Yahoo!ニュース

35歳を過ぎても輝きはダイヤモンド。シーズン後半戦のラ・リーガで見逃せない大ベテランたちの躍動

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ロイター/アフロ)

古巣バルサ復帰で抜群の存在感を示す38歳

 サウジアラビアで開催されたスーペル・コパ・デ・エスパーニャ2022の準決勝で実現した、今シーズン2度目の「エル・クラシコ」。レアル・マドリードと対戦したバルセロナの右サイドバックを務めたのは、2015−16シーズン以来、約6年ぶりに古巣に復帰したDFダニ・アウベスだった。

 対峙したブラジル代表の後輩FWヴィニシウス・ジュニオールのスピードに苦しめられた場面はあったが、それでも経験に裏打ちされた間合いの取り方と守備技術で対抗し、後半78分までプレー。チームは延長の末に敗れたものの、ハイレベルなパフォーマンスを披露した。

 昨年11月にシャビ新監督に自ら志願して加入した百戦錬磨の大ベテランは、年明け1月5日に行なわれたスペイン国王杯でデビューすると、20日のスペイン国王杯(対A・ビルバオ戦)まで公式戦4試合連続でスタメン出場。

 しかも、ラ・リーガ第20節のグラナダ戦では後半57分に高精度のクロス供給でFWルーク・デ・ヨングの先制ゴールをアシストし、スペイン国王杯の対A・ビルバオ戦でも後半終了間際にペドリのゴールをオーバーヘッドキックでアシストするなど、衰えを感じさせないパフォーマンスを見せている。

 ダニ・アウベスは現在38歳。少し前までにあったサッカー界の常識に照らせば、この年齢のフィールドプレーヤーにして、これだけのパフォーマンスを維持できること自体が規格外と言える。

 しかし今シーズンのラ・リーガを見渡すと、ダニ・アウベス同様に年齢を感じさせないパフォーマンスを見せている"オーバー35"の選手は意外と多い。その筆頭と言えるのが、現在首位を走るレアル・マドリードのクロアチア代表MFルカ・モドリッチにほかならない。

現在のモドリッチは熟成した赤ワインのごとし

「ボールを持っている時も持っていない時も、あらゆる面ですばらしいプレーを見せてくれた。並外れた選手だね」

 アトレティコ・マドリードとのダービーマッチで勝利の立役者となったモドリッチを、そのように賞賛したのは、チームを率いる名将カルロ・アンチェロッティだ。

 昨年10月19日のシャフタール・ドネツク戦(チャンピオンズリーグ)以来、10連勝を含む公式戦15試合無敗を続けたレアル・マドリードにおいて、このアトレティコ戦までの11試合でスタメン出場を続けたモドリッチは、昨年9月9日に36歳になった。

 しかし今シーズンのプレーぶりを見るにつけ、バロンドールを獲得した2018年よりも充実した時期を過ごしていると言っても過言ではない。

 卓越した技術とセンス、一瞬で局面を変える創造性豊かなパス供給はもちろんのこと、守備時には相手の意図を読み切っているかのようなツボを得たポジショニングと球際の巧さでボールを奪取。汗かき役にもなれる背番号10番は、カゼミーロ、トニ・クロースとの鉄板中盤トリオのなかでも、ひと際輝きを放つ。

 最近のモドリッチのプレーには、まるで年月が経って熟成する赤ワインのような奥深い味わいが感じられるのだ。

 それだけではない。2008年から昨年までクリスティアーノ・ロナウドとリオネル・メッシの2大スターが独占するバロンドールで、唯一その称号を手にした偉大な存在であるにもかかわらず、エゴイズムらしきものを一切感じさせないことも賞賛に値する。

 逆に言えば、だからこそ30代になってからも自らの価値をより高めることができ、36歳になった現在も唯一無二の存在として輝けるのだろう。すべての人のお手本になれる理想的プロフットボーラー像。今回のスーペル・コパ・デ・エスパーニャ大会MVPに輝いたモドリッチは、確実にその領域に足を踏み入れている。

ラ・リーガで輝くベテランストライカー

 一方、決定力によって存在感を示しているベテランもいる。その代表格が、グラナダのFWホルヘ・モリーナと、ラージョ・バジェカーノのFWラダメル・ファルカオだ。

 39歳のホルヘ・モリーナは、下部リーグで長い下積み時代を経て、ベティスの低迷期を支えた苦労人。しかし、30代になってもヘタフェや現在のグラナダで主軸を張っている。

 とりわけ今シーズンは、序盤から不振が続いたグラナダのスーパーサブとしてプレーするなか、スタメン出場を果たした第15節アスレティック・ビルバオ戦で出色のパフォーマンス。その後も好調を維持してスタメンを確保する。

 そして第18節マジョルカ戦では、圧巻のハットトリック達成。ここまでチーム最多の7ゴールを記録している。チームを降格圏から脱出させた原動力として、今年4月に40歳になる大ベテランの存在感は増すばかりだ。

 一方、9シーズンぶりにラ・リーガに復帰したファルカオも、来たる2月に36歳になるベテランとは思えない決定力の高さを示している。

 昇格チームのラージョ・バジェカーノでは後半の切り札として出場するケースが多いものの、短いプレータイムのなかでチーム最多タイとなる5ゴールをマーク。得点の嗅覚と勝負強さはあいかわらずで、今シーズンの台風の目として上位に位置するチームにとって不可欠な戦力となっている。

 そのほかの"オーバー35"のストライカーでは、カディスで勝負強さを発揮するアルバロ・ネグレド(36歳)と、最下位レバンテを自らの決勝ゴールで今シーズン初勝利に導いたロベルト・ソルダード(36歳)も健在ぶりをアピールしている。

中盤と最終ラインでも“オーバー35”が活躍

 中盤に目を向けると、アスレティック・ビルバオのラウール・ガルシア(35歳)、ベティスのアンドレス・グアルダード(35歳)、レアル・ソシエダのダビド・シルバ(36歳)が成熟したプレーを披露する。

 そのなかでも、ここまで20試合3ゴールのラウール・ガルシアはあいかわらず勝負強さと抜群のリーダーシップを発揮するなど、チームの大黒柱として欠かせない存在だ。

 最終ラインで主軸を張るベテランとしては、ビジャレアルでキャプテンマークを巻くラウール・アルビオル(36歳)、グラナダのヘルマン・サンチェス(35歳)、そしてセビージャの右サイドバックとして抜群の安定感を誇るヘスス・ナバス(36歳)の名前が挙げられる。

 近年は速いアタッカーが増えるなか、彼らには経験に裏打ちされた対応力があり、それによって35歳を超えても第一線でプレーできることを証明している。

 最後に、忘れてならないのが、ベティスの象徴として40歳になった現在も現役を続けるホアキン・サンチェスの存在だ。

 エスパニョールの守護神ディエゴ・ロペスよりも約4カ月早生まれのホアキンは、ラ・リーガ最年長プレーヤー。昨シーズンは27試合2ゴールを記録した元スペイン代表のアイドルも今シーズンは途中出場9試合のみにとどまるが、ヨーロッパリーグでは6試合にスタメン出場するなど、40歳とは思えないパフォーマンスを披露している。

 残念ながら、今シーズン限りの現役引退を表明しているため、ホアキンのドリブルを見るのは今年が最後。しかし、彼が後輩たちに与えた影響力は計り知れないものがある。現在のラ・リーガでこれだけ多くの大ベテランが活躍できている要因は、ホアキンの存在があったからこそと言っていい。

 そのホアキンも含め、ラ・リーガ後半戦は「オーバー35」の活躍ぶりに注目してほしい。

(集英社 Web Sportiva 1月17日掲載・加筆訂正)

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

中山淳の最近の記事