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北陸と東北で梅雨前線が不明になって梅雨明け

饒村曜気象予報士
ヒマワリ(提供:アフロ)

北陸と東北で梅雨明け

 新潟地方気象台は、8月2日11時に北陸地方の梅雨明けを発表しました。平年より9日遅い梅雨明けです。梅雨期間の雨量は、福井県は平年より少なかったものの、石川・富山・新潟の各県では、平年の2倍の雨が降りました。

 また、仙台各区気象台は、8月2日11時に東北南部と東北北部の梅雨明けを発表しました。東北南部では平年より8日遅い梅雨明け、東北北部は平年より5日遅い梅雨明けです。梅雨期間の雨量は、宮城県では平年より少なかったものの、そのほかの県では平年の1.5倍の雨が降りました。

 一般的には、梅雨前線は7月中旬頃には北海道付近まで北上し勢力が弱まります。すると、日本付近は太平洋高気圧(小笠原高気圧)に覆われ梅雨明けとなります。

 しかし、オホーツク海高気圧が強いときなど、年によっては、梅雨前線が北上せずにその位置のまま弱まって梅雨が明けることがあります。このような年は冷夏となりやすいなど、天候不順の夏になりやすいので注意が必要な梅雨けです。

 今年の梅雨明けは、梅雨前線が北上せずにその位置のまま弱まって梅雨明けとなるタイプです。西日本から東日本の広い範囲では、7月19日~20日に梅雨明けしましたが、梅雨前線が弱まっての梅雨明けです。このため、梅雨明け以降も、上空に寒気が入って大気が不安定となり、曇りや雨の日が多くなりました。

図1 北陸・東北が梅雨明けしたときの天気図(平成29年8月2日12時)
図1 北陸・東北が梅雨明けしたときの天気図(平成29年8月2日12時)

 北陸から東北地方が8月2日に梅雨明けしましたが、梅雨前線が弱まっての梅雨明けです。

地上天気図では、日本付近に梅雨前線はありませんが、オホーツク海には高気圧が残っています(図1)。

 このため、梅雨明けしたといっても、例年通りの夏らしい天気にならない可能性があります。

週間天気予報によると、新潟県は梅雨明け後の一週間は、毎日が晴れ主体の天気ですが、宮城県東部では、梅雨明け後の一週間は、毎日が曇主体の天気です(図2)。

図2 新潟県と宮城県東部の週間天気予報
図2 新潟県と宮城県東部の週間天気予報

あと4日で梅雨明けなし

 気象庁では、梅雨のない北海道を除いた日本を12の地域(沖縄、奄美、九州南部、九州北部、四国、中国、近畿、北陸、東海、関東甲信、東北南部、東北北部)に分け、気象予測をもとに「○○日ごろ梅雨入り(明け)したと見られます」という速報を発表します。

 気象台の「梅雨入りや梅雨明けの発表」は、「梅雨を予報し、予報結果を速報で発表」し、梅雨の季節が過ぎてから、春から夏にかけての実際の天候経過を考慮した検討をし、9月の初めに「梅雨入りと梅雨明けを統計値として確定」しています。

 季節現象である「梅雨入り」や「梅雨明け」を、気象庁がわざわざ発表している理由は、「防災上の注意喚起」が目的です。

 とはいえ、夏の季節現象である梅雨明けが、立秋(今年は8月7日)以降の秋になってからでは、おかしなことになるとの考えから、立秋までに梅雨明けが発表できなかった場合は、梅雨明けを特定していません。

 近年、梅雨明けを特定しない年がときどきでていますが、北陸地方と東北地方の梅雨明けが、あと4日遅ければ、「梅雨明けなし」になるところでした。

日々の天気予報や週間天気予報に注意

 全国で梅雨が明け、強い日射によって暑い日となることもありますが、日本付近に太平洋高気圧が張り出し、例年の夏のような暑さになっているわけではありません。

 上空に北からの寒気が入ったり、南海上にある台風5号の周りをまわるように、南から暖湿気流が入ることで、大気が非常に不安定となり、局地的な豪雨が続いています。

 今年は、例年の梅雨明けのように、太平洋高気圧が日本付近に張り出しての梅雨明けではありません。例年とは違うという視点で、日々の天気予報や週間天気予報に注意が必要です。

 特に、日本の南海上にあって、動きの遅い台風5号には注意が必要です。

 台風5号の動きによっては、週間天気予報が大きく変わる可能性があります。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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