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美味しさも健康も守る夏場の上手な食品保存術

成田崇信管理栄養士、健康科学修士
(写真:アフロ)

 保存していたお好み焼き粉やパンケーキミックスの中でダニが大繁殖という事例がSNSで話題になっていました。ダニに対するアレルギー反応からアナフィラキシーショックとなるケースも稀にあるため、見た目の不快感だけでなく安全面でも保存には十分注意する必要があります。

 高温多湿の梅雨の時期は、粉もの食品のダニに限らず、食品の劣化が起こりやすいことが知られています。梅雨の時期に気をつけたい食品の上手な保存の仕方をお伝えしたいと思います。

 

■高温多湿で食品がいたみやすい理由

 全ての食品ではありませんが、生鮮食品の多くは高温で湿度の高い環境におかれると急速に劣化が進むことが知られています。

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 中でも温度が重要で、温度があがると野菜などの生鮮食品では呼吸が活発になり、水分やビタミンなどの栄養成分がどんどん失われていきます。また、食品が元々もっていた酵素が活性化し、デンプンやタンパク質、脂肪の分解が進みやすくなります。高温で適度にしめった状態では、微生物や昆虫も繁殖しやすいという問題もあります。

 真夏もそうですが、梅雨の時期にこそ食品の保存に気をつかう必要があるのはこのためです。

■穀類や粉モノの保存の注意点は?

 

 お米は長期間保存できる食品の代表格ですが、実は高温多湿にとても弱く、常温で保存を続けるとビタミンB1などの栄養も急激に失われることが知られています。そのため、密閉できる容器に入れ冷暗所で保存するのが理想です。おひつのような大きな容器に継ぎ足すような保管方法では、穀類につく昆虫やダニなどの有害動物の汚染のもとになりますので、家庭ではおすすめできません。保存の適温は10~15℃程度ですが、冷蔵庫保存では温度差から結露がしやすいため、野菜室に密閉容器ごと保存しましょう。理想的な環境で保存できない場合は、長期保存を考えず、1~2週間で使い切れる量を購入すると良いでしょう。

 

 小麦粉や片栗粉は、常温で保存のできる食品です。冷蔵庫保存は安全面を考えると問題はないのですが、結露や臭い移りの元になりますので、品質保持のためにはあまりおすすめできません。密閉容器に入れて冷暗所に保管し、早めに使い切るようにします。

 お好み焼き粉やパンケーキミックスなどのプレミックス粉は、小麦粉に比べると香りもよく、生物に必要な栄養がまんべんなく含まれているため、有害微生物や昆虫などを引き寄せやすい特徴があります。密閉できる容器に入れ、有害生物の汚染を避ける必要がありますが、完全に防ぐのは難しいため夏場は冷蔵庫に保管することが無難です。その場合でもなるべく早く使い切るようにしましょう。

■食品に合った環境で夏場でも鮮度良く美味しく保存

 生鮮食品は保存に適した環境におくことで、通常よりも長期間保存できるものが多いのですが、夏の室内は熱がこもりやすいため、普段は冷暗所に保存をしている食品も、夏場だけは冷蔵庫に入れたほうが良いケースがあります。

 参考として、家庭で使用することの多い野菜や果物の保存方法を表にまとめてみました。

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 野菜室は風を送らずにじわりと冷却する特徴があり、温度がやや高く、湿度が高く保たれています。どちらかというと野菜の保存適温は冷蔵庫の温度に近いものが多いのですが、湿度が低いと水分がどんどん奪われ、ビタミンなどの栄養素も失われやすいため、野菜室で保存することが無難です。ニンニクや玉葱は乾燥した環境を好みますので、野菜室よりも冷蔵庫での保存がおすすめです。

 冷蔵庫でも保存が可能な野菜は、野菜室に入り切らない場合、冷蔵庫で保存をすると良いと思います。

■野菜を冷蔵庫で保存するときの注意点

 多くの野菜や果物は冷蔵庫で保存ができますが、次の注意点を守るとより長く鮮度を保つことができると思います。

・葉物野菜は袋で包装し乾燥予防

・肉や魚から離して保存

・野菜や果物が傷つかないようていねいな取り扱い

 野菜や果物の鮮度低下は温度もそうですが、傷つけないことも大事です。日常では傷む(いたむ)という表現が使われますが、野菜や果物をぶつけたりすると細胞が壊れ、細胞や栄養成分などを分解する酵素が流れ出てきます。傷ついたところが変色したり、ドロドロになったりするのはこの酵素の仕業です。酵素で分解された部分は細菌やカビなどの微生物にとっては格好の繁殖場所になり、ちょっとした傷を切っ掛けに鮮度劣化が大きく進みます。野菜室に比べ冷蔵庫は食品の出し入れが多いので、傷がつかないよう保存場所などにも配慮すると良いでしょう。

  

■採れたての新鮮野菜は早めに消費を

 野菜は流通の過程でどうしても鮮度は落ちてしまいますが、最近はできるだけ鮮度が保持できるよう収穫してすぐに適温に冷やす「予冷」という操作を行った野菜が増えてきています。この予冷を行うことで野菜の呼吸が抑えられ、水分の蒸発やビタミンの損失を少なく鮮度を保つことができるということが実証されています。「予冷」された野菜はそのまま低温に保たれたまま輸送され店頭に並ぶ低温流通体制(コールドチェーンといいます)が整備されたことで、日本全国で新鮮な野菜をいつでも食べることが可能になりました。

 

 家庭菜園や直売所で販売されている野菜では、「予冷」を行っていない場合が多いので、適した環境で保存しても鮮度の低下が進みやすいので、なるべく早めに美味しくいただいて欲しいと思います。家庭菜園で採れた野菜も、収穫してすぐに氷水につけ、中心まで冷やしてから保存をすると美味しさは長持ちします。

 夏場では予冷をされた野菜や果物も購入して家に運ぶまでの間に温度が上がってしまうため、保冷バッグを活用するなど鮮度の保持には気をつけて下さい。

 

■まとめ

 ちょっとした保存の工夫で、夏の暑い時期でも食品を安全に美味しく保つことが可能です。場合によっては保存をしないという選択肢も含め、家庭の環境に合った方法で生鮮食品の管理をしていただけたらと思います。

今回のまとめ

・お米は密閉できる容器に入れ野菜室保管、常温ならすぐに使い切れる量を購入

・小麦粉や片栗粉は基本常温、湿気を避けて保存

・プレミックス粉は袋を開けたら冷蔵庫で保存、早めに使い切る

・野菜や果物はそれぞれに合った環境で保存、やさしく丁寧に扱うとさらに長持ち

・購入した生鮮食品は温度が上がらないように気をつけて家まで運ぶ

管理栄養士、健康科学修士

管理栄養士、健康科学修士。病院、短期大学などを経て、現在は社会福祉法人に勤務。ペンネーム・道良寧子(みちよしねこ)名義で、主にインターネット上で「食と健康」に関する啓もう活動を行っている。猫派。著書:新装版管理栄養士パパの親子の食育BOOK (内外出版社)3月15日発売、共著:謎解き超科学(彩図社)、監修:すごいぞやさいーズ(オレンジページ)

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