリ、その後の24時間で200~300ミリの見込みですので、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水に警戒が必要です。

 また、台風8号は、海面水温が台風の発達する目安とされる27度以上の海域を北上するため、発達することが予想されており、次第に強い風が吹くようになります。

 台風8号は、北上しながら発達しますので、週末から週明けは、西日本でも暴風域に入る可能性があります。

 気象庁が発表している、5日先までの暴風域に入る確率によると、九州が暴風域に入るのは26日の水曜日になりそうです(図2)。

図2 台風8号により福岡県福岡地方と鹿児島県鹿児島・日置地方が暴風に入る確率
図2 台風8号により福岡県福岡地方と鹿児島県鹿児島・日置地方が暴風に入る確率

 まだまだ先のことであり、確率の値は小さいのですが、九州南部は26日の昼前、九州北部は26日の昼過ぎに暴風域に入る確率の値が一番高くなっていますので、この頃が最接近と考えられます。

 台風8号の発達の程度や、台風進路によって、影響の度合いが大きく変わりますので、西日本では、最新の台風情報の入手に努めてください。

 警戒すべきは、台風8号だけではありません。

 四国の南海上の亜熱帯低気圧も要注意です。

四国の南海上の亜熱帯低気圧

 地上天気図を見ると、四国沖に小さな低気圧があって停滞しています(図3)。

図3 地上天気図(8月22日9時)
図3 地上天気図(8月22日9時)

 この低気圧は、ただの低気圧ではありません。

 一般的に、低気圧は寒気と暖気が接している場所、つまり前線がある場所で発生します。

 このため、前線を伴なわない台風と違って、発達している低気圧はほとんど前線を伴なっていますので、多くの低気圧の雲は東西に延びた形をしています

 タイトル画像にあるように、台風8号に伴う雲の塊とは別に、四国の南海上には、丸く渦を巻いている雲の塊があります。

 低気圧といっても、熱帯低気圧の性質をもった、ちょっと変わった低気圧、亜熱帯低気圧です。

 この亜熱帯低気圧が、四国沖から東海沖を発達しながら東進する見込みです(図4)。

図4 台風8号と亜熱帯低気圧の風と雨の分布予報(8月23日9時の予報)
図4 台風8号と亜熱帯低気圧の風と雨の分布予報(8月23日9時の予報)

 現時点の予報では、上陸しない可能性が高いのですが、陸地のすぐ近くを東進ですので、少し北上すれば強い雨や風の領域が陸地にかかります。

 台風8号だけでなく、この低気圧にも注意が必要です。

昨年も襲ってきた亜熱帯低気圧

 低気圧は、大別すると、熱帯で発生する熱帯低気圧(最大風速が17.2メートル以上になると台風)と、温帯で発生する温帯低気圧(単に低気圧と呼ぶことが多い)の2種類があります。

 しかし、低気圧の中には、少数派ですが、熱帯低気圧と温帯低気圧の中間の性質を持つものがあります。

 それが「亜熱帯低気圧」で、暴風を伴ない、大雨をもたらすことがあるという点では熱帯低気圧と一緒です。

 ただ、気象庁では一般に馴染んでいないことなどの理由から、「亜熱帯低気圧」という用語は予報用語にはしていません。

 低気圧は、熱帯低気圧と温帯低気圧(低気圧)の2つだけです。

 気象庁では、平成19年(2007年)3月29日に、「気象庁予報用語の改正について」という記者発表を行っています。

 この中で、「天気予報や解説では用いないことから削除した用語」の表に「亜熱帯低気圧」という用語があります。

用語名:亜熱帯低気圧

説明:下層では熱帯低気圧に類似した性質を持つが、上層で寒気を伴なう点で、熱帯低気圧と温帯低気圧の両方の性質を持つ低気圧。上層まで中心付近に暖気を伴なう熱帯低気圧よりも広い範囲で強風が吹く特徴がある。

改正理由:アメリカで熱帯低気圧と区別して警報を発表するようになった。しかし、予報用語で使うには一般に馴染んでいないため。

出典:天気予報や解説では用いないことから削除した用語(平成19年(2007年)3月29日)

 昨年、令和元年(2019年)10月25日の千葉県から東北太平洋側でも亜熱帯低気圧が接近し、大荒れの天気となっています(図5)。

図5 地上天気図(令和元年(2019年)10月25日12時)
図5 地上天気図(令和元年(2019年)10月25日12時)

 千葉県の千葉市付近と八街市付近では、10月25日の13時30分までの1時間に約100ミリの猛烈な雨がふり、千葉県南部から北上して市原市で東京湾に流れている養老川が氾濫するなど、河川の氾濫や土砂崩れが相次ぎ、大きな被害が発生しています。

 つまり、台風15号で大きな被害を受けた千葉県では、台風19号による被害が重なり、そして、亜熱帯低気圧での被害も重なるという、最悪の秋となっています。

 気象庁では、「亜熱帯低気圧」という用語を天気予報や解説では用いないものの、専門家向けの気象指示報や予報解説資料などで使用する用語にしています。

 「亜熱帯低気圧」については、これまで、温帯低気圧か台風(熱帯低気圧)として扱われたため、発生数などの統計はないのですが、ごくまれな現象ではなさそうです。

タイトル画像、図1、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図2、図3、図5の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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