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冬山よりも危険な勤労感謝の日の頃の登山

饒村曜気象予報士
山梨県 山中湖と富士山(写真:アフロ)

勤労感謝の日

 11月23日の勤労感謝の日は、勤労をたっとび、生産を祝い、国民互いに感謝しあう国民の祝日で、昭和23年(1948年)に制定されました。

 それ以前の11月23日は新嘗祭(にいなめさい)でした。

 天皇陛下が新穀を天神地祇に勧め、また、親しくこれを食する祭儀である「新嘗祭」を、11月23日に固定したのは、明治6年(1873年)からです。

 明治5年(1872年)までは旧暦11月の2回目の卯の日に行われていました。

 明治6年(1873年)から太陽暦が導入されましたが、そのままでは新嘗祭が翌年1月になることもあって都合が悪いということで、明治6年(1873年)は、新暦11月の2回目の卯の日に行い、以後の新嘗祭は11月23日に固定して行われ、それが昭和22年(1947年)まで続きました。

勤労感謝の日の頃の登山

 勤労感謝の日の頃は、冬山の練習としての登山が行われることがありますが、平成15年(2003年)は、富士山などで強風であおられ、滑落事故が相次いでいます(図1)。

図1 地上天気図(平成15年11月22日9時)
図1 地上天気図(平成15年11月22日9時)

富士山5人滑落死傷事故 「風」と「氷」が原因? 専門家も注意呼びかけ=山梨

◆突風とアイスバーン

硬いアイスバーンの上を登山者が次々に滑り落ちた。氷となった雪面に覆われた富士山頂付近で二十三日午前十時から午後一時ごろにかけて相次いで発生した滑落事故は、五人が死傷する大惨事となった。事故の背景には、富士山特有の「風」と「氷」が指摘されている。(略)

◆登山家も惑わす特有の自然現象

救助にあたった県山岳連盟指導委員長の羽田政人さん(51)(富士吉田市小明見)は「(富士山の風は)強いだけでなく下から吹き上げたり、横から吹き付けたりして吹く方向が読めないので、体がふわっともっていかれることもある」と指摘する。ここが他の三千メートル級の冬山とは違うところだという。(略)

この時期の富士山はまた、雪が少ないために凍結しやすいという難点もある。山小屋関係者によると、今年は特に雪が少ないためアイスバーンが硬く、アイゼンが効かない場所もあるという。羽田さんは「雪が少ない分、『冬山の練習になる』とやって来る人もいるが、一番恐ろしい時期」と注意を促している。

出典:読売新聞朝刊(平成15年(2003年)11月25日) 

強い寒気の南下

 太陽の光があたらなくなった北極上空にできる強い寒気の塊が3つに分かれて南下しています。

 アメリカ東部、東ヨーロッパ、そしてサハリン付近です(図2)。

図2 北極上空の寒気の南下
図2 北極上空の寒気の南下

 このため、北海道の上空約5500メートルには、氷点下36度以下という、今冬一番の強い寒気が入ってきます。

 今年、平成30年(2018年)の勤労感謝の日の三連休は、日本海と日本の南岸を二つの低気圧が東進し、全国的に雨となった後、西高東低の冬型の気圧配置となって強い寒気が南下してきますので、東北地方の平地でも雪の可能性があります(図3、図4)。

図3 11月22日9時の風と雨
図3 11月22日9時の風と雨
図4 予想天気図(11月22日21時と23日21時の予想)
図4 予想天気図(11月22日21時と23日21時の予想)

 平成15年(2003年)と同じように、強い寒気が南下してくる三連休となります。

 三連休を利用して登山を計画している人は、冬山以上に危険となることを認識して行動する必要があります。

図1、図4の出典:気象庁ホームページ。

図2、図3の出典:ウェザーマップ提供。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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