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台風1号が北上中 前線と台風は危険な組み合わせ

饒村曜気象予報士
梅雨前線の帯状の雲と台風1号の丸い雲(5月14日17時)

台風1号の北上

 台風1号がフィリピンを北上中です(図1)。

図1 台風1号の進路予報(令和2年(2020年)5月15日00時)
図1 台風1号の進路予報(令和2年(2020年)5月15日00時)

 台風の進路予報は、最新のものをお使いください。

 筆者が昔調査した5月の平均的な台風経路によると、フィリピンを北上した台風が北東に向きを変え、沖縄の南海上を進むことはめずらしくありません(図2)。

図2 5月の平均的な台風経路図
図2 5月の平均的な台風経路図

 まれですが、北上して東海地方から九州南部に接近するものもあります。

 気象庁が観測・解析し、台風の統計が行われている昭和26年(1951年)以降で、一番早い台風の上陸は、昭和31年(1956年)の台風3号で4月25日7時半ごろ、鹿児島県大隅半島に上陸しました。

 次いで、昭和40年(1965年)の台風6号が5月27日12時頃に千葉県の房総半島に上陸、平成15年(2003年)の台風4号が5月31日6時頃に愛媛県宇和島市付近に上陸と続きます(図3)。

図3 4~5月の台風上陸
図3 4~5月の台風上陸

 つまり、台風が4~5月に上陸するのは、平均すると、約25年に1回くらいの現象です。

 令和2年(2020年)の台風1号は、この約25年に1回の現象にはなりそうにもありません。

 というのは、台風1号は暴風域を持っていますが、フィリピンの陸上を北上中ですので、次第に風速は弱まり、沖縄県の先島諸島に接近する5月17日の日曜日には、熱帯低気圧に変わるという予報であるからです。

 ただ、これは、あくまで風の強さについての話です。

九州の大雨

 令和2年(2020年)は、5月10日に鹿児島県奄美地方が、翌11日には沖縄地方が梅雨入りし、南西諸島は梅雨の季節になっています。

 台風の北上に伴って、南から暖かくて湿った空気も北上してきますので、前線が活発化して大雨のおそれがあります。

 台風の風が弱まっても、暖かくて湿った空気の北上がなくなるわけではありません。

 台風と前線は、いつも危険な組み合わせです。

 南西諸島の梅雨前線は、一時的に西日本まで北上の見込みですので、今回の台風と前線の危険な組み合わせは、まだ梅雨入りをしていない西日本でおきるおそれがあります(図4)。

図4 予想天気図(5月16日9時の予想)
図4 予想天気図(5月16日9時の予想)

 気象庁は5日先までの警報を発表する可能性について、「早期注意情報」として「高」「中」の2段階で注意を呼び掛けています。

 これによると、5月16日に大雨警報を発表する可能性は、長崎県で「高」で、福岡など西日本の各地でも「中」となっています(図5)。

図5 5月16日(土)に大雨警報発表の可能性
図5 5月16日(土)に大雨警報発表の可能性

 翌17日も熊本、宮崎、鹿児島の各県で「中」であり、西日本は雨に警戒が必要な週末です。

来週は沖縄で本格的な梅雨空

 ウェザーマップの16日先までの天気予報によると、梅雨に入っている那覇は、連日、黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)がついています(図6)。

図6 那覇の16日先までの天気予報
図6 那覇の16日先までの天気予報

 ただ、梅雨前線が西日本まで北上する今週末から19日位までは、傘マーク(雨)がない日もありますが、20日以降は10日以上連続して傘マークがついています。

 これに対して、鹿児島は、今週末を中心に強い雨が降るものの、その後は、お日様マーク(晴れ)や、白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)が多くなっています。

 連続して傘マークがつくのは27日以降です(図7)。

図7 鹿児島の16日先までの天気予報
図7 鹿児島の16日先までの天気予報

 鹿児島のある九州南部は、27日頃に梅雨入りをするかもしれません。

 その頃から、梅雨入りの地方が増えてきますし、新たな台風が接近するかもしれません。

 梅雨に台風という大雨の季節が始まってしまいましたが、大雨の季節が本格化する前に、新型コロナウイルスの流行を鎮静化させないと、防災活動に支障がでてしまいます。

 5月14日に新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言が東京・大阪などを除く39県で解除がありましたが、新型コロナウイルスの流行が終息したわけではありません。

 引き続き、油断大敵です。

タイトル画像、図1、図5、図6、図7の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

図3の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

図4の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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