夏バテ予防にスタミナ料理が良いって本当?

(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

 長い梅雨も明け、天気予報では熱中症や夏バテへの注意も呼びかけられています。特に今年はマスクを着用する機会も多く、身体に熱がこもることで脱水の危険性も懸念されております。

 この時期になるとよく聞かれるのが、夏バテ予防に良い食事やスタミナがつく食べ物についての話題です。夏バテを予防できる食事はあるのか、そもそもスタミナがつく食べ物とはどんなものなのでしょうか。

 

■スタミナのつく食べ物ってなんだろう?

 SNSで「スタミナと聞いて連想する食材や料理は?」と質問をしたところ多くの回答をいただきました。回答をまとめると以下のとおりです。

食材:ニンニク、ホルモン、ウナギ、山芋、納豆、豚肉、牛肉、鶏肉、キムチ、餃子、マムシ、スッポン、甘酒

料理:レバニラ炒め、焼き肉、餃子、スタミナ系ラーメン、蒲焼き、豚キムチ、馬刺し

 植物性食品は風味の強いものとネバネバ系が、動物性食品は獣肉や油の強いものにスタミナがつきそうなイメージが持たれているように感じます。スタミナ定食やスタミナ丼と呼ばれるメニューでもおなじみの食材が並んでいます。

■そもそもスタミナとは?

 そもそも、スタミナとはどんなものなのでしょうか。元気に活動し病気も防げるような体力や長時間の仕事や運動をこなせる持久力がスタミナとされています。

 身体をつくるタンパク質やエネルギーとなる糖質や脂質、栄養素をエネルギーとして利用するために必要なビタミンB1がスタミナに関係する栄養素といわれることが多いようです。

 持久力については、心肺持久力をあらわす最大酸素摂取量がその指標になりそうです。酸素を取り入れるためには赤血球に十分な鉄が必要ですので、持久力を高める食品は鉄を多く含むものとも考えられそうです。鉄の多い料理や食材は、この中ではニラレバ炒めや牛肉、馬刺しが当てはまります。

 では、体力や持久力を高めるために必要な栄養素が豊富に含まれた食品を食べると本当にスタミナがつくのでしょうか。人間の身体はそんなに単純なものではないため、必ずしも効果があるとはいえません。

■ビタミンB1の豊富な豚肉を食べて疲労回復は本当?

 ビタミンB1は動物性食品に多く、特に豚肉や動物の肝臓に豊富に含まれます。ビタミンB1自体は多くないもののニンニクやニラにはビタミンB1と合わさることで体内での吸収効率がアップするアリシンが多く、B1の多い食品と並んで疲労回復に良いと紹介されることが多いようです。

 ビタミンB1が不足するとエネルギー代謝がうまくいかず、疲労がたまったり夏バテなりやすい、という話があるようですが、現代の日本人ではビタミンB1が不足している人はあまりおらず、疲労や夏バテの原因にビタミンB1が関わっているケースは少ないと考えられます。

 水溶性ビタミンであるB1は、過剰に摂取しても大部分は尿中に流れでてしまう特徴があります。不足しないように大量に摂取しても害がないかわりに、イザという時のために蓄えられるというメリットもありません。

 すぐに尿中に流れてしまうと説明されることが多いため、水溶性ビタミンは毎食摂る必要があると誤解をする人もいるのですが、水溶性ビタミンであっても、ある程度は体内に保持することが可能です。これについては知らない人も多いのでぜひ覚えておいてほしいと思います。ビタミンB1であれば、体内に約30mgほど※1存在しており、半減期は9~18日※2ということで、よほど激しい運動をするのでなければ、1週間ぐらいあまり摂取しなくても脚気などの欠乏症や不足による疲労感は現れないだろうと考えられます。もちろん、普段から摂取量が不足していれば体内備蓄量も少ないため欠乏症になりやすいため注意が必要です。

 本当にビタミンB1が欠乏しているケースは乏しいため、ビタミンB1が豊富に含む食物を食べても疲労回復やスタミナアップは期待できないということです。

 持久力に関わる鉄についても同じなのですが、日本人の食生活では鉄が不足しやすいため、スポーツ選手であれば吸収の良いヘム鉄を多く含む、レバーや牛肉、馬刺しなどを積極的に食べるのは貧血によるパフォーマンス低下を防ぐために有用と考えられます。貧血が問題ない人であれば鉄を含む食品をたくさん食べても持久力はそれ以上にアップするわけではありません。むしろ過剰の鉄は体内で細菌が増殖しやすくさせたり、臓器への負担もかかるため、自己判断で鉄サプリメントを摂るようなことはあまり推奨できません。

■夏バテや疲労回復に食べ物は効果がないの?

 夏バテは医学用語ではありませんが、高温多湿の環境で体温を一定に保つために体が無理し続けたことで現れる症状を指すことが多いようです。夏バテの症状には、全身のだるさなど様々なものがありますが、中でも食欲不振や消化管の症状は栄養確保が十分に行えなくなるおそれがあるため、体力のない子どもや高齢者にとっては深刻な問題です。

 今シーズンはマスク着用により暑さを感じやすく、冷たい飲み物や料理を食べる機会が増えている人も多いと思いますが、氷の浮いた飲み物や、冷たすぎる食べ物、生野菜のサラダなどは胃腸に負担がかかるため、かえって夏バテや脱水を促進しかねないため注意が必要です。

 消化管などの内臓は体温の37℃前後で十分な機能を発揮できるようにできているため、0℃近いような冷たい飲み物が多量に入ってくると、胃が冷やされ、消化管の運動が妨げられてしまいます。また、生の野菜や果物は冷たいだけでなく、消化にも負担がかかるため、食べすぎると胃腸を壊してしまいお腹がゆるくなり脱水を助長させてしまう可能性もあります。

 スタミナがつくと一般にいわれることの多い料理や食材には消化に負担のかかる脂質やタンパク質が豊富なものが多いため、疲労回復目的でスタミナ料理を食べるとかえって胃腸を痛めてしまい、夏バテを悪化させてしまうという悪循環も考えられます。

■スタミナ料理は夏バテ前が効果的

 スタミナによい食材や料理には消化に負担のかかるものも多いため、夏バテになる前に食べることがおすすめです。蒸し暑い夏には食欲も低下しやすいですが、冷たい料理はほどほどにし、消化に負担のかかる生野菜や果物は少量に留めるのが無難です。

 食欲をそそる香辛料やハーブ、香味野菜を上手に使い、生野菜は野菜たっぷりスープに置き換え、タンパク質は消化の良い卵や魚をメインにとるのをおすすめします。

 脱水予防には水分と電解質が大切なのはもちろんですが、身体に蓄えられる水分を増やすことも予防になるのは覚えておいてよいでしょう。筋肉は80%が水分であり、アスリートが一般の人よりも脱水が起こりにくいのは筋肉量が多いためと考えられています。筋肉量の少ない高齢者に脱水が多いのはこのためです。

 胃腸も元気な涼しい時期に、運動とスタミナ料理でしっかり身体をつくっておくことが、夏バテ予防に良いのかもしれません。

※1大半は補酵素型のTDP(TPP)として存在

※2参考文献

Institute of Medicine (US) Standing Committee on the Scientific Evaluation of Dietary Reference Intakes and its Panel on Folate, Other B Vitamins, and Choline. Dietary Reference Intakes for Thiamin, Riboflavin, Niacin, Vitamin B6, Folate, Vitamin B12, Pantothenic Acid, Biotin, and Choline. Washington (DC): National Academies Press (US); 1998.