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北上中の台風21号と前線のない低気圧

饒村曜気象予報士
台風21号の雲(右下)と東シナ海の低気圧の雲(左上)(10月23日15時)

台風21号が小笠原へ

 非常に強い台風21号が北上し、10月24日の明け方から昼前にかけ小笠原諸島にかなり接近する見込みです(図1)。

図1 台風21号の進路予報(10月23日21時)
図1 台風21号の進路予報(10月23日21時)

 台風の進路予報は、最新のものをお使いください。

 小笠原諸島では記録的な暴風が吹くおそれがあり、猛烈なしけとなる見込みです。

 暴風やうねりを伴った高波に厳重に警戒し、土砂災害や低い土地の浸水などに警戒してください。

ちょっと変わった低気圧

 台風20号から変わった低気圧が日本のはるか東海上に去り、北上中の台風21号も日本の東海上を通過する見込みですので、全国的に晴れとなっても不思議ではありません。

 しかし、10月24日(木)の天気予報は、北日本では北海道を中心に晴れる予報ですが、東日本ではくもりや雨の予報です。

 また、西日本では広い範囲で雨が降り、所により雷を伴って非常に激しく降るという予報です。

 これは、東シナ海で発生するちょっと変わった低気圧がゆっくり東進するためです(図2)。

 九州の西海上にあった低気圧が東進するといっても、25日(金)9時の段階で、まだ四国沖です。

図2 予想天気図(10月25日9時の予想)
図2 予想天気図(10月25日9時の予想)

 一般的に、低気圧は寒気と暖気が接している場所、つまり前線のある場所で発生します。

 このため、前線を伴わない台風と違って、低気圧は前線を伴なっています。

 今回、東シナ海から東進する低気圧は、前線を伴なっていない、ちょっと変わった低気圧です。

 しかし、低気圧の動きが遅いことから、大雨となります(図3)。

図3 予想36時間降水量(23日21時~25日9時)
図3 予想36時間降水量(23日21時~25日9時)

 低気圧に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、上空に寒気が流れ込んでいるため、大気の状態が非常に不安定な低気圧です。

 このため、紀伊半島や四国、九州北部では、25日(金)の9時までに200ミリ以上の雨が降り、その後も雨が降り続きます。

雨だけでなく風も

 ちょっと変わった低気圧の雨域は、10月25日(金)には東日本にも広がります。

 気象庁は5日先までに警報級の現象が起きる可能性があるときは、「高」「中」の2段階で早期警戒情報を発表しています。

 雨に関する早期警戒情報、つまり、大雨警報を発表する可能性は、25日の東日本から西日本にかけて「中」となっています(図4)。

図4 雨に関する早期警戒情報(10月25日に大雨警報を発表する可能性)
図4 雨に関する早期警戒情報(10月25日に大雨警報を発表する可能性)

 「中」は、「高」ほど確率が高くないといっても、台風15号や台風19号の被災地では、大雨警報発表の可能性がある雨が降って二次災害の可能性があるという予報ですので、厳重な警戒が必要です。

 ちょっと変わった低気圧は、雨だけではありません。

 北上する台風21号の北側の東風が流入してきますので、雨だけでなく風も強まります(図5)。

図5 北上中の台風21号と西日本の低気圧による雨と風の分布予報
図5 北上中の台風21号と西日本の低気圧による雨と風の分布予報

 東日本から西日本では、台風21号の直接的な影響はほぼないと考えられますが、西日本付近を通過する、前線のない低気圧の雨や風に注意し、警戒する必要があります。

タイトル画像、図1、図3、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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