日本人はタンパク質不足って本当? 

(写真:アフロ)

 日本人はタンパク質が不足気味なので、プロテインで栄養補給をしましょう、という話をSNSで見かけました。

 試しに、「日本人」、「タンパク質」と検索ワードで調べてみると、「日本人のタンパク質不足」についての記事がいくつもヒットします。あるサプリメントの広告では、過去の栄養調査の結果と比較して、現代人のタンパク質不足をデータで示していました。

 ボディビルダーや筋肥大が必要なスポーツ選手が愛用するプロテインですが、最近は子どもの部活動で指導者から飲むように勧められることもあるようです。

 日本人はタンパク質が本当に足りていないのでしょうか。タンパク質の役割や必要量、サプリメントが必要なケースはあるかなど、データを参照しつつ私の見解を述べてみたいと思います。

(長い説明が面倒な方は、最後のまとめだけを読んで下さればと思います。)

■そもそもタンパク質とは

 タンパク質は、私たちの体をつくる筋肉だけなく、代謝を調節するホルモンや酵素、酸素を運ぶヘモグロビンや免疫に関係するγ-グロブリンの主要な構成成分であり、生物にとって必要不可欠な栄養素です。タンパク質はアミノ酸からつくられますが、体の中で他のアミノ酸から合成することのできないアミノ酸を必須アミノ酸といい、これらをバランス良く含む食品(肉や魚、乳類、卵、大豆など)は良質のタンパク質源とされています。炭水化物や脂質と同じようにエネルギー源としても利用が可能で、飢餓など栄養不足の時には筋肉など体に蓄えているタンパク質が分解され、生命維持に利用されます。

 タンパク質のことを英語でプロテインといいますが、一般にタンパク質補給目的の栄養補助食品をプロテイン(プロテインサプリメント)と呼んでいるようです。特定のアミノ酸を配合した栄養補助食品をアミノ酸サプリメントとして販売されることもあるようですが、タンパク質制限のある人がアミノ酸は別のものと思って飲んでいた、というケースもあり、注意が必要かも知れません。

■タンパク質不足を示すデータはない

 国民健康・栄養調査でタンパク質摂取量が減っているといわれると不足を心配してしまいますが、栄養調査全般の傾向として、栄養不足が問題になっている時には過大評価が、肥満が問題であれば実際の摂取量よりも過小評価した結果になりやすいことが良く知られています。

 最近の国民健康・栄養調査を分析するとほとんどの年齢で必要なエネルギーを満たしていないことになりますが、実際の食事量をキチンと報告できていない「過小申告」があると考えられています。

(参考)若い女性は栄養不足で健康リスクが増えている?

 過小申告がある栄養調査の結果を評価する場合は、摂取エネルギーに対するタンパク質量を見ることで、タンパク質摂取量をある程度評価する事ができます。平成29年の調査結果を読むと、全ての年代でタンパク質エネルギー比が13~15%の範囲におさまっており、食事摂取基準で推奨されている範囲(タンパク質エネルギー比13~20%が推奨量)にあることから、日本人はタンパク質不足ではなさそうだ、と考えられます。

 国民健康・栄養調査だけでなく、児童・生徒の栄養摂取状況(小学生629人、中学生281人対象3日間の食事を記録)を調査した論文(※1)でも、カルシウムや鉄、食物繊維(食物繊維は厳密には栄養素ではないですが)が不足の割合が高いと指摘されており、タンパク質はどちらかというと不足している人が少ない栄養素でしょう。

■運動部の子どもにプロテインは必要?

 

 運動部の子どもが、体をつくるため、指導者からプロテインを勧められるケースがあるようですが、私は基本的には不要で、なるべく食事から確保して欲しいと考えています。

 最近は、運動後すみやかにタンパク質を補給することで筋肉の修復を促し、効率良く筋肉をつけることができるという研究結果(※2)が一般にも知られるようになったため、運動のあとにプロテインサプリメントを利用する人が増えているようですが、基本的には筋肉スポーツ選手や将来プロを目指す人がパフォーマンス向上のために利用するものと考えて欲しいです。

 子ども時代の食事は体の土台をつくる大切な時期ですので、筋力の向上に特化した栄養摂取よりも成長期の発達に合わせたバランスの良い食事を優先してあげて欲しいと思います。毎食かならず、肉や魚、鶏卵などの良質なタンパク質源になる食材が入っていれば基本大丈夫と考えて下さい。

 

■食事だけで本当に十分なタンパク質は確保できるの?

 激しく体を動かすスポーツ選手がサプリメント無しで十分なタンパク質を摂取できるのか疑問に思う人もいるかも知れません。ボディビルやパワー系種目など、筋肥大が要求されるスポーツは別にすれば、定食型の食事などバランスの摂れた食事をしていれば十分に満たすことは可能でしょう。

 その根拠の一つとして、2018年に報告されたエクササイズおよびスポーツ栄養のレビュー(※3)があります。49の研究をメタレビューしたところ、筋肉トレーニングを行っている人の1日あたりの最適なタンパク質量の平均値は体重1kgあたりで1.62gであったと報告しています。これは体重65kgの成人であれば、必要なタンパク質量は105g程度ということになります。

 次の表は、日本人の食事摂取基準で目標とされているタンパク質摂取量(エネルギー比13~20%であるが、現実的な数値としてこの記事では毎回の食事で無理なく食べられる15%を採用)をまとめたものです。

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 本格的にスポーツを行っている人では、身体活動レベル「たかい」以上のエネルギー摂取が必要なケースが多いと思いますが、身体活動レベル「ふつう」の人が食べてほしい食事量でも、バランス良く食べれば100gに近いタンパク質の摂取となるため、スポーツ選手であれば栄養バランスのとれた食事であればサプリメントは不要な水準、といえるでしょう。

 子どもの部活動レベルであれば、強い筋トレなどを行ったあと、しばらく食事を摂れないような時にプロテインサプリメントを利用する、というのが妥当な使い方ではないでしょうか。

■タンパク質不足が心配な人とは

 毎食しっかりと食べている人ではタンパク質不足はあまり心配ないことがわかりました。では、タンパク質不足が懸念される人とはどいういう人なのでしょう。

 子どもであれば、摂食障害、ネグレクト、消化器疾患による吸収障害、極端な偏食などの問題を抱えているケースが考えられますが、その場合はタンパク質だけでなくビタミン、ミネラルの不足が心配されますので、サプリメントで解決するような問題ではないでしょう。

 プロテインサプリメントのようなものが役立つのは子どもよりも高齢者だと考えられます。同じ筋トレを行っても若者よりも高齢者の方がよりタンパク質を必要とする報告(※4)があります。高齢者では胃の容積も小さくなり一度にたくさん食べることも難しいため、食事量が追いつかず、運動をしても筋肉がつかない、というケースも見られます。食間に飲み物タイプの栄養補助食品でタンパク質補給をすすめても良いかも知れません。

■今回のまとめ

 平均すれば給食メニューのようなバランスの考えられた食事ができていればタンパク質が不足するようなことはスポーツ選手でも考えられません。一般の人であれば尚更心配する必要はないでしょう。

・タンパク質は不足が心配な栄養素ではない

・運動部の子どもでも基本的にはサプリメント不要

・運動後しばらく食事ができなそうな時にはプロテインサプリメントはあり

・タンパク質が不足しているような人は他の栄養素も不足している

・高齢者では総合タイプの栄養補助食品でタンパク質確保も良いかも

 

(※1)Asakura K, Sasaki S. School lunches in Japan: their contribution to healthier nutrient intake among elementary-school and junior high-school children. Public Health Nutr. 2017 Jun;20(9):1523-1533.

(※2)Moore DR, Robinson MJ, Fry JL, et al. Ingested protein dose response of muscle and albumin protein synthesis after resistance exercise in young men. Am J Clin Nutr. 2009 Jan;89(1):161-8.

(※3)Kerksick CM, Wilborn CD, Roberts MD, et al. ISSN exercise & sports nutrition review update: research & recommendations. J Int Soc Sports Nutr. 2018 Aug 1;15(1):38.

(※4)Moore DR, Churchward-Venne TA, Witard O, et al. Protein ingestion to stimulate myofibrillar protein synthesis requires greater relative protein intakes in healthy older versus younger men. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2015 Jan;70(1):57-62.