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森保采配に変化の兆し! 低調な試合で押さえておきたいポイントは? 【カメルーン戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ロイター/アフロ)

予想通りの内容と予想外の森保采配

 A代表の活動としては実質的に約1年ぶりとなった森保ジャパン。そのリスタート第1戦目となった10月9日のカメルーン戦は、想像の範囲内ではあるものの、残念ながら低調な内容に終始した。

 ヨーロッパでプレーする選手だけでチーム編成したとはいえ、それぞれは所属チームで常時出場機会を得ている選手だけではない。そのため、個々のプレークオリティが低下してしまうことは想定内だ。

 まして、久しぶりに集まった選手が代表のサッカーにアジャストするにはそれなりの時間と実戦経験が必要とされるため、コンビネーションの部分で歯車が合わないのも仕方がないと言えるだろう。

 逆に、対戦したカメルーンが個の力に頼ることなく、コレクティブなディフェンスを貫き通したことは、ある意味で予想外だった。

 試合数日前にコロナ陽性反応を見せた選手と濃厚接触者の選手がチームを離脱する中、若いメンバーを試しながら最後まで守備が崩壊しなかったことは、昨年9月から指揮を執るポルトガル人トニ・コンセイソン監督の手腕を物語っていた。

 一方、日本側で予想外だったことは、森保監督が試合中にさらりと布陣を修正し、後半開始から3-4-2-1にシステム変更したことだった。

 試合中のシステム変更は、昨年6月9日に行われたエルサルバドル戦以来のこと。その時は3-4-2-1から4-2-3-1へ変更したが、今回はその逆。基本布陣の4-2-3-1からオプションの3-4-2-1への変更だった。

 そのエルサルバドル戦では、試合中の布陣変更を予め選手に伝えたうえで行ったが、しかし今回は違っていた。森保監督自身が「試合の流れを見て」判断し、ハーフタイムに変更を選手に伝えたのである。

 これまで、ある意味で“我慢強い采配”を続けてきた森保監督のスタイルを考えると、これは大きな変化と言っていい。つまりこれこそが、この試合で押さえておくべきポイントだ。

 森保ジャパンの強化方法を長期的な視点で見た場合、今回見せた変化は、基本布陣を4バックから3バックに移行する兆候とも捉えることができる。少なくとも、今後の戦いでは3バックを採用する機会が増えることを示唆していると考えられる。

 もちろん長友不在が関係しているとは思うが、次のコートジボワール戦は試合開始から3バックを採用する可能性は十分にある。今後の森保ジャパンを見ていくうえで、是非ともチェックしたいポイントだ。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一=6.0点

相手の枠内シュートが少なかった中、後半51分にタベクの角度のない位置からのシュートを落ち着いてストップ。目立ったミスもなく、最後まで安定したパフォーマンスを見せた。

【右SB】酒井宏樹=6.5点

前半は4バックの右SBで、3-4-2-1に変わった後半は3バックの右でプレーし、適応力の高さを示した。身体能力の高い相手との対戦に慣れており、1対1でも対等に戦えていた。

【右CB】吉田麻也=6.5点

冨安が前に出てマークする時のカバーリングでピンチを救った他、危なげなくDFラインを統率。ビルドアップ時にタイミングよく入れる前線へのロングフィードも上々だった。

【左CB】冨安健洋=6.5点

前半に背後を取られるシーンもあったが、吉田との補完関係により大きな問題は起こらなかった。状況を見極める判断に磨きがかかり、後半も3バックの左で安定感を示した。

【左SB】安西幸輝(HT途中交代)=5.0点

原口のカバーに救われるも、ポジショニングを誤る場面が目立ち、背後のスペースを相手に使われた。所属クラブでは右サイドが主戦場であり、長友の控えとしての不安を残した。

【右ボランチ】中山雄太=5.0点

気合十分で運動量も最後まで落ちなかったが、プレーの質は改善の余地有り。身体能力の高い相手に対してデュエルで劣勢を強いられ、プレッシャーの中での落ち着きも不足した。

【左ボランチ】柴崎岳=5.0点

ボールを保持して全体を俯瞰するようなプレーが陰を潜め、11分の1の存在にとどまった。パス1本でチャンスを作った場面は1回のみで、逆にミスからピンチを招く場面もあった。

【右ウイング】堂安律(65分途中交代)=5.0点

守備で何度か好プレーを見せたものの、前半22分に作ったチャンスの起点になった以外は攻撃で存在感を示せず。得意のドリブル突破もなく、不完全燃焼のままベンチに下がった。

【左ウイング】原口元気(86分途中交代)=6.0点

前半は左ウイングでプレーし、左SB安西のカバー役として守備に戻るプレーでチームに貢献。後半は左WBでより広いエリアをカバーしたため、最後に疲労。交代はやむなし。

【トップ下】南野拓実(71分途中交代)=5.5点

キックオフ直後から前線でアグレッシブに働き、前半19分、22分に立て続けにシュートを狙ったが、決定的な仕事をできずに後半途中で交代。代表戦連続得点記録もストップした。

【CF】大迫勇也=5.0点

十八番のポストプレーも影を潜めた他、全体的にプレーの精度が低かった。後半49分のヘディングシュートは南野が視界を遮ったのか、枠を外れた。復調のきっかけをつかめず。

【MF】伊東純也(HT途中出場)=6.5点

安西に代わって後半開始から出場。右WBでプレーし、自慢の縦突破で何度か好機を作るなど攻撃でキャラの違いを示した。守備では原口のような責任を持った守備が求められる。

【MF】久保建英(65分途中出場)=5.5点

堂安に代わって途中出場し、2シャドーの一角でプレーした。トラップミスやパスミスなどでピンチを招く場面もあった。全体的にプレーの精度が低く、FK以外に存在感を示せずに終わった。

【MF】鎌田大地(71分途中出場)=5.5点

南野に代わって後半途中から出場。2シャドーの一角でプレーしたが、限られた時間の中で出来たことは少なかった。81分には精度の高いクロスから原口のシュートを演出した。

【DF】菅原由勢(86分途中出場)=採点なし

原口に代わって途中出場し、代表デビューを果たした。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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