過熱報道のジカ熱、今こそ冷静に

ペルーでも旅行者に注意喚起がなされている(写真:ロイター/アフロ)

「緊急事態宣言」「小頭症」など、センセーショナルなキーワードとともに報道されているジカ熱。ジカ熱とはいったい何か、そしてどんな危険があり、いまどんな対策をすべきか。キーワードは以下の2つです。

・まだ不明なことが多い病気

・冷静さを欠いた過熱報道

ジカ熱とは何か

ジカ熱とは、「ジカウイルス」というウイルス(目に見えないほど小さい病原体のこと)が感染することによって起きる感染症の一つです。かつて東京の代々木公園などで流行し問題になった「デング熱」と似た病気で、蚊が媒体となって感染します。

ジカ熱という病気自体は深刻なものではなく、数日間熱が出たり皮膚にブツブツ(皮疹)が出たり筋肉痛が出たりするもので、まず命に関わる病気ではありません。放っておいても、数日で自然に治ってしまう病気です。そのため特効薬もありませんし、予防するワクチンも今のところありません。ジカウイルスというウイルスに感染したとしても、ジカ熱を発症するのは5人に1人くらいと言われています。

そして、今までに日本でかかった人はほとんどおらず、報告されている3人は全て海外で蚊に刺されて感染してから帰国した、持ち帰りの患者さんだけです。流行っているエリアは中南米で、今度オリンピックが開催されるブラジルから拡がっています。

まだ不明なことが多い病気

わかっていないことがたくさんある、ジカ熱。以下にはっきりしていない点をまとめました。

一つ目は、小頭症との関係です。

ブラジルでは小頭症がジカ熱の流行と並行して爆発的に増えてしまったため、「おそらく」妊婦がジカ熱に感染したせいだろうと考えています。これまで毎年1年間で150人程度だった小頭症患者さんが、この4ヶ月で4000人にも膨れ上がっているのです。WHOもその他のデータとあわせて「関連が強く疑われる」と言っています。

二つ目は、感染の仕方です。

ニュースでは色々な感染経路が報道されていますが、はっきり言っていずれもその真偽はまだ不明です。

はっきりしていることは、感染した人を刺した蚊が、他の人を刺した時に感染するということです。

三つ目は、日本ではどう予防するかです。

どう日本で蔓延するのを防ぐか。

今の所日本にはほとんどジカウイルス自体がいないと考えられますので、問題は海外旅行をした人が「お土産」としてジカウイルスあるいはウイルスを持った蚊をカバンなどに着けてきてしまうという可能性です。

それを防ぐためには「水際作戦」という、海外からの窓口つまり空港という「水際」で厳しくチェックをし日本に入ってくるのを阻止しようという方法があります。これは色々な感染症でしばしばとられる方法ですが、この病気は感染していることが本人にもはっきりとわからないことも多く有効ではなさそうです。

今出来ることはなにか

これからもマスコミによるセンセーショナルな報道が続くでしょう。

ですが、マスコミは一つ一つの事件を即時的に伝えてくれるのみで、その信ぴょう性までは保証しません。記事をまとめているのは医療の素人ですから、その記事の科学的な根拠の吟味はできませんし、記事が与える影響については考えません。

専門家による正しい記事が必要であると筆者は考えています。

以上を踏まえると、今我々に出来ることは

・妊婦さんにはブラジルなど中南米の流行地への渡航を控えてもらうこと

くらいと言えそうです。

冬が終わり蚊が増えてきたら、都会での蚊が多い公園などでは以前のデング熱流行の時と同じように蚊の駆除が必要になるかもしれません。

以上、2016年2月6日現在でわかっていることをまとめました。

大切なことは正しい情報を収集し、新型インフルエンザ流行時の「マスク買い占め」のような過剰な反応をしないことです。

(参考)

国立感染症研究所「ジカウイルス感染症(ジカ熱)のリスクアセスメント」

厚生労働省ホームページ「ジカウイルス感染症について」

YOMIURI ONLINE 知って安心!今村先生の感染症塾

CDC 'Zika virus'