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台風28号が週明けに沖縄接近

饒村曜気象予報士
沖縄に接近する台風28号(右下)と台風29号の卵(左下)(11月22日15時)

台風28号の北上

 強い寒気が南下し、今冬一番の寒さとなっています。

 このため、夏のイメージがある台風のシーズンが終わった印象があります。

 しかし、フィリピンの東海上の台風28号が、発達しながら北西進しています。

 台風を動かす上空の強い風のうち、強い西風(ジェット気流)の位置は、現在、東北地方上空ですので、台風の位置よりはるか北です。

 また、日本の南にある太平洋高気圧の勢力も弱く、太平洋高気圧南側の東風も弱くなっていますので、台風を西へ西へと移動させて日本から遠ざけるということもありません。

 このため、24日(土)から25日(日)にかけて速度が遅くなったのち、週明けには再び北西進をして沖縄に接近する予報となっていますが、進路予報が難しいことを反映して大きな予報円となっています(図1)。

図1 台風28号の進路予報(11月22日21時発表の5日間予報)
図1 台風28号の進路予報(11月22日21時発表の5日間予報)

 台風の進路予報は、最新のものをお使いください。

台風の統計値

 気象庁では、昭和26年(1951年)以降の台風について、各種の統計を行っています

 そして、昭和56年(1981年)から平成22年(2010年)までの30年間の平均値を、「平年値」として公表しています。

 台風の年間発生数の平年値は25.6個、年間接近数の平年値は11.4個、および、年間上陸数の平年値は2.7個です(表1)。

表1 台風の平年の発生数・接近数・上陸数
表1 台風の平年の発生数・接近数・上陸数

 ここで、「台風の上陸」は、台風の気圧が一番低い所(気圧中心)が、北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合です。

 また、「台風の接近」は、台風の中心が国内のいずれかの気象官署(気象台や測候所、特別地域気象観測所など、全国で約150か所)から300キロ以内に入った場合をさします。

 「台風の接近」のうち、沖縄地方、奄美地方のいずれかの気象官署から300キロ以内に入った場合が、「沖縄・奄美への接近」で、年間の平年値は7.6個です。

 日本国内への年間接近数が11.4個ですので、かなり多いといえます。そして、11月の「沖縄・奄美への接近」は0.3個です。

 つまり、台風が11月に沖縄に接近することはそれほどめずらしいことではなく、3年に1回くらいは11月に接近していることになります。

平成30年(2018年)の台風

 今年、平成30年(2018年)の現時点までの台風は、11月22日21時に南シナ海で台風29号が発生したことで、台風発生数29個、接近数は12個、上陸数は5個となり、いずれも平年値を上回っています(表2)。

表2 平成30年(2018年)の台風
表2 平成30年(2018年)の台風

 今年は、あと一ヶ月以上ありますので、発生数、接近数はまだ増えるかもしれません。

 なお、タイトル画像で、右下が沖縄に接近する台風28号、左下が南シナ海の熱帯低気圧(約6時間後に台風29号に発達)です。

上陸日時が遅い台風

 非常にまれとはいえ、過去に11月に台風が日本に上陸した例があります。

 一番遅く上陸した台風は、平成2年(1990年)の台風28号で、11月30日14時頃に和歌山県白浜町の南に上陸しました。

 気象庁が台風の統計を取り始めた昭和26年(1951年)以降では、唯一の11月の上陸台風です(表3)。

表3 上陸日時が遅い台風
表3 上陸日時が遅い台風

 なお、台風の統計をとり始める昭和25年(1950年)以前では、明治27年(1894年)12月10日に房総半島に上陸した例(図2)や、昭和7年(1932年)11月15日に房総半島に上陸した「七五三台風」などが上陸台風とされています。ただ、これらは、現在の台風基準での上陸であったかというと、観測資料が少なく、疑問があります。

図2 明治27年(1894年)12月10日に房総半島に上陸した例
図2 明治27年(1894年)12月10日に房総半島に上陸した例

師走 台風100年ぶり近畿上陸 大阪で1411小中校が休校 交通網大混乱

 師走まであと一日の三十日に、紀伊半島に上陸した台風二十八号。「十二月にまでかかる台風は約百年ぶり」(気象庁お天気相談所)とされ、戦後の記録としては昭和二十三年十一月十九日のアグネス台風(三十四号、死者、不明十一人)以来になる。今年、九月中旬から十月初めにかけて十九、二十、二十一号と史上初めて三度連続で上陸した和歌山県にとっては四度目。一体どうなっているのか。

(略)

 ◆明治27年以来の異変 猛暑高気圧が犯人

 気象庁によると、明治二十七年(一八九四)十二月十日、房総半島に上陸した例があり、今回の二十八号も十二月一日まで勢力を保つ可能性が強く、師走台風としては九十六年ぶり。

 こんな異変になったのは今夏、猛暑をもたらした強い太平洋高気圧が“犯人”。同庁の話では、勢力の強い高気圧が日本近海の太平洋上に依然として張り出している。夏場に勢力が強くても次第に弱まり、南海上で発生した台風は北上せずに東へ流されるのが普通だが、今年は太平洋の水温が高いため勢力が弱くならない。

 水温が高い原因について気象庁は「地球温暖化も無視できない。しかし、周期的に水温が高くなることもあり、原因は一概にいえない」と、首をひねるばかりだ。

出典:読売新聞(平成2年(1990年)11月30日大阪夕刊)

 個人的な話ですが、平成2年(1990年)は、気象庁予報課の6人の予報班長の1人として、当番表に従って勤務し、台風が上陸する時には台風上陸情報を書いていました。

 従って、台風が上陸するとき、台風の上陸情報を書く確率は6分の1です。

 しかし、平成2年(1990年)は和歌山県に台風が4個上陸していますが、4個とも私が上陸情報を書きました。確率的には1296分の1ということになります。

 後に、和歌山地方気象台長として和歌山県に赴任しましたが、この時から和歌山県に縁があったのかもしれません。

 台風29号は、沖縄に接近したあと、どのような動きをするのか、現時点ではわかりませんが、11月に台風が上陸した平成2年(1990年)は、猛暑の年であったということが気になっています。

 最新の台風情報の入手に努めて欲しいと思います。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:饒村曜(1993)、続・台風物語、日本気象協会。

表1、表2、表3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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