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奄美と沖縄梅雨入りで南西諸島は梅雨の季節が始まる

饒村曜気象予報士
日本列島をおおう雨雲(5月10日15時)

奄美梅雨入り

 令和2年(2020年)5月10日の母の日は、前線を伴なった低気圧が日本海から北日本を通過し、沖縄を除いて雲が多く、広い範囲で雨が降りました(図1、タイトル画像参照)。

図1 地上天気図(5月10日15時)
図1 地上天気図(5月10日15時)

 そして、この低気圧から延びる寒冷前線が本州を縦断し、東シナ海で停滞前線に変わって中国大陸へ伸びています。

 このため、5月10日に、鹿児島県の奄美地方では梅雨入りしました。

 昨年、令和元年(2019年)より4日、平年より1日早い梅雨入りです。

 また、令和2年(2020年)の梅雨入りの発表は全国で初めてで、沖縄地方より奄美地方が早かったのは、3年連続です。

梅雨入りの平年値

 梅雨がないとされる北海道を除くと、各地の梅雨入り、梅雨明けの平年値は表のようになっています。

表 各地の梅雨入りと梅雨明けの平年値
表 各地の梅雨入りと梅雨明けの平年値

 平年値は、昭和56年(1981年)から平成22年(2010年)までの30年間の平均値で、令和2年(2020年)まで使われるものです。

 この平年値によると、全国で一番早い梅雨入りは沖縄地方で5月9日、これより2日遅れた11日が鹿児島県奄美地方の梅雨入りです。

 令和3年(2021年)以降の平年値は、平成3年(1991年)から令和2年(2020年)までの30年間の平均値が使われますが、直近の10年間では、沖縄地方が奄美地方より早く梅雨入りしたことはありません。

 同日の梅雨入りが10年のうち6年、奄美地方が早かったのは4年です。

 このため、令和3年(2021年)から使われる新平年値では、沖縄地方と奄美地方の平年値は、ほぼ同じとなる可能性があります。

沖縄の梅雨入り

 沖縄の梅雨入りの平年値は5月9日で、ほとんどの年は5月上旬から中旬で梅雨入りをしています(図2)。

図2 沖縄の梅雨入り(昭和26年(1951年)~令和元年(2019年))
図2 沖縄の梅雨入り(昭和26年(1951年)~令和元年(2019年))

 気象庁の週間天気予報では、沖縄地方では前線や湿った空気の影響で曇りの日が多く、雨の降る所がある見込みとなっています。

 ウェザーマップの那覇の16日先までの天気予報では、降水の有無の信頼度が、5段階で一番低いEとか、2番目に低いDが多いのですが、11日以降、傘マーク(雨)や黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)が多く、お日様マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)が少ない予報です(図3)。

図3 那覇の16日先までの天気予報
図3 那覇の16日先までの天気予報

 沖縄地方は、11日にも梅雨入りになるかもしれません。

【5月11日12時追記】

 沖縄気象台は、5月11日の昼前に、沖縄地方が梅雨入りしたとみられると発表しました。

奄美・沖縄以外の梅雨入り

 奄美・沖縄地方の梅雨入りから、約3週間後、他の地方でも梅雨梅雨入りが始まります。

 年によって、どこが先かということは異なりますが、平年値でいうと、奄美・沖縄地方に次いで梅雨入りするのは九州南部で、5月31日が梅雨入り平年値です(図4)。

図4 九州南部の梅雨入り(昭和26年(1951年)~令和元年(2019年))
図4 九州南部の梅雨入り(昭和26年(1951年)~令和元年(2019年))

 ちなみに。九州南部で梅雨入りが一番早かったのは、沖縄の平年の梅雨入りより早い5月1日です。

 昭和31年(1956年)のことですが、この年は、沖縄地方が4月28日、奄美地方が4月30日と、梅雨入りが異常に早い年でした。

 例外的な年を除くと、九州南部での梅雨入りは、5月下旬から6月上旬です。

 ウェザーマップの鹿児島の16日先までの天気予報では、降水の有無の信頼度が、5段階で一番低いEとか、2番目に低いDが多いのですが、11日以降、傘マークや黒雲マークが多いのですが、那覇のように連続していません(図5)。

図5 鹿児島の16日先までの天気予報
図5 鹿児島の16日先までの天気予報

 この予報が変わらなければ、九州南部での梅雨入りは、平年よりかなり早い5月中旬にはなさそうです。

大雨の前に新型コロナウイルス対策の効果

 日本では、毎年のように梅雨や台風による大雨で災害が発生しています。

 その大雨の季節が着実に近づいています。

 新型コロナウイルスの流行中に本格的な雨の季節を迎えると、命を守るために、密集空間に避難する可能性があり、「水害・土砂災害で死にますか、新型コロナで死にますか」という悪夢の選択もありえます。 

 大雨の季節が始まる前に、外出自粛などによって新型コロナウイルス対策の効果が出てくることが必要です。

タイトル画像、図3、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表の出典:気象庁ホームページ。

図2、図4の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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