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沖縄で梅雨入り発表も、すぐに梅雨の中休み

饒村曜気象予報士
沖縄県那覇市の梅雨空(5月16日に田地香織気象予報士撮影)

沖縄で梅雨入り

 令和元年(2019年)5月16日(木)、沖縄地方は前線の影響で曇っており、雨が降っていることから、沖縄気象台は梅雨入りしたと見られると発表しました(図1)。

図1 沖縄が梅雨入りした日の地上天気図(5月16日9時)
図1 沖縄が梅雨入りした日の地上天気図(5月16日9時)

 平年より7日遅い梅雨入りで、鹿児島県奄美地方の梅雨入りからも2日遅れました。

 平年の梅雨入りは、沖縄地方で5月9日、奄美地方で5月11日ですから、平年値から見れば、沖縄地方の方が先に梅雨に入ります。

 しかし、近年は、奄美地方の方が先に梅雨に入ることが増えてきました。

 20世紀後半(1951年から2000年)の50年間の梅雨入りと、21世紀になってからの18年間の奄美地方と沖縄地方の梅雨入りを比べると、奄美地方の方が早くなったということがはっきり表れています(図2)。

図2 沖縄での梅雨入り日と奄美での梅雨入り日の差(20世紀後半と21世紀)
図2 沖縄での梅雨入り日と奄美での梅雨入り日の差(20世紀後半と21世紀)

 つまり、21世紀は20世紀に比べ、「同じ日に梅雨入り」と「1~4日奄美のほうが早く梅雨入り」という年が増えており、「5日以上沖縄が奄美より早く梅雨入り」という年が減っているのです。

 そして、令和元年も「1~4日奄美の方が早く梅雨入り」でした。

 この理由はよくわかりませんが、沖縄地方の梅雨が変わってきた可能性があります。

梅雨の地方内格差

 沖縄県からなる沖縄地方は、東西1000キロ、南北400キロもあるため、同じ天気にならないことは少なくありません。

 沖縄地方の今回の梅雨入りは、人口の9割が集中している沖縄本島を中心として、沖縄地方が梅雨らしい天気となったということでの発表で、厳密にいえば、先島諸島では既に梅雨らしい天気となっていました。

 これは、沖縄地方だけの現象ではありません。

 気象庁では、梅雨入り、梅雨明けの情報を、梅雨がないとされる北海道を除く全国を、沖縄、奄美、九州南部、九州北部、四国、中国、近畿、東海、関東甲信、北陸、東北南部、東北北部の12の地方にわけて発表しています。

 北陸3県(福井・石川・富山の北陸西部の3県)は、新潟県(北陸東部)と梅雨期間の天気が違うことがよくありますし、関東と長野・山梨県でも同様です。

 気象庁の予報官は、担当する地方全体の天気をみて梅雨入りを発表するのですが、一つの地方の中で「梅雨らしい天気」と「梅雨らしくない天気」が混在している時は、難しい判断になります。

 梅雨入りの日については、梅雨期間が終わったあとに、春から夏にかけての実際の天候経過を考慮した検討を行って確定値を決めています。

 5月16日に沖縄梅雨入りという情報は、沖縄梅雨入りの速報日が5月16日ということで、確定した日ではありません。

今後10日間の雨

 沖縄に梅雨入りをもたらした梅雨前線は、5月18日(土)までは沖縄付近で停滞しますが、沖縄付近から東海上へは伸びなくなり、その後南下して弱まりますので、沖縄地方の雨も止む見込みです(図3)。

図3 予想天気図(5月18日9時の予想)
図3 予想天気図(5月18日9時の予想)

 その後、沖縄地方は、5月21日(火)に雨が降りますが、これは梅雨前線(停滞前線)による雨というより、日本列島を縦断する寒冷前線に伴う雨です(図4)。

図4 雨の分布予報(5月21日未明の6時間降水量)
図4 雨の分布予報(5月21日未明の6時間降水量)

 そして、その後は晴の日が続きます(図5)。

図5 ウェザーマップによる各地の10日間予報(鹿児島県・奄美地方の名瀬、沖縄地方の那覇、宮古島、与那国島では梅雨入り)
図5 ウェザーマップによる各地の10日間予報(鹿児島県・奄美地方の名瀬、沖縄地方の那覇、宮古島、与那国島では梅雨入り)

 沖縄地方は梅雨入りとなりましたが、梅雨入り早々、長い梅雨の中休みにはいります。

 5月16日に気象庁が発表した1ヶ月予報によると、沖縄・奄美地方は、気温は高め、降水量は並みか少なめとなっています。

 沖縄県の島々にとっては、梅雨期の雨と台風の雨は貴重な水資源となっています。降り過ぎは困りますが、梅雨期の雨が少ないと心配になります。

 沖縄・奄美地方での梅雨入りの約20日後、九州南部で梅雨入り(平年は5月31日)となり、以後、ほかの地方も梅雨入りになってゆきます。沖縄・奄美地方も含めて、5月下旬は、梅雨入り前の貴重な晴れ間が続くことになります。

タイトル画像の出典:ウエザーマップ・田地香織気象予報士撮影・提供。

図1、図3の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:気象庁資料をもとに著者作成。

図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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