台風1号が北上中 前線と台風は危険な組み合わせ
台風1号の北上
台風1号がフィリピンを北上中です(図1)。
筆者が昔調査した5月の平均的な台風経路によると、フィリピンを北上した台風が北東に向きを変え、沖縄の南海上を進むことはめずらしくありません(図2)。
まれですが、北上して東海地方から九州南部に接近するものもあります。
気象庁が観測・解析し、台風の統計が行われている昭和26年(1951年)以降で、一番早い台風の上陸は、昭和31年(1956年)の台風3号で4月25日7時半ごろ、鹿児島県大隅半島に上陸しました。
次いで、昭和40年(1965年)の台風6号が5月27日12時頃に千葉県の房総半島に上陸、平成15年(2003年)の台風4号が5月31日6時頃に愛媛県宇和島市付近に上陸と続きます(図3)。
つまり、台風が4~5月に上陸するのは、平均すると、約25年に1回くらいの現象です。
令和2年(2020年)の台風1号は、この約25年に1回の現象にはなりそうにもありません。
というのは、台風1号は暴風域を持っていますが、フィリピンの陸上を北上中ですので、次第に風速は弱まり、沖縄県の先島諸島に接近する5月17日の日曜日には、熱帯低気圧に変わるという予報であるからです。
ただ、これは、あくまで風の強さについての話です。
九州の大雨
令和2年(2020年)は、5月10日に鹿児島県奄美地方が、翌11日には沖縄地方が梅雨入りし、南西諸島は梅雨の季節になっています。
台風の北上に伴って、南から暖かくて湿った空気も北上してきますので、前線が活発化して大雨のおそれがあります。
台風の風が弱まっても、暖かくて湿った空気の北上がなくなるわけではありません。
台風と前線は、いつも危険な組み合わせです。
南西諸島の梅雨前線は、一時的に西日本まで北上の見込みですので、今回の台風と前線の危険な組み合わせは、まだ梅雨入りをしていない西日本でおきるおそれがあります(図4)。
気象庁は5日先までの警報を発表する可能性について、「早期注意情報」として「高」「中」の2段階で注意を呼び掛けています。
これによると、5月16日に大雨警報を発表する可能性は、長崎県で「高」で、福岡など西日本の各地でも「中」となっています(図5)。
翌17日も熊本、宮崎、鹿児島の各県で「中」であり、西日本は雨に警戒が必要な週末です。
来週は沖縄で本格的な梅雨空
ウェザーマップの16日先までの天気予報によると、梅雨に入っている那覇は、連日、黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)がついています(図6)。
ただ、梅雨前線が西日本まで北上する今週末から19日位までは、傘マーク(雨)がない日もありますが、20日以降は10日以上連続して傘マークがついています。
これに対して、鹿児島は、今週末を中心に強い雨が降るものの、その後は、お日様マーク(晴れ)や、白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)が多くなっています。
連続して傘マークがつくのは27日以降です(図7)。
鹿児島のある九州南部は、27日頃に梅雨入りをするかもしれません。
その頃から、梅雨入りの地方が増えてきますし、新たな台風が接近するかもしれません。
梅雨に台風という大雨の季節が始まってしまいましたが、大雨の季節が本格化する前に、新型コロナウイルスの流行を鎮静化させないと、防災活動に支障がでてしまいます。
5月14日に新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が東京・大阪などを除く39県で解除がありましたが、新型コロナウイルスの流行が終息したわけではありません。
引き続き、油断大敵です。
タイトル画像、図1、図5、図6、図7の出典:ウェザーマップ提供。
図2の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。
図3の出典:気象庁資料をもとに著者作成。
図4の出典:気象庁ホームページ。