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2列目の選手起用を考察。このまま久保をベンチスタートにしていいのか?【トルコ戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

三笘と伊東は欠かせない重要戦力

 両チームとも控えメンバー中心のスタメンを編成した日本対トルコの一戦は、前半に3ゴールを奪った日本が逃げ切る格好となり、最終的に4-2で勝利を収めた。

 試合の強度やクオリティの部分では、3日前に行われたドイツ戦と比べて大きく低下した印象は否めない。とりわけ前半のトルコは守備面でまったく統率がとれておらず、日本が立て続けに3ゴールをマークしたのも当然というべき緩慢さが目立っていた。

 いずれにしても、日本としては、そんな中でも代表初先発で2キャップ目となった伊藤敦樹が代表初ゴールをマークし、さらに3キャップ目の中村が2ゴールを奪ったことは、今後を見据えたうえでも収穫のひとつと言えるだろう。

 とはいえ、前半から攻撃面で際立っていたのは、絶好調の久保だった。

 4-2-3-1の1トップでフル出場を果たした久保は、立ち上がりから相手が与えてくれたスペースを見逃さず、ピッチを縦横無尽に動いてボールを受けて次々とチャンスを構築。アシストはつかなかったが、自ら狙った無回転シュートから中村のゴールを生み出した。

 途中出場したドイツ戦でも終了間際の2ゴールをアシストした久保だが、先発した試合では、6月のエルサルバドル戦に続く大活躍となった格好だ。

 こうなると、指揮官を悩ませるのが2列目の選手起用になる。とりわけ後半開始から右ウイングで起用した伊東も、この試合でも圧倒的な存在感を示したからだ。

 戦況が厳しい中、自陣ペナルティエリア付近から一気にドリブルで加速し、そのまま敵陣ペナルティエリアまで進入してPKを獲得した単独プレーも圧巻だったが、59分に中央にポジションをとって古橋に配給した絶品ピンポイントスルーパスは、オフサイドにはなったものの、それ以上に見逃せないプレーだった。

 伊東の充実ぶりは、カタールW杯アジア最終予選から継続されているが、当時は縦に速い右サイドの“槍”として突破役を担いながら、ゴール前では精度の高いフィニッシュワークでゴールを量産。しかし、カタールW杯前からそれだけに収まらず、攻撃に変化を与えることができる最重要戦力になった。

 昨シーズンからプレーするスタッド・ランスでの多彩なプレーぶりが証明するように、現在の伊東は単なる右サイドのウインガーではなく、前線ならどこでもプレーできるマルチロールへと進化している。仮に左サイドで起用しても、三笘とは違ったアクセントになるはずだ。

 日本にとって、現在の三笘と伊東は絶対に欠かせない攻撃の武器となっていることは言うまでもない。では、これだけ結果を残している久保を、ベンチスタートのままにしていいのだろうか。

 10月の国内親善試合(カナダ戦、チュニジア戦)は、おそらくその後に続く格下相手のW杯アジア2次予選と、来年1月に予定されるアジアカップに向けた準備試合となるはずだ。それらの試合では、相手が日本に対して引いて守ってくることは想像に難くない。

 現状、4-2-3-1で戦う場合、1トップ下のファーストチョイスはドイツ戦で先発した鎌田になる。しかし、ほとんど敵陣でサッカーをすることになるW杯アジア2次予選やアジアカップで、ボランチ2枚を守備的MFにする必要はないだろう。

 鎌田をボランチ起用すれば、久保の1トップ下起用に現実味が帯びてくる。マルチロールの伊東と流動的にポジションを変えることもできるうえ、左の三笘との融合も難しくはないだろう。

 1トップにタイプの異なる上田か古橋のどちらを起用するにしても、2列目に伊東、久保、三笘を並べ、鎌田をボランチの一角で起用することで、どこまで攻撃のバリエーションを増やせるかを試し、かたちにする価値はある。しかもこのメンバー編成なら、スムースに4-3-3に移行もできるだろう。

 果たして、10月の2試合で森保監督はどんな2列目起用を披露するのか。格下相手に無理して主力を起用する必要はないが、アジアカップで確実に優勝したいと考える指揮官の傾向からすると、今後も主力を招集し続けるだろう。

 だとしたら、引いて守る相手に対し、バランスを重視するのではなく、強引にゴールをこじ開ける“武器”を装備するための準備だけは欠かしてほしくない。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】中村航輔(45+3分途中交代)=5.5点

前半38分の失点シーンでは、難しい処理だったがハンブルをしてしまい、しかも負傷を負う羽目に。序盤から大きなミスもなく無難にプレーしていただけに、残念な結果となった。

【右SB】毎熊晟矢(HT途中交代)=6.5点

代表デビュー戦だったにもかかわらず、慌てることなくプレーできていた。先制点のパス交換にも加わり、36分には自ら奪ったボールを敵陣に運んで見事なアシストを記録した。

【右CB】谷口彰悟=6.0点

安定したパス供給を見せたが、守備面では1対1の攻防で後手に回るシーンもあり、やや不安定さを露呈した。デビュー戦となった町田とのコンビネーションも改善の余地あり。

【左CB】町田浩樹(79分途中交代)=6.0点

代表デビューを飾った試合としては及第点のパフォーマンスだったが、とりわけ印象に残るようなプレーもなかった。レギュラーを脅かす存在になるまでには、まだ成長が必要か。

【左SB】伊藤洋輝=5.5点

ほぼ守備一辺倒で、攻撃で貢献できたのは試合の終盤。クロス供給も1本に終わった。所属クラブでも左SBを任されるが、それを代表に還元するまでにはもう少し時間が必要か。

【右ボランチ】伊藤敦樹(64分途中交代)=6.5点

初のスタメン出場となった試合だったが、積極的に自分の良さを出して素晴らしいミドルシュートを突き刺した。デュエルでも互角に戦った。疲労もあり後半64分に遠藤と交代。

【左ボランチ】田中碧=6.0点

遠藤に代わってキャプテンマークを巻いて先発出場。ただ、ドイツ戦のゴールを忘れさせるような大人しいプレーに終始し、存在感は薄かった。82分のシュートを決めたかった。

【右ウイング】堂安律(HT途中交代)=5.5点

試合開始からよく動き、ボールによく触り、周囲と積極的に絡むことはできていたが、決定的な仕事はできずに終わった。爪痕を残せないまま、ハーフタイムでベンチに退いた。

【左ウイング】中村敬斗(HT途中交代)=6.5点

日本の攻撃が右サイドに偏っていたこともあり、左サイドではなく、ゴール前で仕事をすることに。パフォーマンス自体は普通だったが、その中で2得点を決めたところは高評価。

【トップ下】久保建英=7.0点

好調ぶりと自信を示すかのように攻撃の中心核となって躍動。中盤の低い位置や前線のライン間でボールを受けてチャンスを作った。自らのシュートから日本の2点目を生んだ。

【CF】古橋亨梧=5.5点

相手DFの背後を狙う動き、ゴール前の細かい動き直しなど、自身の特長をしっかりと出すことはできたが、肝心のシュートが決まらなかった。決定機をひとつでも決めたかった。

【GK】シュミットダニエル(45+3分途中出場)=6.5点

負傷した中村に代わって前半アディショナルタイムから出場。最初の処理でリズムに乗り、後半もシュートブロックでチームのピンチを救った。安定したパフォーマンスだった。

【FW】伊東純也(HT途中出場)=7.0点

堂安に代わって後半開始から右ウイングでプレー。右サイドからクロスを供給するだけでなく、中央で抜群のスルーパスも披露。圧巻の高速ドリブルでPKを獲得し、自ら決めた。

【FW】前田大然(HT途中出場)=6.0点

中村に代わって後半開始から左ウイングでプレー。左サイド攻撃がほぼなかった前半の流れを変え、左サイドを活性化させた。得点には至らなかったが、古橋に高速クロスを供給。

【DF】橋岡大樹(HT途中出場)=6.0点

毎熊に代わって後半開始から右SBでプレー。ポジショニングや1対1で不安定さを露呈した部分もあったが、攻撃ではタイミングよくオーバーラップするなど自分の特長を出した。

【MF】遠藤航(64分途中出場)=6.0点

伊藤敦樹に代わって後半途中からボランチの一角でプレー。劣勢の局面での出場だったが、さっそく守備面の綻びを修正し、試合の流れを変えた。キャプテンも板についてきた印象。

【DF】冨安健洋(79分途中出場)=採点なし

町田に代わって後半途中から左CBでプレー。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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