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W杯メンバー26人はほぼ確定! 本番用のチーム戦術は不安材料ばかり【エクアドル戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

チーム戦術的収穫は皆無に等しい

 メンバー発表前の最後の強化試合となったエクアドル戦をゴールレスドローで終え、森保ジャパンのW杯本大会に向けた最終テストがすべて終了した。

 まず、注目のW杯メンバー選考については、よほどのことが起こらない限り、今回の2試合で先発した22人は確定したと見て間違いなさそうだ。

 GKは権田、シュミット・ダニエル。DFは酒井、吉田、冨安、中山、山根、谷口、伊藤、長友。MFは遠藤、守田、田中、柴崎、伊東、鎌田、久保、堂安、南野、三苫。

 そして4人が均等にプレーした1トップとして先発したのは前田と古橋。アメリカ戦の後半に出場した町野は大迫の復調待ちの色合いが強いため、メンバー入りのハードルが高いだろう。エクアドル戦の後半に出場した上田は、大迫が復調できなければタイプ的にファーストチョイスになる可能性もある。

 さらに、森保監督が好む浅野が負傷中ということで今回は招集外だったが、仮に大迫と浅野がコンディション的に整えば、FWは大迫、浅野の2人がチョイスされる可能性が高い。これに3人目のGKとして川島を加えると、23人。今大会は特別に26人の登録枠が設けられているため、残るはあと3人だ。

 最も注目されるのは、リハビリ中の板倉の復調具合になる。仮に復調すれば、DF枠に加わることは間違いなく、その場合、伊藤が残り3枠のうちのひとりに収まるはず。MFでこの特別枠に収まりそうなのが、森保監督が信頼を寄せる万能タイプの原口だ。

 FWは、上田がこの枠に収まり、大迫、浅野とともにメンバー入りの可能性十分。大迫が間に合わなければ前田が昇格し、浅野も復調できなければ古橋が入るだろう。

 ただし、最も不透明な板倉の状況次第では、DFなら瀬古、MFなら旗手が有力。いずれも今回の2試合では出場機会を与えられなかったが、特に旗手は所属クラブで好調を維持できれば、森保監督も瀬古より旗手をチョイスするだろう。

 登録メンバーがほぼ見えてきた一方で、チーム戦術は見えないままだ。今回の2試合を終え、そこが最も不安材料として残された。

 森保監督は、本番前の最終テスト2試合で、いずれも4-2-3-1を採用した。また、試合終了間際の時間帯では、3バック(5バック)システムを使ったことからすると、少なくとも本番は4-2-3-1を基本に、オプションとして3バックを使う腹積もりのようだ。

 その3バックシステムも、アメリカ戦では3-4-2-1だったが、エクアドル戦では鎌田を2トップ下に配置した3-4-1-2を使っている。左WBを相馬が、右WBを山根が担当したことを考えると、アメリカ戦の3-4-2-1よりは攻撃の駒を多く残した布陣だ。

 ただし、この使い分けについては、交代カードを切った順番の関係でたまたまそうなった可能性もあるので、現段階ではオプションの3バックは1種類と見ておくのが妥当だろう。少なくとも、アジア最終予選の途中から採用し続けた4-3-3(4-1-4-1)は、プランC以下に格下げした格好だ。

 問題は、今回の2試合を通して浮かび上がった4-2-3-1の運用方法だ。

 4-3-3に基本布陣を変更する前の森保監督は、4-2-3-1をボール保持型のコンセプトの下で運用していた。しかし今回の2試合では、ボールを保持することを目指しておらず、あくまでもボールを奪ったら縦に速く攻め切ることを狙いとしていた。

 ところが、前からのプレスがハマらないアメリカ戦の後半とエクアドル戦では、効果的なカウンターのかたちを見せることができなかった。とりわけ相手が最終ラインを3人にしてビルドアップする場合、日本は4-4-2のブロックを形成して自陣で守ることを強いられていた。

 にもかかわらず、自陣で守った後にどのようにして敵陣まで前進するか、という課題については何の解決策も提示できないままだった。わずかにエクアドル戦の後半に、上田に当てて南野、あるいは鎌田が前向きでボールを持った状態で何度か前進はできたが、意図的というよりも、アドリブ、偶発性といった再現性の低いカウンターに見えた。

 結局、大事な最終テストでは、ドイツ対策らしきものも見られなかった。

森保監督は、本当にこのままの戦い方でドイツに挑もうとしているのか。あるいはスペインに対して、アメリカ戦とエクアドル戦と同じような4-2-3-1の運用方法で挑むつもりなのか。

 そうあってほしくはないが、選手の力を信じきるのが森保監督の指導スタイルだけに、その可能性は高い。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】シュミット・ダニエル=6.5点

セットピース時のハイボールの処理に不安定さはあったが、前半終了間際のビッグセーブと後半のPKストップはお見事。これを見た森保監督がどのような判断を下すのか注目だ。

【右SB】山根視来=5.5点

得意の斜め方向からのくさびのパスを試みたが、周囲との連携の問題もあって精度を欠いたうえ、攻撃参加時の堂安との絡みも課題を残した。守備面でも安定感を欠くシーンも。

【右CB】谷口彰悟=5.5点

ゴール前では危険察知能力を発揮する場面もあったが、後半81分にPKにつながるファールを犯し、相手FWとの駆け引きで後手を踏んだ。効果的なフィードもできずに終わった。

【左CB】伊藤洋輝=5.5点

守備では無難にプレーして大きなミスはなかったが、相手に振り回されて穴を空けるシーンもあり、及第点に一歩及ばず。ロングフィードの精度を欠き、多くがクリアになった。

【左SB】長友佑都(83分途中交代)=5.5点

クロスをブロックするシーンを含め、守備面で存在感を発揮したが、攻撃面では三笘がボールを保持した時のポジショニングが効果的ではなく、2人で連係するプレーがなかった。

【右ボランチ】田中碧=5.5点

柴崎との役割分担に明確さを欠いたこともあり、攻守両面において中途半端さが目立った。1対1の局面でも力強さを発揮できず、アジア最終予選の時のような存在感はなかった。

【左ボランチ】柴崎岳(66分途中交代)=5.0点

久しぶりにダブルボランチの一角としてスタメン出場を果たしたが、低い位置で試合をコントロールすることはできなかった。ミドルやスルーパスも影を潜め、後半途中で退いた。

【右ウイング】堂安律(83分途中交代)=5.5点

アメリカ戦に続き、79分の場面で決めるべきシュートを決められなかった。前半からボールに絡む回数が少なく、右サイドを活性化させることはできなかった。後半途中で交代。

【左ウイング】三笘薫(66分途中交代)=5.5点

スタメン出場時の効果を示したかったが、相手にチームメイトがいたこともマイナスに作用し、得意のドリブル突破は不発。自陣でロストする場面もあり、不完全燃焼に終わった。

【トップ下】南野拓実(66分途中交代)=5.0点

自身が得意とするトップ下でのスタメンとなったが、下がって受けた時にロストするシーンが多すぎた。後半57分に三笘のクロスを左足で狙ったが、シュートは枠の左に外れた。

【CF】古橋亨梧(HT途中交代)=5.0点

前半40分にゴール前で相手のミスパスから決定機を得たが、決められず。また今回も、自分の持ち味を発揮できないままハーフタイムに交代。周囲との連係を深める必要がある。

【FW】上田綺世(HT途中出場)=6.0点

相手を背負いながら起点となるプレーで攻撃のバリエーションを増やしたが、フィニッシュの部分で結果を残せなかった。本番までに周囲とのコンビネーションを磨けるかがカギ。

【MF】遠藤航(66分途中交代)=5.5点

後半途中から柴崎に代わってボランチでプレーした。守備では相変わらずの安定感を見せたが、攻撃面で大きな変化を与えることはなかった。攻撃時はもう少し大胆でもよかった。

【MF】鎌田大地(66分途中出場)=6.0点

南野に代わって後半途中から1トップ下で、終盤に3-4-1-2に布陣変更してからは2トップ下でプレーした。限られた時間でチャンスを演出するなど、攻撃の軸となりつつある。

【MF】相馬勇紀(66分途中出場)=6.0点

三笘に代わって後半途中から左ウイングで、終盤に3-4-1-2に布陣変更してからは左ウイングバックでプレーした。左サイドに活力を与え、クロスでチャンスを生み出す場面も。

【MF】伊東純也(83分途中出場)=採点なし

堂安に代わって後半途中から3-4-1-2の2トップでプレー。出場時間が短く採点不能。

【MF】吉田麻也(83分途中出場)=採点なし

長友に代わって後半途中から3-4-1-2の3バック中央でプレー。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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