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あっという間に目標達成、注目を集める「みんパピ」プロジェクト なぜいまパピなのか? 医師の視点

中山祐次郎外科医師・医学博士・作家
(写真:アフロ)

医師や公衆衛生の専門家たちが立ち上げた「みんパピ」というプロジェクトが注目を集めている。「みんなで知ろうHPV(ヒトパピローマウイルス)プロジェクト」略して「みんパピ」。「パピ」とは、ヒトパピローマウイルスの「パピ」で、子宮頸がんや男性もかかる中咽頭がんなどいくつかのがんの原因とされているウイルスだ。活動資金集めのために行っているクラウドファンディングでも、あっという間に目標の400万円を集め、現在1,600万円を超えている(2020年9月5日現在)。

なぜこのようなプロジェクトを立ち上げたのか、代表で産婦人科医の稲葉可奈子氏にお話をうかがった。

「みんパピ!」HPより許可を得て掲載
「みんパピ!」HPより許可を得て掲載

Q. さっそくですが、なぜ「みんパピ」を立ち上げたのですか?

A. 私は産婦人科医ですが、若い女性もかかる子宮頸がんという病気の患者さんを何人も診てきました。

この子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(=HPVと略します)というウイルスが主な原因であることがわかっており、ウイルスにかからないためのワクチンがあります。ワクチンを打つことで子宮頸がんの6~9割が予防できます。

しかし、日本ではワクチンを打つ人がとても少なく、予防できるはずの子宮頸がんにこれからも日本の女性がかかり続けることになるかと思うと、産婦人科医としてとてももどかしい気持ちで、この状況を見逃してはいられない、と思っていました。

そこで、まずは「ヒトパピローマウイルスというものを知ってもらおう」と思い、「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」を立ち上げました。

Q. 子宮頸がんってどんな病気なのですか?

A. 20歳代〜40歳代といった若い女性たちが多くかかるがんで、早期でも治療のために早産のリスクが高くなったり、進行していると子宮を全部取るなどして自分で出産することができなくなることがあります。かなり進んでいると、命を落とすこともあります。

Q. ヒトパピローマウイルスのことは、どんな人にとって大切なのですか?

A. どなたにでも、とても大切なことなのです。

子宮頸がんは、女性なら誰でもかかる可能性がある病気で、ワクチンで予防できるのに、日本だけが予防できていない状況なのです。きっと、日本中の産婦人科医がもどかしいと思っていることでしょう。

これまで私がお会いしてきた患者さんのお話です。30歳代未婚の女性でパートナーはいる方でした。ときどき出血があって、産婦人科を受診したら子宮頸がんがすでに進行しており、治療のかいもなく亡くなられてしまいました。また、20歳代で子宮頸がんになられ、子宮を全摘せざるを得ず、命は助けられたものの、自分での出産ができなくなった方もいます。妊娠するとみなさん子宮頸がん検診を受けるのですが、そこでがんを発見されることもあります。

Q. ヒトパピローマウイルスのワクチンは、皆さん全然打っていないのでしょうか?

A. 現状では、海外の国と比べて日本では打っている人がとても少ないのです。

「みんパピ!」HPより許可を得て掲載
「みんパピ!」HPより許可を得て掲載

このデータでは、各国が60%以上の接種率であるのに比べ、日本ではわずか0.6%にとどまっています。

実際に、患者さんとお話ししていると「なんか危険とか言われてたワクチンだよね」という反応が大半です。最近は定期予防接種の個別通知を出す自治体も出てきましたが、接種しないまま放置されていることが多い印象です。 先日、高校2年生への講演でヒトパピローマウイルスのことを伝えたら、「去年知っていたらワクチンを打ったのに」と言われ、正確な情報を広く届けられていないことを申し訳なく思っています。

Q. 今後はどんな活動をしていくのですか?

A, 対象年齢の子たちは、また小児科がかかりつけの年代なので、小児科の先生方と協力して、HPVワクチンを広く周知していきたいと考えています。ただ、忙しい外来で詳しく説明する時間はとれないので、サッと渡せるリーフレットを作成し、詳しくはみんパピ!HPへ、というように、小児科の先生方の手助けとなるような活動をしていきたいです。

また、動画やオフラインイベントなどで、多角的に情報を発信し、1人でも多くの方に伝えていきたいです。そのための資金をクラウドファンディングで募集しています。

Q. 今もワクチンの副反応で苦しんでいる人たちがいます。その方々へのメッセージは。

A. 統計学的には因果関係が証明されなくても、その『症状』に苦しんでいる人たちがいるのは事実です。それぞれの患者さんにおいて、その症状の原因がワクチンかどうかを判断することは難しく、その症状からどうすれば回復できるのかということに真摯に向き合い、寄り添っていきたいと思います。

Q. 最後に「これだけは伝えたいこと」、ありますか。

A. がんを予防できるワクチンがあるということ。これはまさに医学の進歩の賜物です。知らずにがんを予防する機会を逃すことのないように、正確な情報を広く伝えられるように頑張ります。

以上、お話をうかがった。

外科医師・医学博士・作家

外科医・作家。湘南医療大学保健医療学部臨床教授。公衆衛生学修士、医学博士。1980年生。聖光学院中・高卒後2浪を経て、鹿児島大学医学部卒。都立駒込病院で研修後、大腸外科医師として計10年勤務。2017年2月から福島県高野病院院長、総合南東北病院外科医長、2021年10月から神奈川県茅ヶ崎市の湘南東部総合病院で手術の日々を送る。資格は消化器外科専門医、内視鏡外科技術認定医(大腸)、外科専門医など。モットーは「いつ死んでも後悔するように生きる」。著書は「医者の本音」、小説「泣くな研修医」シリーズなど。Yahoo!ニュース個人では計4回のMost Valuable Article賞を受賞。

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