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月の天候のまとめ 24年前は全くニュースにならなかった

饒村曜気象予報士
東京都心青空パノラマ(ペイレスイメージズ/アフロ)

4月の天候

気象庁は、5月1日に「4月の天候」を発表しました。

北・西日本で高温だが、全国的に気温の変動が大きかった。

北・東日本太平洋側、西日本、沖縄・奄美で日照時間が多かった。

西日本で降水量が多かった。

このような「月の天候」は、発表されるとテレビや新聞等で大きく報じられますが、今から24年前には、全く報じられていません。

理由は、発表が月の半ばで、先月を振り返る人がほとんどいないことから、ニュース価値がなかったからです。

早期発表で使える情報に

今から23年前の平成6年、気象庁統計室では気象観測資料の統計である「月の天候」の仕方を、それまでの手計算主体の方法で月の半ばでの発表から、パソコン主体の方法で月の第2執務日に発表へと変更しています。

つまり、1日と2日がウイークデーなら2日に発表、1日が金曜日であれば4日の月曜に発表というものです。

15日後では印象が薄れても、2から4日後ではまだ印象が残っていますので、関心を持つ人が多く、「月の天候」がマスコミに取り上げられるようになりました。

現在は、自動的にデータをチェックする体制が整備されたことから、1日に発表となっています。

パソコンの急速な進歩と廉価化

前月の天候を早期に発表することになった頃は、パソコンの急速な進歩と廉価化があった頃です。

平成7年1月17日に阪神淡路大震災が発生しましたが、この年の4月から統計室で、これまで統計した資料を印刷物として公表していたものを、CD-ROMで公表する仕事に従事しました。

CD-ROM化するパソコンの価格が400万円から100万円に下がったことから実現の可能性が出たからです。

しかし、91万円で予算要求した装置が、導入したときは19万円になっていました。

書き込みができるCD-ROMも1枚3000円から1枚100円に下がりました。

それほどパソコンが急速に進歩し、廉価化が進み、色々なところで使われるようになりました。

現在は、さらに進んで、統計資料はサーバーに収納され、ネットワークで自由にアクセスできる時代になっています。

情報はスピードです。同じ内容でも、発表するタイミングによって利用形態は全く違ったものになります。そして、スピードを産むのは技術革新と思います。

逆に、技術革新によって情報が変われば、世の中が変わると思います。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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