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台風5号がゆっくり西日本へ 台風は地球の自転の影響で北上する性質がある

饒村曜気象予報士
気象衛星赤外画像(平成29年7月31日23時40分)

北上傾向がではじめた台風5号

 小笠原近海にあった台風5号は、台風を動かす上空の風が弱いために動きが遅く、大きな予報円が重なり、台風がどこを目指しているのか分からない予報が続いていました。

 しかし、現在の台風予報では、予報円はまだ大きいのですが、北上の傾向がでています(図1)。場合によっては、西日本に接近する可能性もあります。

図1 台風5号の進路予報
図1 台風5号の進路予報

 台風5号の動きが遅くなった小笠原近海は、海面水温が27度以上という、水蒸気の豊富な暖かい海上です。

そこに長期間滞在したことによって発達したためために、台風の北へ向かう性質が強まったからです(図2)。

図2 日本近海の海面水温(平成29年7月30日)
図2 日本近海の海面水温(平成29年7月30日)

台風は地球自転の影響で北上

 地球自転の影響により、移動する空気(つまり風)は、北半球では右側に力を受けますが、影響の程度は緯度によって異なり、高緯度ほど大きくなります。

 台風の東側にある風が受ける地球の自転の影響は、西側にある風が受ける地球の自転の影響は、向きが違いますが、緯度が同じなので、同じ大きさとなり、打ち消しあって地球自転の影響による動きはありません。

 しかし、台風の北側にある風が受ける地球自転の影響は、南側にある風が受ける地球の自転の影響よりも大きくなりますので、台風周辺の力を合成すると、北へ向かう力となります(図3)。

図3 台風移動の説明図
図3 台風移動の説明図

 つまり、台風は、上空の風に流されて動きますが、地球自転の影響により、北へ向かう性質も持っているのです。

 この台風が北へ向かう性質は、台風が発達する(風が強くなる)ほど強まります。

 台風5号が、ゆっくりであっても北上を開始したのは、台風5号がはっきりした眼を持つほど発達したからです。

動きが遅く予報円が大きい台風5号

 台風5号に北上の傾向がでてきたとはいえ、地球自転の影響による北上はゆくりした北上です。

 上空で強い西風(偏西風)が吹いているのは、東北地方の上空と、台風5号とかなり離れています。

 台風の進路が定まらず、予報円が大きい状況はしばらく続きますので、台風情報に注意しなければならない一週間になります。

台風がゆっくり北上する場合は、強い雨の期間が長くなり、大きな災害が発生する可能性があります。ゆっくりした台風は、それだけで危険です。

ましてや、発達した台風では、さらに危険です。

 

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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