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海氷(流氷)のために春が遅い北海道のオホーツク海沿岸

饒村曜気象予報士
北海道 網走の流氷(写真:アフロ)

オホーツク海沿岸の気候

 オホーツク海の海氷は、流氷となってサハリン東岸を南下して1月中旬には北海道のオホーツク海沿岸に到来します。2月下旬から3月上旬のオホーツク海は、ほぼ海氷で覆われ、海氷面積が最大となります。

 海が白い海氷で覆われると、太陽光線のほとんどが反射されて周辺地域の寒さが厳しくなります。

 このため、オホーツク海沿岸では厳しい寒さとなります。海に面しているというより、大陸のまっただ中にいるという状況と同じで、シベリアからの寒気をもろに受けるようになるからです。

 3月も半ばを過ぎると、北海道の周辺を覆っていた流氷も次第に沿岸部から融けたり、遠ざかったりして、船舶の航行が可能となり、海明けを迎えます、これから春が始まります。

 オホーツク海沿岸は、海氷(流氷)の影響がない地域に比べ、春の訪れは遅くなります。

平成30年(2018年)の海氷(流氷)

 今年、平成30年(2018年)のオホーツク海の海氷は、ほぼ平年並みの面積で推移していました。

図1 オホーツク海の海氷面積の経過図
図1 オホーツク海の海氷面積の経過図

 

 しかし、今週に入り、南から暖気が入り、ほぼ全国的に気温が上がって春めいてきた(一部地域は夏を思わせるようになってきた)ことに呼応するかのように、オホーツク海沿岸から流氷が離れ始めました(図1、図2)。

図2 オホーツク海の海氷解析図(3月27日)
図2 オホーツク海の海氷解析図(3月27日)

 しかし、海氷(流氷)の変化は速く、特に春の融氷期は著しいときがあります。1日のうちに見渡す限りの流氷原が流されてしまったり、逆に青海原が1日のうちに流氷で覆い隠されてしまうことも珍しくありません。

 現在は、沿岸から少し遠ざかった流氷ですが、週末に発達した低気圧が北海道に接近するため、再び接近する予報です(図3)。

図3 オホーツク海の海氷の予想図(3月31日の予想)
図3 オホーツク海の海氷の予想図(3月31日の予想)

 平成5年(1993年)3月27日には、オホーツク海と繋がっているサロマ湖に流氷が押し寄せ、カキやホタテの養殖が発生していますので、3月中は油断ができません。

 サロマ湖の流氷被害は、暖冬でサロマ湖が凍らない影響です。静かな湖面が結氷し、それが静かに融ける場合は、サロマ湖の氷が流れる氷による被害を防いでくれるからで、自然界は複雑です。

サロマ湖に流氷、養殖施設が被害

 流氷はほとんどが砕け氷だが、中には直径百メートル、厚さ七メートルほどの巨大な塊もあるという。二月上旬からオホーツク海と湖を結ぶ第一湖口、第二湖口を通って断続的に侵入し、結氷が進まない湖の中を移動している。このため湖のほぼ全域に設置されているホタテとカキの垂下式養殖施設合わせて一万三千本のうちの一部が、流氷に引きずられて壊され、水面に浮かんでいるのが確認された。

 …

 サロマ湖での水揚げは昨年、ホタテ約十三億円、カキ約三億円だった。暖冬の影響で湖内が結氷しないため、五年ほど前から流氷が湖内にたびたび侵入、一昨年には約二億円の被害が出た。

出典:北海道新聞朝刊(平成5年(1993年)3月28日)

 ただ、気象庁の海氷分布予報では、4月に入るとともに流氷は再び沖合に去ります。

 そして、北海道のオホーツク海沿岸も遅い春が始まります。

図1、図2、図3の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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