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森保ジャパンのサッカーが曖昧になっている原因はどこにあるのか?【コロンビア戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

新戦力発掘以外に明確な評価基準を失った森保ジャパンの現状

 技術委員会によるアジアカップの総括が明らかにされないまま、再始動することになった森保ジャパン。あれだけ多くの課題が露呈したにもかかわらず、結局、問題はうやむやになってしまった格好だ。

 そういう意味では、今回のコロンビア戦と26日のボリビア戦は、アジアカップからの継続性が薄く、これまで森保ジャパンが戦った12試合(親善試合5+アジアカップ7)からの積み上げという視点で見ることは難しい。

 しかも、森保監督は当面の目標とされる6月のコパ・アメリカに向けたチーム強化の一環として挑む今回の親善試合に、中途半端なメンバー編成を強いられることとなった。そのコパ・アメリカでは、ヨーロッパでプレーする主力の多くを招集できない可能性が高いからだ。

 果たして、あらゆる点を中途半端なかたちで迎えたコロンビアとの一戦は、そんなチーム状況を象徴するかのような試合となった。

 この日のスタメンの中で、アジアカップのAチームのメンバーだったのは、冨安、柴崎、堂安、南野の4人のみ。GKを含めて、それ以外のポジションはリニューアルされた。W杯以来の招集となった香川はベンチスタートとなったが、おそらくコパ・アメリカでも同じようなメンバーが主力となる可能性は高い。

 とりわけ注目されたのは、森保ジャパン最大のキーマンとなっている大迫勇也の代役だ。今回、森保監督はそのポジションに代表未経験の鈴木と鎌田を招集し、アジアカップで重用した北川航也以外の選択を模索した。

 システムは通常の4-2-3-1ではなく、代表デビュー戦の鈴木と南野を並列にした4-4-2を採用。そもそも森保ジャパンでは、攻撃時は4-2-3-1、守備時は4-4-2のかたちになっていたため、今回のコロンビア戦は、格上相手に守備を重視した戦いを選択したことになる。

 鈴木を1トップにして、南野、中島、堂安らと連動した攻撃を展開することは、鈴木のタイプからして望めそうにないので、必ずしも2トップの選択自体が失敗だったとは言えない。しかし結果的に、日本は序盤から効果的なビルドアップとパス回しが出来ず、前半からコロンビアにボールを支配されることになった。

 しかもコロンビアのカルロス・ケイロス新監督は、アジアカップ時はイラン代表監督を務めていた人物。森保ジャパンのサッカーを熟知していたため、日本は前線中央への縦パスを封じられてしまった。それが、日本がコロンビアに苦戦を強いられた要因のひとつになったことは間違いない。

 ただし、そんな中でも、日本がコロンビアゴールを襲うシーンもあった。前半に目立っていたのは、中島や堂安のカットイン。特に中島からのボール供給で、鈴木が2度のゴールチャンスを迎えたシーンがあったが、残念ながら鈴木はそれを仕留めるだけのクオリティを持ち合わせていなかった。

 後半に入ると、コロンビアが日本を圧倒するようになり、カルロス・ケイロス監督は57分にサパタを投入してシステムを4-2-3-1から4-4-2に変更。以降、中島、堂安は守備に追われ、日本の攻撃は一気に停滞することになってしまった。

 その流れは、香川、乾といった経験豊富な攻撃の駒を投入してからも大きく変わることはなかった。試合終盤、コロンビアが逃げ切り態勢にシフトしたために日本の攻撃シーンが増えたことは事実だが、後ろに重心を置くコロンビア守備陣がそれほど乱れることもなかった。

 結局、冨安のハンドによって与えたPKをファルカオに決められ、そのゴールが決勝点となったわけだが、その結果よりも、日本にとっては内容的に不満の残る試合となったと言えるだろう。

 もっとも、コパ・アメリカの位置づけも曖昧なまま迎えた親善試合において、新戦力の発掘以外に明確な評価基準がないこと自体が、最大の問題だ。後半に森保監督が見せたベンチワークにしても、勝つための采配なのか、選手のテストのための采配なのか、どちらつかずになった原因はそこにある。

 アジアカップで露呈した多くの課題をうやむやにした日本サッカー協会の罪は重い。それによって、森保監督の采配はもちろん、森保ジャパンの目指すサッカーそのものも、ぼやけてしまった印象だ。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】東口順昭(GK)=5.5点

失点はPKなので仕方ないが、最終ラインとのコンビネーションとビルドアップ時の選択に課題あり。経験を買われてスタメンを飾ったが、正GK争いは今後も続きそう。

【右SB】室屋成=5.5点

前半開始から積極的な攻撃参加を見せたが、クロスの精度に課題を残した。後半は守備に追われて前半の勢いが失われてしまった。守備では相手の個人技に振り回された印象も。

【右CB】冨安健洋=5.5点

この試合でも安定感のある守備を見せた。1対1の対応、空中戦、カバーリングと、上々のパフォーマンスだったが、63分にハンドの反則でPKを与えたことが失点につながった。

【左CB】昌子源=5.5点

W杯以来の代表復帰。冨安と初めてCBコンビを組みながら、最終ラインを統率した。後半48分に自らのイージーミスによってピンチを招くなど、いくつか雑なプレーもあった。

【左SB】佐々木翔(89分途中交代)=5.0点

中島の外側を駆け上がって攻撃に絡むシーンもあったが、プレーの精度は高くなかった。守備面でも相手に裏を取られるなど、過去に出場した試合からレベルアップしていない。

【右ボランチ】柴崎岳=5.5点

前半7分に堂安への精度の高いショートパスを見せるなど、何度か得意のプレーを見せたが、全体としては縦パスを封じられた印象。攻撃の起点としては物足りない内容だった。

【左ボランチ】山口蛍(71分途中交代)=5.0点

攻撃の起点になれないことは織り込み済みとしても、守備面でも存在感を見せられなかったのはマイナスポイント。柴崎とのコンビネーションにも課題を残す結果となった。

【右MF】堂安律(71分途中交代)=5.0点

立ち上がりからゴールへの高い意欲を見せて3本のシュートを記録。ただ、後半は時間の経過とともに消えてしまった。逆サイドへの展開など、プレーにバリエーションが必要。

【左MF】中島翔哉=5.5点

ドリブルとパスを巧みに使い分け、前半は攻撃の起点としてチャンスによく絡んだ。後半は守備に追われてしまい、ややトーンダウン。ただ、不可欠な存在であることは証明した。

【FW】南野拓実(79分途中交代)=5.5点

トップ下ではなく、鈴木との2トップで先発。アグレッシブなプレスバックによって守備面で貢献。前半は惜しいシュートもあったが決め切れず、シュート精度に課題を残した。

【FW】鈴木武蔵(65分途中交代)=5.0点

この試合が代表デビュー戦。持ち前のフィジカルとスピードを生かしたかったが、コロンビアには通用せず。29分の好機、38分の決定機など、クオリティ面で多くの課題を残した。

【FW】香川真司(65分途中出場)=5.5点

森保ジャパン初出場。攻撃が停滞する中、失点直後に登場。前線を活性化させるプレーが期待されたが、決定的な仕事は出来なかった。W杯時のようなクレバーな動きもなかった。

【MF】乾貴士(71分途中出場)=5.5点

途中出場ながらアグレッシブに動いて攻撃を活性化させた。ただ、決定的な仕事は出来ず、後半92分にカットインから小林のシュートをお膳立てしたのが唯一の見せ場だった。

【MF】小林祐希(71分途中出場)=5.5点

久しぶりの代表復帰だったが、テンポよく周りとパス交換をしてリズムを作り、山口とのスタイルの違いを見せたことはプラス材料。試合終了間際のシュートは決めたかった。

【FW】鎌田大地(79分途中出場)=採点なし

プレー時間が短く採点不能。南野に代わって代表デビューを飾った。

【DF】安西幸輝(89分途中出場)=採点なし

プレー時間が短く採点不能。試合終了間際に佐々木に代わって代表デビューを飾った。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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