長期休業の余波続く ロックダウン緩和を喜べないドイツ小売業界のジレンマ

「オンラインで事前予約を済ませ、小売店に出向きショッピング」の広告 (筆者撮影)

ドイツでは3月28日までコロナ禍によるロックダウン(都市封鎖)が延長となり、同月上旬より段階的に規制緩和を導入した。これにより過去7日間の10万人当たり新規感染者数50人以下の地域では衣服、靴や身の回り品販売店などの小売店、美術館、動物園の再開が可能となった。 

コロナ禍の影響を受けた業界は飲食業、観光、芸術文化と多岐にわたるが、ここでは小売業界に焦点を絞った。

ロックダウンにより、これまで10週間以上休業を強いられた小売店主は、今回の段階的な規制緩和に諸手をあげて喜ぶことができない。長期にわたる休業は店舗経営に大きな影を落とし、都市部商店街の小売店は2軒に1軒が存続の危機、破産に直面している。

コロナ損失は1日休業で7憶ユーロ

ドイツ小売業連盟は、ドイツ全業界の企業1万3,000社以上を対象に行った調査で、全体の約7割の企業が「2020年の売り上げは前年比で減少する」と発表した。

そしてロックダウン中の店舗閉鎖で小売店業のコロナ損失は1日当たり7億ユーロ(約910憶円)に達すると明らかにした。

直撃を受けたのはファッション系店舗と総合デパート。2020年は、前年比で衣料品店は23.4%マイナス、靴や事務用品などの専門店や総合デパートは、前年比12.8%落ち込んだ。 

またジェトロ地域分析レポートによると、コロナ損失における小売業界の2020年売上高は前年比で66%減少した。

明暗分かれる店主のジレンマ 

ここでドイツのロックダウンを簡単にふり返ってみたい。

まず2020年春のロックダウン、そして同年11月初旬から部分的なロックダウンが導入された。だが、新規感染者の増加により12月16日から規制強化となり、この時点でほとんどの小売店は営業禁止となった。 

おりしもクリスマス前の商戦中で、小売業界の書き入れ時だった。売上も例年なら急増する時期に休業となり、春のロックダウン損失を何とか挽回したいと考えていた店主は大きなショックを受けた。こうして食品や医薬品を取り扱う店舗を除く小売店は計10週間以上の休業を強いられ、深刻な経営難に陥った。

当初ロックダウンは1月10日までだったがその後数回にわたり延長され、最終的に今回、3月28日までとなった訳だ。こうして5段階の段階的な規制緩和が3月1日より導入され、まずは美容院や学校が再開された。

現在小売店は、店舗面積により来客の制限や事前予約(Click and Meet)を済ませて来店する条件付きで営業できるようになった。だが小売店のオーナーは、決して喜べない。段階的なロックダウン規制緩和で小売店は再開したものの、「店舗存続危機の打開策にはならない」と、店主の不安な声が高まっている。

まず、スーパーはロックダウン中も営業していたのに、なぜ専門店は休業せねばならないのかというジレンマだ。というのも、食品スーパー店内には、靴やカバン、衣服や電化製品の販売コーナーが設置されていることもあり、消費者は今まで通り入手できたからだ

ロックダウンの導入された昨年春、どの小売店でも消毒液を随所に設置、1.5メートル距離を置く指標の設置や店舗営業時間短縮など安全対策を進めた。これらの費用も大きな出費だった。

またコロナ支援金は定期的に支給されたが、スムーズに進まないケースもあり、これも小売店主の不安材料のひとつだ。 

例えば11月及び12月支援、さらに急場をしのぐ(橋渡し補償金)支援は、違法申請者が発覚。その処理に追われたため、支給は一時停止となり、ようやく3月12日から支給が再開された。だがその間、店主の必要経費の支払いは待ってくれない。

不満噴出、状況悪化にあえぐ小売店主

ここで、小売店主の声を拾ってみよう。 

例えば、ブライダルドレス専門店の女店主は、「夢を実現し、やっと自分の店が持てるようになった。それがコロナ禍でもう続けられないかもしれない」と涙声で訴える。経費はできる限り削減したが、家賃や電気代など不可欠のコストを削減できない苦しい状態が続いていた。 

結婚式会場も閉鎖されており、しかも集まる人数も制限された中で、結婚式を先送りにするカップルが続出したことも経営難に響いた。

筆者の住む街の顔見知り、宝石店を営む男性は、店じまいを決めた。「アフターコロナがいつになるか先が読めない。その間、ずっと家賃を支払い続けるのは事実上無理。だったらあっさり辞めて、余暇を楽しみたい。65歳になったこともあり、長年続けた店を手放す機会だと思ったし後悔はない」という。

書店もベルリン一部の店舗は営業していたようだが、全国的には休業を強いられた。そのため、業界最大手タリアCEOミヒャエル・ブッシュ氏は、政府の対応に不満をぶつけ、3月8日より再開を求めるメッセージを発信していた。実際のところ同氏の希望通り、3月8日から開店可能となり、ブッシュ氏は脅迫めいた発言に対し、謝罪文を出している。

売上高業界第一位のタリア書店でさえも、ロックダウンで経営に困難をきたしており、悲鳴を上げているのだから、個人経営の小売店の存続危機の傷は深い。

条件付きロックダウン緩和で回復基調は見込めない 

ロベルト・コッホ研究所・流行病学の専門家デューク・ボロックマン氏は3月16日、「今回の段階的規制緩和がコロナ新規感染者を急増させた。再びロックダウンすべきだ」と厳しく批判した。

新規感染者数も、11日には14000人以上、12日には12000人以上とぶり返したことを受けて、ローター・ウィーラー同研究所所長は、コロナ感染第三波が到来していると警鐘を鳴らした。

学校も再び閉校することを推奨する医療専門家もいる。またイースターホリデー(2021年は4月5日がイースター月曜日)も移動制限が発動されるかもしれない。こうなると、州により小売店は再び休業を強いられる可能性も大きい。

すでに過去7日間の10万人当たり新規感染者数が直近3日間連続で100人を超えたことから、規制の緊急ブレーキ措置が行われ、学校や小売店が再び閉鎖された地区も出始めている。

ドイツの公共第二放送局ZDFは3月16日、「段階的な緩和規制でコロナ新感染者数は2割増えた」と発表した。特に新型コロナ英変異株B117が猛威を振るっていると確認され、日に日に変動する新規感染者数と現況に落ち着かない日々が続く。

英調査会社ユーガブ(YouGov)がドイツの成人2036人を対象に行った調査結果をみると、2021年内にコロナ終息は疑問視、つまり終わらないだろうと考える人が59%と半数以上を占めた。

アフターコロナを夢見るのはまだまだ先のことになりそうだ。

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参考文献 ドイツ連邦統計局 

Auswirkungen des Coronavirus (COVID-19) auf den Einzelhandel