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「クリスマス寒波」は「クリスマス寒気」になっても、非常に強い「年末寒波」が襲来

饒村曜気象予報士
地上天気図と気象衛星画像(12月23日21時)

1日の始まり

 太陽を重視する人々は、日の出をもって1日の始まりとしていました。

 天照大御神(アマテラスオオミカミ)を最高神とする古代の日本人は、元日の朝(元旦)に、太陽が昇るとともに新年が始まると考えていたのです。

 一方、月を重視する人々は、日の入りをもって1日の始まりとしていました。

 現在でいう12月24日のクリスマスイブは、イエス・キリストが誕生した12月25日の夜のことでした。

 クリスマスの頃に日本付近に南下する寒波を、「クリスマス寒波」と呼びますが、マスコミ等で使いだしたのは、日本が高度成長期に入り、キリスト教徒ではない家庭でもクリスマスを祝うようになった昭和30年代後半(1960年代前半)のようです。

 なお、読売新聞の「ヨミダス」、朝日新聞の「聞蔵」、毎日新聞の「毎索」を使って「クリスマス寒波」を検索すると、昭和38年(1963)12月24日の朝日新聞が初出です。

 今年、平成30年(2018年)の12月24日~25日は、日本の東海上で低気圧が発達し、寒気が南下して気温が低くなる見込みですが、「クリスマス寒波」というより「クリスマス寒気」といった方が適切になりそうです(図1)。

図1 予想天気図(12月24日9時の予想)
図1 予想天気図(12月24日9時の予想)

寒波と寒気

 気象庁のホームページには、寒波と寒気の定義が次のように載っています。

【寒気】周りの空気に比べて低温な空気。

【寒波】主に冬期に、広い地域に2~3日、またはそれ以上にわたって顕著な気温の低下を伴うような寒気が到来すること。

 つまり、気温が低くなっても一時的(1~2日)なら寒気、規模が大きくて3日以上長く居座るのが寒波といえるでしょう。

 当初は、クリスマス寒波が南下すると考えられていましたが、気温が低い期間が短く、クリスマス寒気になりそうです(図2)。

図2 上空約5500メートルの寒気の予想(12月25日朝)
図2 上空約5500メートルの寒気の予想(12月25日朝)

 北海道上空には氷点下36度以下と、大雪の目安となる寒気が入ってきますが、この寒気はすぐに北海道の東海上に移動します。

 しかし、クリスマス寒気の数日後には、年末寒波がやってきます(図3)。

図3 上空約5500メートルの寒気の予想(12月28日朝)
図3 上空約5500メートルの寒気の予想(12月28日朝)

 北海道上空では12月として低い気温の記録を更新する可能性が高い、氷点下45度前後の寒気が南下してきます。

 しかも、この強い寒気が西に広がっていますので長続きする可能性が高く、まさに記録的な寒波襲来です。

 東京の週間天気予報によれば、クリスマス寒気が入る12月25日は、最高気温が10度を下回った9度、最低気温は2度ですが、年末寒波の入る12月28日以降は最高気温が7度、最低気温は0度です(図4)。

図4 各地の週間天気予報(数字の上段は最高気温、下段は最低気温)
図4 各地の週間天気予報(数字の上段は最高気温、下段は最低気温)

年末寒波

 年末年始を故郷や行楽地で過ごすために、民族大移動と呼ばれるほど多くの人が車や新幹線、飛行機等で長距離移動をします。

 12月28日(金)と29日(土)が民族大移動の始まりと思いますが、このタイミングでの年末寒波です。

 西高東低の冬型の気圧配置が強まり、全国的に暴風や大雪の可能性が高まります。

 交通機関は風や雨の影響で混乱する可能性がありますし、飛行機の機材ぐりの関係で、年末寒波とは関係がない地方にも影響が波及するかもしれません。

 寒波南下の主体が北日本ではなく日本海の可能性がありますので、山地だけでなく平野部でも大雪となる里雪型になったり、発達した積乱雲が脊梁山脈が低くなっているところを通って太平洋側にも雪をもたらす可能性もあります。

 具体的には、発達した積乱雲が、若狭湾から関ヶ原を通って名古屋に雪を降らせたり、山陰沖の雪雲が中国山脈の谷間を抜けて瀬戸内海に雪を降らせたりする可能性もあるのですが、普段雪が降らない太平洋側の地方では、少しの雪でも深刻な影響を与えることがあります。

 一般的に、12月の寒気は真冬の1~2月に比べれば弱いものです。

 しかし、12月の地表面や海面水温はまだ暖かさが残っていますので、同じ温度の寒気であっても、12月のほうが大気の上層と下層の温度差が大きくなります。

 このため、12月のほうが大気が不安定になりやすく、積乱雲が発達して災害の危険性が高まるのですが、今年、平成30年(2018年)の年末寒波は、真冬でもめったに出現しない寒さで、大気は非常に不安定となります。

 最新の気象情報に注意し、厳重な警戒が必要です。

 

タイトル画像、図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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