米中首脳会談後、中国側は「自国は繁栄の道、米国はいばらの道」と必死の発信
バイデン米大統領と習近平・中国国家主席による初のオンライン会談(16日)は、両国間で相互不信が高まり、それが制御しにくくなるのではという懸念が持ち上がるなか開催された。突破口は見いだせなかったものの、双方に「熱を冷ましたい」という思いがにじみ、立場の違いはあっても対話は続けざるを得ないという認識は共有したようだ。
◇友好的な雰囲気を演出
会談はホワイトハウスの会議室「ルーズベルトルーム」と北京・人民大会堂の東ホールを結んで進められた。
米国側はブリンケン国務長官、イエレン財務長官、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)らが、中国側は楊潔篪・共産党政治局員、劉鶴副首相、王毅外相のほか、習近平氏の側近である丁薛祥・党中央弁公庁主任らが、それぞれ陪席した。
報道陣に公開された冒頭あいさつでは、両首脳が笑顔でやり取りし、友好的な雰囲気を演出していた。
バイデン氏は「率直な会話ができることを願っている」と語りかけると、習近平氏は「古い友人の姿を見て、とてもうれしく思う」と応じた。両者はかつて、それぞれ副大統領、国家副主席として交流を重ねたことがあり、それが土台になっている点が前面に押し出された。
また、バイデン氏が「われわれは良識に基づくガードレールを確立する必要があると思っている」と述べると、習近平氏は両国を「大海原を航行する2つの巨大な船」にたとえ「われわれは着実に舵を取らなければならない。2つの巨大な船は、風にも波にも負けず、ともに進むようにし、針路をそれたり、失速したり、衝突したり、ということはできない」と述べた。
会談は北京時間午前8時45分(米東部時間午後7時45分)ごろに始まり、約3時間40分後の午後0時25分(同午後11時25分)ごろに終了した。
その間、両首脳は台湾などをめぐる軍事的緊張、通商問題、新疆ウイグル自治区やチベット自治区、香港での人権など、幅広い課題を議論した。対立は鮮明になり、共同声明も発出されなかった。
オバマ政権時代に国務次官補を務め、習近平氏との会談に参加した経験のあるラッセル氏は、米紙ニューヨーク・タイムズの取材に「両首脳とも、関係のあり方や相手国の行動に不満を抱いている」とみる。一方で「両国の軍が急速に制御不能に陥る可能性があるというリスクを両者ともに認識している」とも分析している。
◇「台湾独立」に断固とした措置
中国外務省は公式サイト上に、首脳会談での習近平氏の発言を詳細に記している。
「バイデン大統領が政治的リーダーシップを発揮し、米国の対中政策を合理的で現実的な軌道に戻すよう期待している」
まずは、トランプ政権時代から続く多方面での対立の解消には米国側の努力が不可欠である点を強調している。
また、習近平氏は、新時代の米中関係が堅持すべき三つの原則として(1)互いの社会制度や核心的利益、関心事などを尊重し、互いを対等に扱い、違いを管理しながら共通の基盤を求める「相互尊重」(2)平和的共存(3)ウィンウィン関係――を挙げた。
さらに、米中両国について「大国の役割を発揮し、国際社会をリードして未解決の課題に協力して対処する」「あらゆるレベル、あらゆる分野での交流を促進」「両国関係がコントロール不能に陥らないよう、相違点や微妙な問題を建設的に管理することが重要だ」など、優先すべき4項目にも言及した。
加えて、台湾問題では次のように指摘している。
「台湾海峡の情勢が新たな緊張に直面しているのは、台湾当局が『米国に頼って独立する』という試みを繰り返し、米国側にも『台湾を利用して中国をコントロール』しようという意図を持つ人々がいるからだ」「この傾向は非常に危険で、火遊びをしているようなもの。火遊びをする人は必ず、自らも焼けてしまう」
そのうえで「もし『台湾独立』勢力が挑発して強行突破する、あるいはレッドラインを突破するようなことがあれば、われわれは断固とした措置を取らざるを得ない」と警告した。
今回の首脳会談について、中国共産党機関紙・人民日報系「環球時報」の電子版は、米中関係の専門家2人による対談の動画を載せている。両者は習近平氏の発言を引用しつつ、中国が発展すれば世界への貢献度が高まり、米国との協力関係もさらに強化できるなどと主張している。
ただ、専門家の1人である中国国際問題研究院の阮宗沢・常務副院長は、米中関係について「米国はゼロサムゲームの道を行き、それはどんどん狭くなっていく」「中国は繁栄への道を進むのに、米国が行くのはいばらの道である」という独自の視点を披露し、米国の姿勢を批判している。