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「さつき晴れ」と「ごがつ晴れ」の違い

饒村曜気象予報士
新緑の町(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

予報用語と解説用語

 気象庁では、天気予報や注意報・警報などの情報が、誰にでも正確に伝わるよう、「明確さ」「平易さ」「聞き取りやすさ」「時代への適用」の4つの観点から「予報用語」を定め、その定義を決めています。

 そして、注意深く、解説を付け加えて用いる「解説用語」と、「使用を控える用語」を定め、公表しています。

さつき晴れ

 日本列島は、東シナ海にある高気圧におおわれ、晴れるところが多くなっています(図1)。

図1 予想天気図(5月10日9時の予想)
図1 予想天気図(5月10日9時の予想)

 このような気圧配置がしばらく続き、多くの地方では晴れて「さつき晴れ」になりそうです(図2)。

図2 気象庁が発表した5月10日の天気予報
図2 気象庁が発表した5月10日の天気予報

 ただ、この晴れをさす「さつき晴れ」は、広く使う「予報用語」ではなく解説用語です。

 というのは、旧暦では、現在の暦より約1ヶ月遅れていたため、過去に使われていた「さつき晴れ」は梅雨時の貴重な晴れ間のことをさし、現在の使用例のように、「ごがつの晴れ(ごがつ晴れ)」をさすものではなかったからです。

 同様の言葉に「五月雨(さみだれ)」があります。

 「五月雨(さみだれ)」は6月の梅雨の雨をさし、「五月雨をあつめて早し最上川(芭蕉)」は梅雨時の歌です

 ちなみに、「五月雨(さみだれ)」は、「使用を控える用語」となっています。

5月の天気

 気象庁が5月9日に発表した1か月予報によれば、5月中旬から下旬にかけて、高気圧におおわれやすく、平年に比べ晴れて気温が高い日が多い予想となっています(図3)。

図3 気象庁が5月9日に発表した1か月予報
図3 気象庁が5月9日に発表した1か月予報

 行楽に適した「五月晴れ(ごがつばれ、さつきばれ)」が多そうです。

 しかし、春としては高い気温で推移することから、気象庁は「高温に関する異常天候早期警戒情報」も発表しています。

 春は、「低気圧と高気圧が交互に通過し、天気が変わりやすい」ということが良くいわれます。

 しかし、今年の春は、交互というより、高気圧におおわれて晴れることが多く、高気圧と高気圧の谷間で曇ったり、雨が降ったりしているという感じです。

図1、図3の出典:気象庁ホームページ。

図2の提供:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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