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難しい日本語 正反対の天気で「花雨」、音の「かう」には多くの意味

饒村曜気象予報士
舞い散る桜の花と富士山(ペイレスイメージズ/アフロ)

 移り変わる四季があり、様々な花鳥風月がある日本では、昔から豊かな日本語を使ってきました。

 太平洋戦争中、アメリカ軍は日本軍の暗号を次々に解読していったのですが、「解読に成功しても意味が分からないということが時々あった」といわれるほと、日本語は同じ発音で違う意味の言葉が多くあります。「花雨(かう)」もその一つです。

花散らしの雨

 前線を伴った低気圧が発達しながら日本列島を横断しているため、4月6日(金)日中の東日本では、南よりの強い風が吹いて、満開を過ぎた桜の地方では花びらが風によって宙に舞っています(図1)。桜の花びらを雨に例え、「花雨」と呼ばれる現象がおきています(花というと桜をさします)。

図1 地上天気図(4月6日9時)
図1 地上天気図(4月6日9時)

 低気圧と前線に伴う雨域が西日本に移動してきたため、桜の木に花が残っているところで雨が降っています。花びらが雨に濡れて風情をかもしだしていますが、これも「花雨」といいます。

 つまり、雨が降らない「花雨」と、雨が降る「花雨」があります。

色々な意味の「かう」

 「花雨」を音で聞くと「かう」ですが、「かう」なら色々な意味の言葉があります。

 「雨と風の事典(注)」には、下雨・華雨・佳雨・花雨・過雨・寡雨・嘉雨・夏雨という8つの「かう」が掲載されています。

下雨(雨や降るように弾丸や矢などが激しく落ちること)(雨が降ること)

華雨(花に降りかかる雨)

佳雨(降り時が好都合な雨)(佳き雨)

花雨(桜の花びらが雨のように散ること)(桜の花に降りかかる雨)

過雨(通り雨)(一過性の雨)

寡雨(雨量が少ないこと)

嘉雨(干天の慈雨や埃抑えの雨などの喜ばしい雨)

夏雨(夕立など夏場に降る豪快は雨)

「寒の戻り」の後は

 「花雨」は、どちらの意味でも寒暖差の大きな頃の現象です。

 「花雨」をもたらした発達した低気圧の通過後、一時的に西高東低の冬型の気圧配置となり、北からの寒気が南下します。ただ、低気圧の西側は、上空の寒気の影響で気圧が比較的低い状態となっていますので、やや強い北風が吹くのは、低気圧の通過直後からではなく、低気圧が日本から離れてからです(図2)。

図2 予想天気図(4月7日9時の予想)
図2 予想天気図(4月7日9時の予想)

 一時的な「寒の戻り」となりますが、その後は1日の寒暖差が10度以上もある日が続きますので、外出時には服装に注意が必要です(図3)。

図3 東京地方と大阪府の週間天気予報
図3 東京地方と大阪府の週間天気予報

(注)饒村曜(平成16年(2004年))、雨と風の事典、クライム。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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