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台風28号の行く末

饒村曜気象予報士
気象衛星から見た台風28号(11月25日9時)

台風28号の北上

 フィリピン東海上の台風28号は、北上して日本の南海上に達する見込みです。台風上空の風が弱く、進路が定まらないために予報円が大きく、11月25日朝の台風進路予報の5日先の進路予報では、予報円の直径が1600キロもありました

 北海道庁と鹿児島県庁の直線距離が1592キロですので、北海道にゆくか鹿児島にゆくかわからない予報ということもできます。

 このため、予報円の北側を通った場合は、紀伊半島から東海・関東地方に上陸するという予報が一時的に出ていました。

 11月25日夜の台風進路予報では、3日先である11月28日には沖縄県の南大東島地方近海で温帯低気圧に変わるとして、5日先までの進路予報は行っていません。

 このため、直径が1600キロという予報円はなくなりましたが、進路予報が難しかった台風であることには変わりはありません(図1)。

図1 台風28号の進路予報と海面水温(11月25日21時)
図1 台風28号の進路予報と海面水温(11月25日21時)

 台風の進路予報は、最新のものをお使いください

難しい台風の強度予報

 台風の発達・衰弱は、海面水温だけできまるわけではありませんが、台風発達の目安となるのは、一般的には海面水温が27度といわれています。

 また、海面水温が同じであっても、海の中も暖かい黒潮の上にいるときのほうが、台風は発達しがちという傾向もあります。

 現在、台風28号は、台風が発達するといわれる海面水温が28度以上の海域にありますが、これから台風が衰弱するといわれる27度以下の海域を進む見込みで、近くには黒潮も流れています。

 海面水温だけでも、今回の台風の強度予報(発達・衰弱の予報)は、難しい予報であることがわかります。

 気象衛星から見た台風28号は、タイトル画像にあるように、11月25日の朝には、台風の眼がはっきりして、台風28号が発達するという兆候を示していました。

 しかし、11月25日の夜には、台風28号を取り巻く雲頂高度が高い雲が減り、形も円形から変形し、衰弱傾向を示しています(図2)。

図2 変形した台風28号を取り巻く雲(11月26日0時の赤外画像)
図2 変形した台風28号を取り巻く雲(11月26日0時の赤外画像)

 気象衛星から見た台風の雲が、衰弱の傾向を示していたとしても、台風がすぐに衰弱するというものではありませんが、いずれ台風は衰弱してきます。

 気象衛星から観測した結果などを受け、台風28号の強度予報は次のようになっています。

日時 中心気圧 最大風速 最大瞬間風速

11月26日 0時 970hPa 35m/s 50m/s

11月26日12時  975hPa 35m/s 50m/s

11月27日 0時  980hPa 30m/s 45m/s

11月27日21時  990hPa 23m/s 35m/s

11月28日21時 1004hPa 温帯低気圧化

 台風28号は、進路予報も強度予報も難しい台風ですので、最新の台風情報入手に努めて欲しいと思います。

タイトル画像、図1、図2の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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