台風13号が沖縄から東シナ海へ 日本の南の海は雲の渦だらけ
荒れるティーンエイジャー
強い台風13号は、発達しながら石垣島などがある先島諸島の南海上をゆっくり北上しています。
台風は、今後、自転車並みの速度で先島諸島を通過して東シナ海に入り、朝鮮半島に向かう見込みです(図1)。
台風13号は、暴風域(風速が25メートル以上の範囲)が90キロであるのに、最大風速は毎秒40メートル(最大瞬間風速が55メートル)もあるコンパクトで強い台風です。
台風がかなり接近するまで風が強くならず、油断しがちであるということから、危険な台風といえるかもしれません。
沖縄県先島諸島に最も接近するのは、5日昼前から昼過ぎとみられています(図2)。
先島諸島では猛烈な風が吹いて猛烈なしけとなるため、厳重な警戒が必要です。
沖縄本島地方も次第に風が強くなり、5日は暴風となって大しけとなり、6日は猛烈なしけとなる所があるでしょう(沖縄本島最接近は6日明け方)。
また、大雨による土砂災害や低い土地の浸水などにも注意が必要です。
思春期から青年期という多感な時代を「ティーンエイジャー(teenager)」ということがあります。
13歳(thirteen)から19歳(nineteen)ぐらいの少年少女をさすことばで、英語の数字に-teen という語尾がつくことからきています。
昔、40年ほど前に気象庁予報課で勤務していた時、「ティーンエイジャーは荒れる」という言葉がありました。
多くの年では、台風13号から台風19号が発生するのは夏から秋で、日本に接近・上陸するものが多くなります。
そして、洞爺丸台風は昭和29年(1954年)の台風15号、伊勢湾台風は昭和34年(1959年)の台風15号、第2室戸台風は昭和36年(1961年)の台風18号など、過去に大災害をもたらした台風の多くは、ティーンエイジの台風番号です。
日本の南海上は多数の渦
日本の南の海は台風13号など多数の雲の渦があります(タイトル画像参照)。
タイトル画像にある4つの黒い輪は、地上天気図との対応が良い雲の渦です。
西から、台風14号から変わった熱帯低気圧、台風13号、発生したばかりの熱帯低気圧、24時間以内に台風になるとの予報がでている熱帯低気圧です。
また、タイトル画像にある2つの白い輪は、地上天気図との対応がない雲の渦です。
このうち、日本のすぐ下にある雲の渦は、上空の寒気に伴う渦で、一番東の日付変更線の東にある雲の渦は、将来、熱帯低気圧になるかもしれない雲の渦です。
このように、雲の渦が多いときは台風が発達しないと言われています。
というのは、熱帯低気圧や台風のエネルギー源は水蒸気です。
熱帯の海上の豊富な水蒸気を複数の渦で奪い合うことで、一つ一つの渦が大きく発達することはないというのが、その理由ですが、常ではありません。
中には、大きく発達するものもあります。
藤原の効果
2つの台風が接近すると、お互いに干渉しあって通常とは異なる進路をとることがあることを提唱したのは、戦前に「お天気博士」として新聞等で有名であった中央気象台の藤原咲平予報課長(のちの中央気象台長(現在の気象庁長官))でした。
このため、この相互作用のことを「藤原の効果」といいます。
藤原の効果が見られるのは、地表付近にある台風の渦どおしだけでなく、台風の渦と上空の寒気の渦との間でもおきます。
平成30年(2018年)の台風12号が、東海沖を西進するという珍しい経路をとったというのは記憶に新しい所です。
この時は、上空の寒気の渦が日本の南海上まで大きく南下し、台風12号と相互作用を起こしたことが西進した原因の一つです。
図3は、9月6日9時の予想天気図です。
東シナ海を北上中の台風13号に、南シナ海で発生する予定の台風、グアム島の南海上で発生したばかりの熱帯低気圧がありますが、お互いの距離は、藤原の効果がおきるとされる距離、約1000キロよりも大きく離れています。
しかし、台風13号と日本の南海上にある寒気の渦の距離は約1000キロと、藤原の効果がおきるかどうか微妙な距離にあります(図4)。
相互作用が起きれば、台風13号は東に振られて北上が少し遅れますし、起きなければ、そのまま北上します。
台風13号の予報は、簡単な予報ではありません。
最新の台風予報に注意して警戒が必要です。
タイトル画像、図4の出典:ウェザーマップ提供資料に著者加筆。
図1、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。