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消えた梅雨前線は危険な紫外線の前兆

饒村曜気象予報士
青空と太陽(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

暖春

 春は、高気圧と低気圧が交互に通過し、天気が移り変わりやすいというのが一般的な天気ですが、今年は高気圧の次に低気圧がなかなかやってきません。

 高気圧のあとには、気圧の谷と表現される低気圧のようなもので、くもりや雨になるのですが、すぐに次の高気圧がやってきて、日本の東海上で発達します。

 令和になって、ほぼ1ヶ月が過ぎましたが、梅雨の主役であるオホーツク海高気圧は、オホーツク海にありません。

 また、梅雨前線を押し上げ、ジメジメした暑い夏をもたらす太平洋高気圧も、沖縄の南海上にあって、発達していません。

 日本列島は、梅雨前線の北側にある大陸育ちの高気圧(揚子江高気圧)に覆われ、梅雨前線も消え、晴れて気温が上昇している状態が続いています(図1)。

図1 地上天気図(5月24日9時の予想)
図1 地上天気図(5月24日9時の予想)

 海洋上に長くいることで変質して多少湿ってきましたが、大きく見ると、乾燥した空気をおくりこんできますので、乾燥した日が続きます。

 まだ5月ですが、東京など、各地で日最高気温が30度以上という真夏日が続出する予想がでています(図2)。

図2 各地の週間天気予報(気象庁発表)
図2 各地の週間天気予報(気象庁発表)

 特に東京では、日最高気温32度の日を含めて、5日連続で真夏日の予想です。

 ちなみに、東京の5月の最高気温は、第一位が平成27年(2015年)5月31日の32.2度、第2位が平成11年(1999年)5月25日の31.9度ですので、この週間天気予報は、5月の記録を令和早々に書き換える可能性があるという予報です。

東京の5月の真夏日

 東京都心部には、明治8年(1875年)6月5日以降の気象観測が残されています。

 これによると、5月に真夏日(日最高気温が30度以上の日)を観測したのが、明治9年(1876年)5月1日から令和元年(2019年)5月23日までの約144年間に27日あります。

 5月の日数で割ると、0.6パーセントですので、最近増えきたといっても、5月の真夏日は珍しい現象といえます。

 東京での最初の5月の真夏日は、昭和15年(1940年)5月22日です。

 つまり、明治・大正・昭和初期には、5月の真夏日はありませんでした。

 昭和15年(1940年)以降、ときおり5月の真夏日が観測されていましたが、発生しても月に1回でした。

 月に2回以上、真夏日が発生するようになったのは、21世紀にはいってからです。

 平成16年(2004年)に、5月11日、30日、31日の3回、平成27年(2015年)に5月26日、27日、31日の3回です(図3)。

図3 東京の5月の真夏日
図3 東京の5月の真夏日

危険な紫外線

 太陽からの紫外線は、大気を通る距離が長いほど、大気による吸収や散乱で減衰しますので、一般的には、太陽が真上にあればあるほど、地表に降り注ぐ太陽からの紫外線は強くなります。

 このため、紫外線が一番地表に降り注ぐのは、太陽高度が一番高い夏至のころ(6月21日頃)ということができます。

 とはいえ、日本で夏至の頃は、梅雨期間で、曇りや雨によって紫外線が遮られることが多く、紫外線が多いのは、梅雨入り直前か、梅雨明け直後となります。

 勿論、空梅雨であれば、紫外線が強いのは、夏至の頃です。 

 ただ、5月下旬でも、夏至の時よりは低いといっても、7月中旬程度の太陽高度です(図4)。

図4 東京の太陽高度
図4 東京の太陽高度

 紫外線が多量に降り注ぐ季節に、すでに入っています。

 ただ、5月下旬の気温は7月中旬の気温に比べれば低く、過ごしやすいことから、より長時間にわたって屋外で過ごしがちとなります(表)。

表 東京における太陽高度と平均・最高・最低気温
表 東京における太陽高度と平均・最高・最低気温

 

 週末は、運動会など、屋外行事が多数計画されています。

 記録的な暖春で真夏日になるという予報でも、真夏の暑さに比べれば気温がまだ低く、乾燥していますので、過ごしやすい暑さでの、雨に邪魔されることはない屋外行事になると思います。

 しかし、梅雨期に消えた梅雨前線は危険な紫外線の前兆です。

 同じ紫外線の量でも、長時間浴びがちです。

 5月下旬の紫外線は、7月中旬の紫外線より危険という認識で、十分な紫外線対策が必要です。

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供。

図3の出典:気象庁資料を元に著者作成。

図4の出典:東京天文台資料をもとに著者作成。

表の出典:東京天文台資料と気象庁資料をもとに著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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