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台風28号 予報円の直径1600キロで関東・東海も入る

饒村曜気象予報士
台風28号の水蒸気画像(11月25日4時20分)

台風28号の動き

 強い寒気が南下し、夏のイメージがある台風のシーズンが終わった印象があります。

 しかし、現在2つの台風があります。

 このうち、南シナ海にある台風29号は、まもなくインドシナ半島に上陸して熱帯低気圧に変わりますので、日本に影響はありません。

 しかし、フィリピンの東海上にある台風28号は、台風を動かす上空の風が弱いために現在はほとんど停滞していますが、今後は、太平洋高気圧の縁辺部をまわるように北上し、日本の東海上を東進する見込みです(図1)。

図1 台風28号の進路予報(11月22日15時発表の5日間予報)
図1 台風28号の進路予報(11月22日15時発表の5日間予報)

 台風の進路予報は、最新のものをお使いください。

 台風発達の目安となるのは、一般的には海面水温が27度といわれています。

 現在、台風28号は海面水温が28度から29度の海上にあり、台風の進路予報によると、11月28日(水)までは27度以上の海域を進みます。

 このため、あまり衰えることなく日本の南海上へやってきます。

大きな予報円

 台風を動かす上空の強い風のうち、強い西風(ジェット気流)の位置は、現在、東北地方上空で、太平洋高気圧が強まることに対応して次第に北上する見込みです。このため、しばらくは台風に影響を与えません。

 また、日本の南にある太平洋高気圧の勢力も弱く、太平洋高気圧南側の東風も弱くなっていますので、現在の台風28号はほとんど停滞していますが、太平洋高気圧が強まることに対応して、西へ動きはじめます。

 とはいえ、太平洋高気圧が強まって、台風28号を西へ大きく動かすほどではありませんので、日本の南海上にやってきた台風28号は、太平洋高気圧の縁辺部をまわるように北上が考えられています。

 このため、台風の動きが定まっていませんので、進路予報が非常に難しいケースです。大きな予報円であるのは、このことの反映です。

 台風28号の5日先の予報である11月30日3時の予報円は直径が1600キロもあります。

 台風が最も北上した場合は、紀伊半島から東海、関東地方が予報円の中に入ります。

 海面水温が27度以下の海域を進むために衰弱すると考えられますが、台風を発達させやすい黒潮の真上の通過ですので、衰弱のスピードが遅い可能性もあります。進路予報だけでなく、強度予報も難しい台風です。

上陸日時が遅い台風

 台風28号が予報円の一番北を通り、上陸する可能性はゼロではありません。非常にまれとはいえ、過去に例があります。

 気象庁では、昭和26年(1951年)以降の台風について、各種の統計を行っています

 気象庁が台風の統計を取り始めた昭和26年(1951年)以降で、一番遅く上陸した台風は、平成2年(1990年)の台風28号で、11月30日14時頃に和歌山県白浜町の南に上陸しました。唯一の11月の上陸台風です(図2)。

図2 平成2年(1990年)の台風28号の経路
図2 平成2年(1990年)の台風28号の経路

 台風の統計を取り始める昭和25年(1950年)以前では、明治27年(1894年)12月10日に房総半島に上陸した例や、昭和7年(1932年)11月15日に房総半島に上陸した「七五三台風」(図3)などがありますが、現在の台風基準で上陸したかについては、疑問です。

図3 昭和7年(1932年)11月の七五三台風の経路
図3 昭和7年(1932年)11月の七五三台風の経路

 台風が唯一11月に上陸した、平成2年(1990年)は、今年と同じ猛暑の年です。そして、11月に上陸した台風の番号は、これから日本の南海上にやってくる台風と同じ28号です。

 可能性はゼロではありませんので、週明けからは、台風28号の進路予報に注意してください。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:饒村曜(平成5年(1993年))、続・台風物語、日本気象協会。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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