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北朝鮮も思わず転載した「文在寅氏と握手後、ジャケットで手を拭くハリス米副大統領」映像

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
ジャケットで手を拭くハリス米副大統領=YouTubeより筆者キャプチャー

 ハリス米副大統領が今月21日、訪米中の文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領と共同記者会見に臨んで握手した直後、ジャケットで手を拭くしぐさをみせた。この場面がSNS上で繰り返し再生され、ハリス氏に対して「失礼だ」との批判が起きている。北朝鮮当局も中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」のアカウントでこの動画を転載し、多様なコメントを引き出している。

◇米保守系「副大統領は失礼」

 文在寅氏は21日、米ワシントンのホワイトハウス隣にあるアイゼンハワー行政府ビルでハリス副大統領と会見した。菅義偉首相が4月に訪米した際にも同ビルでハリス氏の表敬を受け、幅広い分野で約1時間、意見交換をしている。

 文在寅氏は会見後、ハリス氏とともに共同記者会見に臨み、北朝鮮問題などについて話し合ったと発表した。

 文在寅氏の発言の逐次通訳が終了すると、ハリス氏は「thank you」といい、左手で右手をこするようなしぐさを見せたあと、右手を差し出し、文在寅氏側に歩み寄るようにして握手を求めた。両者は笑顔で握手した。

 問題のシーンはこの直後に起きた。

 ハリス氏は右手を離したあと、振り返りながら、その右手をすぐにジャケットにこすりつけるようなしぐさを見せ、文在寅氏とともに立ち去った。

 この様子は、ホワイトハウスが生中継したYouTube映像にそのまま映し出されたのだった。

 米保守系ケーブルテレビ局のFOXニュースがハリス氏の行動を問題視し、映像とともに「多くのSNSユーザーが『副大統領は失礼だと非難している』『共和党の指導者が同じ行動を取れば、はるかに厳しい批判に直面したであろう』と主張している」などの批判を報じている。

 新型コロナウイルスの感染拡大後、米国では人との接触に敏感になっており、ハリス氏の行為もそれが目立った形で表出してしまった、という見解も伝えられている。

◇中国で「アジア系差別」の書き込みも

 この様子は韓国のSNS上でも転電され、ハリス氏の行為を批判する声が上がる一方で、文在寅氏に批判的な勢力からは「握手したものの、(文在寅氏は)相手にしたくない存在なのか」「握手してもらえただけでも感謝せよ」などの書き込みもみられた。

 北朝鮮の対外宣伝媒体「NEW DPRK」は微博のアカウントでこの動画を転電した。すると、これに中国のネットユーザーのコメントが相次ぎ、「マナーがない」「アジア系差別」「たぶん文在寅大統領の手に、あまりにもたっぷり汗がついていたのかもしれない」「韓国を見下している」などの多様な意見が書き込まれた。

 韓国大統領府の発表によると、文在寅氏とハリス氏との会見では、両国間の幅広い懸案事項について意見交換が進められた。

 両者は朝鮮半島非核化、中国に関する問題、アジア系に対するヘイトクライム、新型コロナワクチンでの協力、宇宙分野での協力など、幅広いテーマで意見を交わし、当初予定された30分間がその3倍の90分間にも上ったという。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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