岡江久美子さん訃報に考える、がん闘病中にコロナ感染は危険か 医師の視点

がん患者さんは新型コロナウイルス感染にどう対峙すべきか(写真:アフロ)

俳優の岡江久美子さんが新型コロナウイルス感染症で亡くなった。報道によると、乳がんの放射線治療を受けていたとのこと。

岡江さんは昨年末、初期の乳がんで手術し、今年1月末から2月半ばまで放射線治療を行った。所属事務所では、「免疫力が低下していた」としている。

出典:読売新聞オンライン 岡江久美子さん死去、がん闘病で放射線治療…事務所「免疫力が低下」 2020/04/24

がん闘病中の方へ、新型コロナウイルス感染症の危険性と対策を、がん治療専門医の立場からまとめた。

がんの治療中、コロナ影響は?

流行中の新型コロナウイルス感染症、がん患者さんが感染すると危険なのだろうか?

まず大切なことは「がん患者さんがすべて危険であるわけではない」ということだ。

そして、対策は「よく手洗いをし、3つの密を避ける」ことが最重要であることは疑いがない。

がん患者さんは、患者さんによって体力や免疫の状況、体力などが大きく異なっている。

その他の病気よりもはるかに大きな幅があるため、心配な人は個別に主治医に尋ねるしかないだろう。

しかし医師としても、聞かれても判断の根拠となるデータがない以上、

「わかりません。とにかく他の人と同じように予防で手洗いなどをよくして、外出を避けましょう」

としか言えないかもしれない。

それでもあえて「新型コロナウイルス感染症、がん患者さんが感染すると危険か」に答えると、「がんによる」「治療法による」と言えるだろう。中国からの報告では、いま治療中のがん患者さん・がん治療を終えた患者さん(がんサバイバー)で重症化しやすいというデータもある(※1)。

新型コロナウイルス感染症に弱いがんというものはあまりないだろうが、全身に転移していて体力が落ちているような病状の場合は注意が必要だ。今後、特に注意すべきがんの種類がわかってくるかもしれない。

治療法によっても影響は異なる

また、治療法によって影響は大きく異なる。

報道された岡江さんが受けていた放射線療法でもある程度免疫は低下することがある(全員ではない)。

多くのがん患者さんが受ける抗がん剤の治療でも、その治療の強さは様々であり、受けた人の半分くらいが非常に強く免疫低下を来すものもあれば、ほとんど免疫への影響がないこともある。治療が終わってしばらくしていれば、影響は残らないものが多い。

そして治療の影響のみならず、本人の年齢や体力という要素がかなり強いと推測される。

いま、がん患者さんがすべきことは?

いま、がん患者さんがすべきことはなんだろうか?

筆者は、「なにか特殊なことは必要ない」と考えている。

がん患者さんがすべきことは、他の方と同じで

・良く手を洗う

・外出を自粛する

に尽きる。

そして、今後は「がんの治療を続けるかどうか」を主治医と相談することになるだろう。

さらに細かい注意点などは、この国立がん研究センター東病院のホームページがくわしい。

記事の最後になりましたが、岡江久美子さんのご冥福をお祈りするとともに、ご家族・関係者の皆様へお悔やみを申し上げます。

※1 Liang W et al. Cancer patients in SARS-CoV-2 infection: a nationwide analysis in China. Lancet Oncol. 2020 Mar;21(3):335-337. doi: 10.1016/S1470-2045(20)30096-6. Epub 2020 Feb 14.

(注)本記事は、大腸癌の治療を専門とする外科医によって執筆されています。筆者は放射線療法中・化学療法中の患者さんの診察に日常的にあたっているがん治療の専門医です。しかし、がん患者さんにおけるコロナウイルス感染症のデータはまだそれほど出ておらず、本稿は筆者のがん治療の経験と科学的推測から書かれています。今後、色々なことが判明するに従い内容の変更が必要になる可能性があります。