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本当にこのままで強くなれるのか? 第2次森保政権の船出にあたって【ウルグアイ戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:つのだよしお/アフロ)

無風で時計の針を進めてはいけない

「勝てなかったですが、2026年に向けて、選手たちはなんとか勝ち切ろうと応援してくださった方々に気持ちを届けてくれたと思います」

 契約更新後、初めての試合となったウルグアイ戦を1-1で終えた森保監督は、試合後にそうコメントした。

「2026年に向けて」

 まだカタールW杯の興奮の余韻が冷めやらぬ年の暮れ、急ぐように日本サッカー協会(JFA)は森保監督と次の2026年W杯までの新たな契約を結んだ。その際、JFAはW杯本大会における評価については言及したが、2018年9月からカタールW杯前までの検証結果について触れることはなかった。

 それまでの4年半の強化プロセスを検証せずに、短期決戦のW杯本大会だけを見て、今後4年間の指揮を任せたわけだ。しかも、目標は達成できなかったが、「日本社会に多大な影響を及ぼすような結果を残してくれたことは大きな評価」とした。

 いつの間にか、日本サッカー界にとってのW杯は、国民に感動を与えるためのイベントになったようだ。

 反町技術委員長からは、次のW杯に向けて主体的なサッカー、自分たちで仕掛けるサッカーで勝てるようにしてほしいという要求があったそうだが、それができなかった事実に蓋をして、「社会に影響を及ぼした」ことを重視した格好だ。

 成長に欠かせないはずの自己批判を避け、またしてもまともな検証をしないまま、次に向けた方向性が決まった。少なくとも、客観的に見て、その続投理由は本当に強くなりたいという意思表示として受け止めることは難しい。

「2026年に向けて」という森保監督のコメントを聞いた時、長年日本代表を見続けてきたコアなサッカーファンはどんな気持ちだっただろうか。森保ジャパンが残した4年半の足跡を認識している彼らが、これから先の約3年半、日本代表の試合を見続けてくれるのか、心配になる。

 過去4年半にわたって積み上げたサッカーを本番で諦めざるを得なかったという事実は、強化の失敗と同義と言える。森保監督は、4年半という年月をかけて越えられなかったハードルを、これから約3年半で越えることができるのか。

 来年のアジアカップにしても、出場枠が増えたW杯アジア予選にしても、対戦する相手はみなアジア勢。W杯でベスト16を乗り越える時、日本の前に立ちはだかるのは間違いなくアジア以外の国になる。

 そのダブルスタンダードの中、ラウンド16の壁を乗り越えるための武器を身に付けることが容易でないことは、これまで日本サッカー界が繰り返し経験してきたはずだ。

 そういう意味でも、第2次森保ジャパンが無風のまま時計の針を進めることは、避けなければならない。本当にサッカーの強い国になりたいのなら、今度こそ強化プロセスをひとつひとつ検証しながら、より厳しい目で見ていく必要がある。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】シュミット・ダニエル=6.0点

相手の枠内シュート2本に対し、1本はゴールを許したがノーチャンス、もう1本はしっかりとキャッチした。空中戦でも安定感を発揮した他、得意のビルドアップ時の絡みも上々。

【右SB】菅原由勢(89分途中交代)=6.0点

コロナ禍で行われた2020年10月のカメルーン戦以来、代表2試合目の出場となったが、パス供給でチャンスも演出。同点のシーンでは、アシストした伊東に縦パスを供給した。

【右CB】板倉滉=6.0点

ビルドアップ時の工夫は物足りなさもあったが、カバーリングやエアバトルなどゴール前の守備は申し分のないものだった。経験の浅い選手で構成されたDFラインを統率した。

【左CB】瀬古歩夢=5.5点

守備面で大きなミスはなかったが、ビルドアップ時はボールを失うことを怖れて消極的なバックパスや横パスが目立った。代表デビュー戦だったことを考えれば、及第点の出来。

【左SB】伊藤洋輝=5.0点

本職ではない4バック時の左SBとして出場。守備面では及第点のパフォーマンスだったが、攻撃時に効果的な仕事ができず、SBとしては物足りなさも。パス供給も消極的に見えた。

【右ボランチ】遠藤航=5.5点

DFラインに落ちてビルドアップに参加したが、立ち位置が中途半端でパス供給時に角度をつけられなかった。守備では貢献できたが、攻撃面で相手を困らせることができなかった。

【左ボランチ】守田英正(74分途中交代)=5.5点

持っている能力からすれば十分に発揮できなかった印象だが、めだったミスもなく、及第点の内容だった。アタッキングサードで何度か仕事をしたが、決定的なものはなかった。

【右ウイング】堂安律(61分途中交代)=5.0点

立ち上がりから積極的にボールを受けたが、局面を打開するまでには至らず。時間の経過とともにトーンダウンして、結局シュートを1本も打てずに後半途中でベンチに下がった。

【左ウイング】三笘薫(89分途中交代)=6.0点

試合開始早々に得意のドリブルで相手ゴールに迫った他、何度かドリブルで相手に脅威を与えた。ただし、フィニッシュにつながるパスや自らのシュートがなかった点が反省点か。

【トップ下】鎌田大地(74分途中交代)=5.0点

5番(ベシノ)の厳しいマークを受けたこともあり、中央高い位置でボールを受けることができなかった。浅野との絡みも少なく、持ち味を発揮できずに後半途中で西村と交代した。

【CF】浅野拓磨(61分途中交代)=5.0点

相手DFの背後を狙ったランニングからシュート3本を放ったが、いずれも確率の高くないものだった。ライン間でボールを受ける回数も少なく、周囲との関係でも問題があった。

【MF】伊東純也(61分途中出場)=6.5点

堂安に代わって後半途中から右ウイングでプレー。縦方向への突破力で流れを変え、クロスを3本供給。そのうちの1本は西村の同点弾のアシストとなった高精度のクロスだった。

【FW】上田綺世(61分途中出場)=5.5点

浅野に代わって後半途中から1トップでプレー。伊東とのワンツーで惜しい場面を作ったが、ボールを受ける作業が思うようにできず。シュートも0本で、爪痕を残せなかった。

【MF】田中碧(74分途中出場)=5.5点

守田に代わって後半途中からボランチの一角でプレー。判断ミスやボールロストなどもあり、好調時のパフォーマンスと比べると物足りないパフォーマンスに終始した印象だった。

【MF】西村拓真(74分途中交代)=6.5点

後半途中から鎌田に代わって1トップ下でプレーした。後半75分、伊東の抜群のクロスボールを逃すことなく、きっちり決めて値千金の同点ゴールを決めた他、上々の出来だった。

【MF】中村敬斗(89分途中出場)=採点なし

三笘に代わって後半途中から左ウイングでプレー。出場時間が短く採点不能。

【DF】橋岡大樹(89分途中出場)=採点なし

菅原に代わって後半途中から右SBでプレー。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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