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どうなる? 森保監督が新戦力を発掘中の両サイドバックの行方【エルサルバドル戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
後半開始から右SBで起用されたマルチロールの相馬勇紀(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

エルサルバドル戦のチェックポイント

 試合後、森保監督が「相手が退場したので評価するのは難しいですが、球際で勝つ、ボール保持者もゴールに向かう、オフザボールの選手もそれに絡むという部分では、相手が11人でも出来たのではないかと思います」と語ったように、メンバーの質の違いを考えても、おそらく11人対11人で戦ったとしても、日本がエルサルバドルに完勝していた可能性は高かった。

 それを考えれば、開始1分で先制し、開始2分に得たPKで2-0としたうえ、さらにその場面で相手CBが退場した後、日本が一方的な展開によって6-0で勝利したこと自体に驚きはない。

 いずれにしても、開始3分以降は11人対10人になったことで評価の対象には出来ない試合になってしまったわけだが、これもサッカーだ。2018年ロシアW杯のコロンビア戦のように、こういった事態も稀に起こる。

 ただ、この試合は単純にエルサルバドルが1人少なくなっただけでなかった。ペレス監督は、CBロナルド・ロドリゲスが退場したことで、FW登録の選手を左SBに移し、右SBの選手をCBにするなど、付け焼刃の変更で対応。

 それがさらなる守備の混乱を招いたことで、前半途中にCBを投入して4-4-1から5-3-1に布陣変更。後半開始にも1枚交代カードを切って、布陣を4-3-2に変更するなど、ベンチワークも乱れに乱れた。

 つまりこの試合のエルサルバドルは、終了のホイッスルを聞くまで混乱状態が続いていたのだった。もともと実力で上回る日本が6点を叩き込み、クリーンシートでエルサルバドルを圧倒した背景には、そういった事象も大きく影響した。

 そんな試合ではあったが、おさえておきたいいくつかのポイントはあった。

 まず、ポジティブな材料となったのが、4-3-3の右ウイングで先発した久保が1ゴール2アシストという結果を残したうえで、上々のパフォーマンスを披露したこと。これまでA代表で際立つことが少なかっただけに、本人にとっても自信になったはずだ。

 また、左ウイングで先発した三笘も久保のゴールをアシストした他、自ら決めたに等しいシュートもあり、多くのチャンスを演出。久保同様、今季における所属クラブでの成長を、しっかり代表に還元することが出来たことは明るい材料だった。

 選手起用で言えば、人材不足の両サイドバックで新しい選手が試された。

 左を任されたのは、名古屋グランパスでWBとしてプレーする森下。3月の2試合(ウルグアイ戦、コロンビア戦)では、伊藤(洋輝)とバングーナガンデ佳史扶が起用されたが、今回新たに森下がそこで試され、及第点のパフォーマンスを見せることが出来た。

 逆に右サイドは、3月の2試合に続いて菅原が先発。3月のコロンビア戦は途中出場で橋岡がプレーしたが、今回は、本職がウインガーの相馬をテスト。招集メンバーを見た時に、菅原以外に右SBでプレーできそうな戦力が不在だっただけに、相馬がWBにも対応するマルチロールとはいえ、ある種のサプライズでもあった。

 もちろん、戦局や点差を考えてこその起用かもしれないが、少なくとも古橋の得点をアシストした相馬のプレーぶりは悪くなかった。おそらく次のペルー戦も菅原が先発することになりそうだが、右SBとしての相馬が違ったシチュエーションでどのようなパフォーマンスをするのか、再テストを見たいところだ。

 いずれにしても、現在の森保監督はカタールW杯でプレーした両サイドバックの戦力を招集せず、新たな人材を発掘中。そう見ていいだろう。

 Jリーグを見渡しても、決して人材豊富とは言えない状況のサイドバックは、今後も注目のポジションになりそうだ。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】大迫敬介=6.5点

前半24分には相手の直接FKをシュートストップ。前半44分には4ゴール目につながるロングフィードを上田に配球。プレー機会はほとんどなかったが、ミスもなく上々の内容。

【右SB】菅原由勢(HT途中交代)=6.5点

対峙した相手のディフェンス能力も影響したとはいえ、序盤から積極的にオーバーラップを仕掛け、久保とのコンビネーションプレーも良かった。前半のみのプレーで途中交代。

【右CB】板倉滉=6.5点

相手の攻撃を受ける回数が少なかったが、谷口の背後のカバーリング、ビルドアップ時の配球など、最終ラインを引き締めた。終了間際のCKでは惜しいシュートシーンも披露した。

【左CB】谷口彰悟=6.5点

開始早々1分のFKのチャンスで久保のクロスに合わせ、ドンピシャのヘディングシュートを決めた。守備では何度か9番に背後を取られたが、及第点のパフォーマンスを見せた。

【左SB】森下龍矢(59分途中交代)=6.0点

左SBとして代表デビューを飾った。前半18分には左サイドからクロスを配球し、決まらなかったが、久保に決定機をお膳立て。デュエルで負けた場面もあったが及第点の出来。

【アンカー】守田英正(76分途中交代)=6.5点

キャプテンマークを腕に巻き、アンカーとして安定感のあるプレーを披露した。ビルドアップ時も絶妙な立ち位置で経由地となり、得点シーンの前段階で重要な役割を演じていた。

【右インサイドハーフ】堂安律(65分途中交代)=6.5点

4-3-3の右インサイドハーフとしてプレー。トップ下や右ウイング時と比べると持ち味を発揮できたとは言えないが、貪欲さを見せて1ゴールを記録したので0.5点を加算した。

【左インサイドハーフ】旗手怜央=6.5点

久しぶりの代表でのプレーだったが、所属クラブでの成長ぶりを披露。守田と三笘とよく絡み、後半60分には相手GKのパスミスをインターセプトし、ゴールの起点にもなった。

【右ウイング】久保建英(65分途中交代)=7.0点

開始早々に谷口の先制ゴールをFKでアシスト。その後に2度の決定機を逃したが、終わってみれば1ゴール1アシストと大暴れ。今季の成長ぶりを代表に還元することが出来た。

【左ウイング】三笘薫(HT途中交代)=6.5点

前半25分には久保のゴールをアシスト。44分の堂安のゴールは、触らなくても三笘のゴールになっていたはず。それ以外のシーンでも相手の脅威となり、上々のプレー内容だった。

【CF】上田綺世(65分途中交代)=6.5点

前半2分に相手のミスを逃さず、PKを獲得。自ら決めて、嬉しい代表ゴールをマークすることに成功した。その後もゴールを決めるチャンスはあったが、VAR判定などで加点ならず。

【FW】相馬勇紀(HT途中出場)=6.5点

菅原に代わって後半開始から右SBでプレー。慣れないポジションだったが、人数の差や得点差もあったので伸び伸びとプレー。ピンポイントクロスで古橋の得点をアシストした。

【FW】中村敬斗(HT途中出場)=6.5点

三笘に代わって後半開始から左ウイングでプレー。後半60分には久保のパスを落ち着いてゴールネットに突き刺し、代表2キャップ目にして初ゴールを記録。上々の出来だった。

【MF】川辺駿(65分途中出場)=6.0点

堂安に代わって後半途中から右インサイドハーフでプレー。決定的な仕事は出来なかったが、広範囲にわたってよく動き、ボールにもよく絡んだ。次戦でも出場機会はありそうだ。

【FW】古橋亨梧(65分途中出場)=6.5点

後半途中から上田に代わって1トップでプレー。後半73分には相馬のピンポイントクロスをヘッドで合わせて1ゴールを記録。久しぶりの代表で昨季の成長を存分に披露していた。

【FW】浅野拓磨(65分途中出場)=5.5点

久保に代わって後半途中から右ウイングでプレー。決定的な仕事は出来ず、この試合で途中出場した他の選手と比べると物足りなさを感じさせた。チャンスを逃した場面もあった。

【MF】伊藤敦樹(76分途中出場)=採点なし

守田に代わって後半途中からアンカーポジションでプレー。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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