春一番、春二番、春三番 寒い冬と雪融けの春を繰り返しながら本格的な春がくる
立春(2月4日)以降、春分の日(3月20日)までに吹く強い南風のうち、最初に吹く南風を「春一番」、二番目の南風を「春二番」、三番目の南風を「春三番」といいます。
このような強い南風は、日本海で低気圧が発達するときに吹きます。
春一番
気象庁では、北日本と沖縄を除く各地方の春一番について、各地方ごとの春一番の定義を決め、情報を発表しています。
春二番、春三番については発表していませんし、統計もありません。
なお、気象庁天気相談所によると、関東地方の春一番は、下記の事項を基本として総合的に判断して発表しています。
1)立春から春分までの期間に限る。
2)日本海に低気圧がある。低気圧が発達すればより理想的である。
3)関東地方に強い南風が吹き昇温する。具体的には東京において、最大風速が風力5(風速8.0m/s)以上、風向はWSW~S~ESEで、前日より気温が高い。(なお、関東の内陸で強い風の吹かない地域があっても止むを得ない)
今年の春一番は、九州北部が2月16日、関東、北陸、四国、九州南部奄美が2月17日、近畿、東海が2月20日です。
中国地方は、まだ春一番が吹いていません。
春一番は、立春から春分までと期間が限られているため、年によっては吹かない年もあります。
春一番がない年もあるくらいですから、春二番、春三番のない年は珍しくありません。
しかし、今年は、西高東低の強い冬型の気圧配置による冬の北風と、日本海低気圧による春の強い南風が、交互に吹いています。
関東は春三番か?
関東地方は、2月17日に春一番が吹いたと気象庁が発表しています。
2月20日は、強い南風が吹いて気温が上昇していますので、気象庁の発表はありませんが、文句なしの春二番です。
2月23日(木)は、前線を伴った低気圧が対馬海峡付近から日本海を発達しながら東に進みますので、低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込みます(図1)。
このため、関東地方では、春三番の可能性があります(図2)。
また、西日本や東日本の太平洋側を中心に大気の状態が非常に不安定となる見込みで、落雷や竜巻などの激しい突風や、局地的に激しい雨に注意が必要です。
福井豪雨の年の融雪洪水
前線を伴なった低気圧の通過で、西日本や東日本では気温が上がり、広い範囲で雨となり、大雨となるところがある見込みです。
このため、西日本と東日本の積雪の多いところでは雪解けが進むため、なだれや融雪による河川の増水や土砂災害に注意が必要です。
平成16年(2004年)7月17日の福井豪雨では、福井市内の足羽川左岸の堤防が決壊し大きな被害が出ていますが、その5ヶ月前の2月22日、足羽川の水位は、昭和23年以来といわれるほど上昇しています。
福井地方気象台の脇には、足羽川に流入している荒川がながれ、洪水防止の水門がありますが、建設以来初めて荒川水門を閉めています。水位が高くなって決壊寸前だった足羽川からの逆流による足羽川右岸の水害を防いでいます(福井豪雨の時も、荒川水門を閉めて足羽川右岸の水害を防いでいます)。
この時は、寒気の南下で大雪が降ったあとに、暖気が入って気温が11度から16度に上昇したため雪解けが一気に進み、これに30ミリから70ミリという、この時期としては珍しい大雨が降ったための融雪洪水が起こったためです。
融雪洪水と言っても、気象庁が「福井豪雨」と命名するほどの豪雨で生じた洪水に匹敵するものもあります。
油断することはできません。
なお、私が福井地方気象台長として赴任する約40日前の話ですが、きちんと分析した資料が残されていました。この融雪洪水の経験が、事実上の防災訓練となり、記録的な大雨となった福井豪雨の時の福井県や福井市などの素早い防災活動に結びつき、被害を最小限に食い止めたことに寄与したのではないかと考えています。
再び西高東低の冬型の気圧配置
日本海低気圧による春の南風のあとは、再び、西高東低の気圧配置による冬の北風となります(図3)。
寒い冬と雪融けの春を繰り返しながら本格的な春がきます。