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まだまだ台風シーズン 台風20号と21号のタマゴ

饒村曜気象予報士
熱帯にある2つの台風のタマゴ(図の白丸、10月15日12時)

秋に多い天気の周期変化

 東日本から北日本に大きな被害が発生した台風19号の通過後の日本列島は、移動性高気圧の張り出しによって、全国的に晴れのところが多くなっています(図1)。

図1 予想天気図(10月17日9時の予想図)
図1 予想天気図(10月17日9時の予想図)

 このような天気は17日(木)も続きますが、週末は、秋雨前線が顕在化し、前線上に低気圧が発生する影響で、全国的に雨が降るでしょう(図2)。

図2 各地の10日間予報(ウェザーマップによる)
図2 各地の10日間予報(ウェザーマップによる)

 週末の雨のあとは、数日の晴れを経て、再び雨となります。

 このような天気の周期変化は、春と秋に多い現象です。

 「移り変わってゆくうちに暑くなる」という春の周期変化と違い、「移り変わってゆくうちに寒くなる」ということから、「男心と秋の空」という言葉もあります。

 現在は、移り変わってゆきながら冷たくなってゆくのは、男性とは限らないので、「女心と秋の空」なのかもしれません。

 ただ今年は、週末のたびに雨となるめぐりあわせとなっていますので、行楽には、最新の気象情報をチェックしてからお出かけください。

熱帯低気圧

 図1の予報天気図にもありますが、現在、フィリピンの東海上には、台風のタマゴである熱帯低気圧があり、西へ進んでいます。

 この熱帯低気圧は、気象衛星から見ても、はっきりとした渦をまいています。

 このまま、発達して台風になるかどうかはわかりませんが、台風になったとしたら、台風20号です。

 図3は、筆者が以前調査した10月の台風の平均経路です。

図3 10月の台風の平均経路(数値は空間平均した存在数)
図3 10月の台風の平均経路(数値は空間平均した存在数)

 フィリピンの東海上で10月に発生した台風は、西進を続けてフィリピンに上陸するものが多いのですが、中には、フィリピン・ルソン島の東海上で急に北上してくるものもあります。

【追記(10月17日10時)】

 フィリピンの東海上で、10月17日3時に熱帯低気圧が台風まで発達し、台風20号になりました。

 また、熱帯低気圧になるまで渦をまいているわけではありませんが、日付け変更線付近の赤道域にも台風のタマゴらしい雲の塊もあります(タイトル画像の右下)。

 こちらも、熱帯低気圧に発達するかどうか、さらに台風にまで発達するかどうかわかりませんが、もし、台風に発達したとすると、台風21号となります。

 台風20号や台風21号が発生し、北上して日本に影響する可能性は低いと思われますが、可能性がゼロではありません。

 過去に、一番遅い上陸台風は、平成2年(1990年)の台風28号です。

 11月30日に和歌山県白浜町の南に上陸しました(表)。

表 台風の遅い上陸
表 台風の遅い上陸

 当時、気象庁予報課の予報官で予報班長でしたが、この年は、和歌山県に台風が4個も上陸した年です。

 そして、この4個の台風、すべてについて台風上陸情報を書きました。

 台風上陸情報は、6人の予報班長のだれかが書くのですが、当番のめぐりあわせでの偶然です。

 後に、和歌山地方気象台長になるという縁があったのかもしれません。

 台風の上陸に伴って強い寒気が南下し、大雨警報の心配と大雪警報の心配が同時にあったのを覚えています。

 

 熱帯には、台風のタマゴが存在しており、令和元年(2019年)の台風シーズンは終わってはいません。

 確率は低いとはいえ、油断できません。

タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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