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梅雨明け 空梅雨土用蒸(からつゆどようむし)

饒村曜気象予報士
うな重(ペイレスイメージズ/アフロ)

今年の梅雨は空梅雨?

雨日数や降水量が平年より少ないと「空梅雨」あるいは「照り梅雨」と呼ばれます。

これは太平洋高気圧の勢力が強まり梅雨前線を北へ押し上げたり、梅雨前線が不活発になって消えたりして起こります。干ばつ・水不足といった大きな災害につながります。

九州北部や北陸で記録的な雨が降りましたが、関東~東海は少雨が続くなど、梅雨期に雨が降らない「空梅雨」のところが多くなっています。

沖縄で6月20日、鹿児島県奄美地方の6月29日に続き、7月13日に九州南部で梅雨明けしましたが、そのほかの地方では梅雨明け前です。しかし、梅雨前線が日本列島から消えています(図1)。

図1 予想天気図(平成29年7月19日9時の予想)
図1 予想天気図(平成29年7月19日9時の予想)

週間天気予報によると、高気圧に覆われ暑い日が続く見込みで、晴れて高温の予想となっています(図2)。

気象庁予報部では、7月17日15時に「東日本と西日本の高温に対する全般気象情報」を発表し、熱中症などの健康管理や農作物の管理などに呼びかけています。

平成29年7月17日15時00分 気象庁予報部発表

(見出し)東日本では20日から24日頃にかけて、西日本では19日から23日にかけて最高気温が35度以上となる所があるでしょう。

(本文)東日本では20日から24日頃にかけて、西日本では19日から23日にかけて高気圧に覆われ、最高気温が35度以上の猛暑日となる所があるでしょう。

気温が高い状態となりますので、熱中症などの健康管理や農作物の管理に十分注意してください。

今週中に気象庁から各地の梅雨明けが発表されるかもしれません。

図2 東京と大阪の週間天気予報
図2 東京と大阪の週間天気予報

7月19日15時追記:

気象庁は7月19日の昼前後に、関東から中四国の梅雨明けを発表しましたので、梅雨に入っているのは九州北部、北陸、東北南部、東北北部だけとなりました。よって、タイトルを梅雨明け間近から梅雨明けとし、記事の一部を取り消します。

夏の土用

土用は、暦の雑節で、四立と呼ばれる「立春」「立夏」「立秋」「立冬」の直前の約18日間のことです。しかし、土用というと夏の土用(立秋直前)を指すことが多く、特に夏の土用期間中の丑の日は、鰻を食べる習慣で有名です。

今年は、7月19日から夏の土用が始まります(土用の入り)。そして、土用の丑の日は7月25日と8月6日です。

日本付近に梅雨前線が停滞して長雨になっているときは暑さは厳しくないのですが、太平洋高気圧に覆われ、晴天が続くと夏の強い日射を受けて気温が高くなるだけでなく、南の海上から湿った空気が流れ込み蒸し暑くなります。

昔から言われている「空梅雨土用蒸(からゆつどようむし)」です。

梅雨明けには2つのタイプ

6月になると、低温多湿のオホーツク海高気圧が発達し、高温多湿な太平洋高気圧(小笠原高気圧)との間に前線をつくるようになり、それまでに比べて雨が多く、日照が少ない季節現象が始まります。これが梅雨前線であり、前線が停滞することで、梅雨となります。梅雨は日本付近だけの現象ではなく、アジア全体の現象の一部です。

梅雨前線は7月中旬頃には北海道付近まで北上し勢力が弱まります。すると、日本付近は太平洋高気圧(小笠原高気圧)に覆われ梅雨明けとなることが多いのですが、年によって異なるタイプの梅雨明けがあります。

それは、オホーツク海高気圧が強いときなど、梅雨前線が北上せずにその位置のまま弱まって梅雨が明けるタイプです。このような年は冷夏となりやすいので、農業関係者のみならず衣料や家電など様々な業界で注意が必要です。

今年の梅雨は、このまま梅雨明けになるなら、梅雨前線が北上せずにその位置のまま弱まって梅雨明けとなるタイプとなり、梅雨明け後に晴天が続いても、油断できない夏となります。

梅雨明けの平年値(昨年)

九州北部で平年7月19日(昨年7月18日)

四国で7月18日(7月18日)

中国で7月21日(7月18日)

近畿で7月21日(7月18日)

東海7月21日(7月28日)

関東甲信7月21日(7月29日)

北陸7月24日(7月19日)

東北南部7月25日(7月29日)

東北北部7月28日(7月29日)

上層寒気通過による雷と太平洋高気圧の強まりによる雷

「雷が鳴ると梅雨が明ける」とか、「梅雨初期に早くも雷が鳴る年は猛暑」と言われている雷は、昨日の新潟県や関東地方などでの激しい雷雨のように、上層寒気通過による大気不安定による雷ではなく、太平洋高気圧の強まりによる雷のことです。

一般的には、太平洋高気圧の勢力が強くなり南からの気流が強まると、梅雨前線の活動が活発となります。梅雨末期にはこのような現象が起きるので、「雷が鳴ると梅雨が明ける」です。

また、「梅雨初期に早くも雷が鳴る年は猛暑」は、梅雨の初期頃から太平洋高気圧が強い年であるからです。

九州北部で大雨となった今年の梅雨ですが、全国的には、上空に寒気が入ったことにより大気が不安定となって局地的に積乱雲が発達し、狭い範囲で豪雨が降ることが多い梅雨となっています。

広い範囲でシトシト雨が降るという、多くの人が持つ教科書通りの梅雨のイメージとは違った梅雨になっています。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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