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日本がW杯で対戦する可能性のあるコスタリカの実力は? 新監督が作り上げたチームの特徴

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ロイター/アフロ)

4年前とはまったく別のチーム

 今年のカタールW杯でドイツとスペインという、強豪中の強豪と対戦することになった森保ジャパン。グループリーグ突破のためには、この両国から何とか勝ち点を稼がなければならない。

 しかしその前提条件として、まだ対戦相手が確定していない第2戦で確実に勝ち点3を手にする必要がある。

 日本が第2戦で対戦するのは、6月14日に予定される大陸間プレーオフ、コスタリカ対ニュージーランド戦の勝者だ。

 もちろん中立地カタールでの一発勝負ゆえ、何が起こるかは分からない。しかし、コスタリカが属する北中米カリブ地区と、ニュージーランドが属するオセアニア地区のレベル差や過去の実績を考えれば、コスタリカ優位は揺るがないだろう。

 日本が直近でコスタリカと対戦したのは2018年9月11日。森保ジャパンの初陣にあたる国内親善試合だった。そのときは、前半の相手のオウンゴールを皮切りに、後半に南野拓実と伊東純也が加点し、最終的に日本が3-0で勝利を飾っている。

 ただし、その試合は、日本もコスタリカもBチーム的メンバー編成だったこともあり、あまり参考にはならない。しかも当時コスタリカを率いていたロナルド・ゴンサレス監督は、極度の成績不振により、昨年6月のアメリカ戦を最後に解任されている。

 要するに、現在のコスタリカは、まったく別のチームだと認識しておかなければならない。

急成長を遂げる北中米カリブ地区

 そのうえで、カタールW杯での「対コスタリカ戦」を考える場合、その大前提として把握しておきたいのが、近年の北中米カリブ地区のレベルが急上昇している点だろう。

 かつて北中米カリブ地区といえば、メキシコとアメリカの2強時代が続いていた。ところが、近年はそれ以外のチームが急速に力をつけて、たとえば2014年ブラジルW杯の最終予選では、メキシコが4位に沈み、ニュージーランドとのプレーオフに勝利して、ようやく本大会への切符を手にするという波乱があった。

 前回2018年W杯最終予選でも、パナマが初出場の偉業を達成した一方で、アメリカがまさかの5位に。実に8大会ぶりの予選敗退を強いられたことは記憶に新しい。

 そして今大会の最終予選で首位通過を果たしたのは、2位メキシコ、3位アメリカを上回る成績で、1986年大会以来2度目の出場を決めたカナダである。

 過去2大会連続出場を果たしているコスタリカは、カナダ躍進のあおりを受けた格好で、北中米カリブ地区の4位チームとして大陸間プレーオフに望みをつなぐことになったというわけだ。

 次回の2026年W杯は、アメリカ、メキシコ、カナダの3カ国開催。そういう意味で、過去5大会の最終予選で敗れたカナダの大躍進は必然と言えるが、少なくとも、メキシコやアメリカがレベルを落としたわけではないだけに、以前とは比較にならないほどコンペティティブな地区になっていることは間違いない。

 現在のFIFAランキングを見ても、9位のメキシコを筆頭に、アメリカが15位、コスタリカが31位、カナダが38位。21位イラン、23位日本、29位韓国、42位オーストラリア、49位サウジアラビアというアジア地区と比べても、互角以上と見たほうが妥当だろう。

 北中米カリブ地区では、すでにCONCACAFネーションズリーグがスタートしていることも含め、今後もアジアとは次元の異なるスピード感でレベルアップが進みそうだ。

チーム最大の強みは強固な守備

 それらを踏まえてW杯本番でのコスタリカ戦をイメージすれば、決して簡単な相手ではないことは想像に難くない。

 しかもコスタリカは、2014年大会で、日本が目標とするW杯ベスト8入りを達成したチームだ。

 イタリア、イングランド、ウルグアイがひしめく死のグループを2勝1分けで乗り切って首位通過を果たすと、ラウンド16ではギリシャをPK戦の末に下し、準々決勝でもオランダ相手にゴールレスドロー。最後はPK戦で涙を呑んだが、ブラジル大会で一大旋風を巻き起こした実績を持つ。

 現在チームを率いるのは、昨年7月のCONCACAFゴールドカップから指揮を執るコロンビア人のルイス・フェルナンド・スエレス監督。さすがに就任当初は勝てない時期が続いたが、守備の立て直しに着手したことが奏功し、最終予選では直近7試合を6勝1分けの成績で、4位の座を確保することに成功した。

 その間、アウェーのメキシコ戦を0-0、ホームでの首位カナダ戦は1-0で勝利、そして最終節ではホームにアメリカを迎えて2-0の完勝と、チームの調子は右肩上がり。3位アメリカとは同勝ち点で、得失点の差だった。

 布陣は4バックと3バックを併用。最大の特徴は、不動の正GKケイロル・ナバス(パリ・サンジェルマン/フランス)と、CBフランシスコ・カルボ(サンノゼ・アースクエイクス/アメリカ)を中心とした強固なディフェンスだ。最終予選で複数失点を喫したのは、チーム再建中に戦ったアウェーでのアメリカ戦(昨年10月14日)のみで、クリーンシートは5試合もある。

 逆に、得点力はそれほど高くなく、少ないチャンスをものにして逃げ切るパターンを得意とする。そのなかでも重要な得点源になっているのがセットプレー。最終節のアメリカ戦でも、コーナーキックとフリーキックからゴールを決めて勝利をつかんでいる。

森保ジャパンに勝ち目はあるか?

 とはいえ、日本にとって恐れることばかりではない。

 現在コスタリカの主軸でヨーロッパ組は、ナバスとFCコペンハーゲン(デンマーク)の左SBブライアン・オビエドぐらいで、10人がヨーロッパでプレーしていた2014年W杯当時と比べると、国際経験の部分で明らかに見劣りする。

 サブメンバーも含めてほとんどの選手がヨーロッパでプレーする日本は、個の力では圧倒的優位な立場にある。もちろん個の力だけで勝敗が決するわけではないが、そこは自信を持っていいだろう。

 いずれにしても、第2戦の相手がコスタリカに決まった場合、日本にとっては要警戒だ。

 

 過去のW杯で日本が北中米カリブ地区のチームと対戦したのは、初出場を果たした1998年フランス大会のジャマイカだけ。しかし、日本が勝ち点3を想定していたはずの初出場同士の対戦は、日本が1-2で敗れて3戦全敗。不覚をとった。

 あれから24年。日本が同じ轍を踏まないためにも、周到な準備が必要になることは間違いなさそうだ。

(集英社 Web Sportiva 4月15日掲載・加筆訂正)

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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