表層雪崩は底雪崩より危険 ひとつの雪崩で158名が死亡した例もある
雪崩は,山の斜面の雪が重力の作用によって目に見える速さで崩落する現象のことです。
雪崩の種類
雪崩は、発生の形によって点発生と面発生、雪崩層滑り面の位置によって「表層雪崩」、「底雪崩(全層雪崩)」などに分類されます (図)。
雪崩害は、雪崩によって、人、家畜、家屋、施設、交通などに及ぼす災害のことですので、山奥など、人とのかかわりがないところで雪崩が発生しても雪崩害にはなりません。
底雪崩は、主として春先の融雪期に起こる雪崩です。
降雨や高温に誘発されることが多く、積雪した層全体が滑ることから全層雪崩とも言います。
これに対し、表層雪崩は、主に降雪の最盛期に,多量の降雪量によつて降雪中また は降雪の直後に起こります。
表層雪崩のほうが危険
積雪の一部が崩れる表層雪崩より、積雪全体が崩れる底雪崩のほうが危険と感じる人が多いと思いますが、危険なのは表層雪崩のほうです。
確かに、底雪崩は破壊力が大きいのですが、発生場所はほぼ決まっており、雪間に割れ目やしわ、コブが生じるなど、発生の前兆が現れることが多いのです。
これに対して、表層雪崩は、突然発生します。しかも、あまり雪崩が発生しない場所で発生したり、雪崩の走路が思わぬ場所まで達することもあります。
過去の大きな雪崩による人的被害は、表層雪崩で発生しています。
大正7年の雪崩
大正7年(1918年)は各地で雪崩が発生しましたが、1月9日に新潟県三俣村(現場沢町)で記録に残っている最悪の雪崩被害が発生しています。
この雪崩による158名という死者数は、ただ1回の、それも1か所で起きた雪崩災害としては、世界最大級といわれています。
気温が上昇して雪面が変質したところに寒気が入って大量の降雪があり、さらに暴風が吹き荒れたのが原因とされています。その結果、大規模な雪崩が集落を飲み込み、大惨事になりました。
雪崩注意報に注目
多くの地方で穏やかな正月となりましたが、これからカムチャッカ半島の南海上で低気圧が発達し、日本付近は西高東低の気圧配置が強まります。
寒気が南下し、日本海側の地方ではまとまった雪の可能性があります。
雪崩注意報がこれから多くの発表されると思いますが、雪崩注意報は、大雪が止んでも雪崩の可能性がある間は継続されます。
発表期間が長い注意報ですので、こまめに気象情報のチェックが必要です。
図の出典:饒村曜(2002)、気象災害の予測と対策、オーム社。