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台風発生はいまだ2個 台風3号はいつ

饒村曜気象予報士
台風3号の可能性がある雲(7月27日15時)

遅い台風発生ぺース

 令和2年(2020年)は、台風の発生ペースが遅く、台風1号が発生したのは5月12日21時と、台風の統計が整備されている昭和26年(1951年)以降の70年間で8番目の遅さでした。

 その後、6月12日21時に台風2号が発生したものの、いまだに台風3号が発生していません。

 平年値のルールは、現在は、昭和56年(1981年)から平成22年(2010年)までの30年間の平均値を用い、来年になると、平成3年(1991年)から令和2年(2020年)までの30年間の平均値が使われます。

 1月から7月までの台風発生数の平年値は7.7個ですが、昭和26年以降の69年間の平均値は8.6個です(表)。

表 台風の月別発生数
表 台風の月別発生数

 近年は、1月から7月の台風発生数は減少傾向にあるとはいえ、約8個は発生しています。

 まもなく7月が終わりますが、この段階で台風が2個しか発生していないというのは、記録的な少なさです(図1)。

図1 1月から7月までの台風発生数
図1 1月から7月までの台風発生数

 7月末まで台風が発生しなければ、令和2年(2020年)は、台風発生数が2個となり、平成10年(1998年)の1個に次ぐ2位の記録です。

 また、7月末までに台風3号が発生すれば、平成22年(2010年)などと2位タイの記録です。

現在の日本の南海上

 日本の南海上は、台風が多く発生する海域で、7月ともなると積乱雲が次々と発生し、台風の卵となる渦が形成されています。

 しかし、令和2年(2020年)は、7月になっても積乱雲があまり発生しませんでした。

 海面水温は27度以上あり、台風が発生するのに必要な豊富な水蒸気がありましたが、上空の大気の流れが対流活動を抑える下降流が卓越していたことなどが原因と考えられています。

 従って、台風の卵となる渦も形成されず、台風の発生もありませんでしたが、ここへきて、積乱雲が増えてきました(タイトル画像の白い円を参照)。

図2 予想天気図(7月29日9時の予想)
図2 予想天気図(7月29日9時の予想)

 気象庁の予想天気図では、7月29日9時にフィリピンの東海上に、低圧部を示す「L」の記号が出現します(図2)。

 低圧部は、周囲より気圧が低くなっている領域で、この中から渦を巻くものが出現し、熱帯低気圧となる可能性があります。

 7月29日の段階で低圧部ですから、このあと熱帯低気圧が発生したとしても、熱帯低気圧が台風に発生するのに1~2日はかかりますので、この海域での台風発生は8月に入ってからとなります。

ハワイ諸島北方を通過した「ダグラス」

 日本の南海上での7月中の台風発生はなさそうですが、日付け変更線を越えて台風が発生する可能性はあります。

 図2の右端にあるのは、7月26日にハワイ諸島の北方を通過した、台風並みの熱帯低気圧「ダグラス」です(タイトル画像の白い二重円参照)。

 台風並みの熱帯低気圧「ダグラス」は、西進を続けていますので、7月中に日付け変更線(東経180度)を越えて、北太平洋に入ってくるかもしれません。

 日付け変更線を越えた時点で、最大風速が台風の基準である毎秒17.2メートル以上の風が吹いていれば、7月中に台風3号が発生することになります。

 台風の定義が、最大風速が毎秒17.2メートル以上の熱帯低気圧で、東経180度以西の北西太平洋にあるものであることから、日付け変更線は、台風変更線でもあります。

 ただ、台風並みの熱帯低気圧「ダグラス」は衰弱傾向にあり、台風3号になるかどうかは微妙です。

タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

図2の出典:気象庁ホームページの図に著者加筆。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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