ゴルフボール大の雹で時速100キロ、かつては鶏卵大も
「雹(ひょう)」は、空から降る氷の粒のうち、直径が5ミリ以上のものをさし、直径が数センチを超える雹が降ることがあります。ゴルフボール大の雹が降ることがありますし、かつては鶏卵大の雹が降ったことがあります。ちなみに、直径が5ミリより小さな氷の粒は「氷あられ」といいます。
雹の季節
雹は積乱雲の中で、上空の氷の粒が落下中に落ちてきて、一旦雨粒になったものが、上昇気流によって再び寒い上空に持ち上げられて凍ってしまい、それがまた落ちてきて雨粒になって、また持ち上げられてということの繰り返しによってできます。
その過程で、他の雨粒や氷の粒と衝突したり、くっついたりして大きくなりますので、上昇気流が強くてなかなか落ちてこられないほど、雹は大きく成長します。ゴルフボール大の雹が降るときには、ゴルフボール大より少し小さい雹を落下させないだけの強い上昇気流があったことを示しています。
このため、雹の季節は、上空に寒気が入っているときに上昇気流が非常に強くなる5月から7月です。ただ、同じ積乱雲の中でも、上昇気流の強いところと弱いところがありますので、実際に落ちてくる雹の大きさはまちまちになります。
雹の季節は、果実の幼果期から肥大期にあたります。
果実にとっては、降雹によってちょっとでも傷がつくと見栄えが悪くなったり、傷口から病原菌が入ったりして商品価値が大きく下がります。このため、果樹栽培では、小さな雹であっても大きな被害になることがあります。
雹の落下速度
氷の塊である雹による被害の多くは、雹が物に落下したときの衝撃によるものです。
雹の落下速度は、雹の大きさ(雹の重さ)が大きいほど大きくなります。小さなものでも時速36キロ(秒速10メートル)、ゴルフボール大では時速100キロ(秒速30メートル)にも達します。それが、昭和8年の雹のように、鶏卵大の雹となると、もっと早くなり、衝撃も桁違いに大きくなります。
昭和8年6月14日の記録的な雹
昭和8年(1933年)6月14日の地上天気図を見ると本州の中央部に強い日射によってできた小さな低気圧(熱的低気圧)があり、この低気圧の東側の関東地方と、西側の近畿地方には、当時の雷雨記号である「右半分のみを塗りつぶした記号」が記入されています(図)。
当時は高層天気図が作られていませんので、上空にどれくらいの寒気が入ってきたのかはわかりませんが、大気が非常に不安定となり、兵庫県及び群馬県から埼玉県で記録的な大きさの雹が降って大きな被害が発生しています。
このとき、兵庫県では、16時30分から18時にかけ、赤穂から有馬にかけて激しい暴風と雷雨となり、場所によっては鶏卵大(一寸五分、約4.5センチ)の雹が降っています。
このため、死者10人、負傷者164人という日本最大の被害が発生しました。山林は立木が1万5000本倒木し、刈り入れ中の小麦は根こそぎ飛ばされています。そして、畑作や苗代の稲も被害を受けたため、秋の収穫も減少しています。
これから7月にかけて、「上空に寒気が入っている」ときには、晴れたら気温が上昇して大気が不安定となり、積乱雲が発達しますので、落雷や竜巻などの突風、そして、雹に注意が必要です。
図の出典:デジタル台風(国立情報学研究所のホームページ)。