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小学校の「通知表」中学受験に影響?評価は先生の主観?どう受け止めるか

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
評価は気になる。でもそれはどうやって行われているのだろう?(提供:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

年度末は、通知表をもらう季節。クラスに30人もいて、先生は細かいところまで把握して評価しているのかと、モヤモヤする保護者もいるだろう。特に小学生は、学力というよりは、先生の主観によるところが大きい。今年度は、コロナ禍で休校し、学校とのかかわりや学習の量・宿題の有無に差が出た。学校再開後も、ソーシャルディスタンスを気にしながらの集団生活で、体育や音楽・街に出る学習の簡略化など、影響があった。そもそも小学校の評価をどう受け止めればいいのだろう。家庭教師歴40年超の西村則康さんの話を紹介する。

●アクティブラーニング、評価難しく

──小学校の通知表はどうなっていますか。先生は細やかな評価はできるのでしょうか?

 昔のような1~5段階の評価ではないですね。1年生の1学期は差をつけず、2学期から「よくできる・できる・もう少し」といった3段階になるところが多いようです。中には、段階をつけず、児童のいい部分を先生が書きこむ学校もあります。

 確かに、先生が評価しきれない部分はあります。今までは、「ペーパーテストで〇〇点以上がこの成績」といった指標が中心でした。ところが最近では、議論やグループワークの「アクティブラーニング」が盛んになり、みんなで行動する授業を、先生が観察して評価をつけるように変わってきている。

 高学年になると、みんなで考えましょうというグループディスカッションがあり、リーダーシップを取れているか、相手の行動によって反応を変えられるかという点が見られます。児童の共感力が重視される傾向があります。

 先生は、全員のそういった態度まで把握しきれないでしょう。先生の「理想とする子ども像」で評価せざるをえません。親も子も、「協調性」や「自主的に発言するかどうか」の△や×を気にしないでください。それでなくとも、小学校の先生は、提出する書類が多くて忙しいのですから。

通知表に一喜一憂してしまうのは自然なことだが…。
通知表に一喜一憂してしまうのは自然なことだが…。写真:アフロ

●「小1の壁」は、実は親の壁

──通知表だけでなく、音楽会や運動会の選抜に、作文・絵の貼り出し。先生の主観で決められているようで、不満を感じる保護者もいます。

 小学校の新しい生活にとまどう「小1の壁」は、実は親の壁なんですね。幼稚園や保育園では競争がなかったのに、学校では点数をつけられる。子どもを信じる気持ちが大きかった親も、信じられなくなり、学校の評価でぐらぐらしてしまうんです。

 学校での競争は、昔からありました。今はかけっこで順位をつけないとか、競争させない風潮もあるものの、多くの学校で運動会や行事での選抜はあります。先生は、あまり意識せずに決めていると思います。この子はうまくやるんじゃないかと、先生の評価軸や都合で選ぶのではないでしょうか。明らかに公平でなく、選んだ基準がわからないケースもあるでしょう。

 こうした選抜を目の当たりにして、親は他の家庭と比べる気持ちが強くなり、競争心を刺激されてしまいます。一方で子どもは、小1で環境の変化に直面しますが、まだそこまで競争心はありません。小3ぐらいになると、集団の中での自分の位置を意識し始めます。そんなとき、親は学校の評価に左右されず、「子どもが前より向上した、向上するために努力した」部分を認めてあげましょう。

●かけっこ・鉄棒にコーチつける?

──プロに頼んで課題をクリアするという話も聞きますが。

 最近は、学校の運動会に備えて、かけっこ教室がにぎわっています。鉄棒のコーチをつける親もいますよ。「小学校は競争する場だから、勝ちたい」と、こういうことが盛んな地域があるんです。特に運動の分野は、順位を発表され、苦手な子にとっては苦痛だからです。

 でも結果にこだわりすぎるのは、子どもの全体を見ていないということです。鉄棒やかけっこだけに目が行ってしまい、子どもは様々な段階を経て成長していくということを、見落としてしまっているのではないでしょうか。

 そうやって親が用意していると、すべて受け身になる「小さな王子様」タイプの子が増えます。言われないとやらず、探究心がない。失敗する前に全て準備され、予行練習してクリアできてしまいます。自立心が芽生える年齢になると、反抗するか、そのまま親の敷いたレールに乗っていくかに分かれますが……。いまや大学受験の予備校も、手取り足取り型が人気です。

親子で楽しく見られるメッセージ性のある通知表がほしい(いらすとやサイトより)
親子で楽しく見られるメッセージ性のある通知表がほしい(いらすとやサイトより)

●小学校の評価は気にしすぎずに

──中学受験の際に、小学校の成績や生活の様子をまとめた「内申点」が重視される学校もあります。

 中学受験に影響するほど内申点を低くされる、という心配はしなくて大丈夫でしょう。まれに先生が中学受験に反対しているとか、お子さんに何かの問題があるとかで低くなるケースもあります。でも一般的には、内申点は平均より少し良い程度であればいいと思います。

 低学年の場合、一番大事なのは、いわゆる「読み・書き・そろばん」。気にすべきは、テストや小テストの点数を中心に表れる部分です。「正しく計算することができる」といった項目を見てください。

 基本的に、小学校の評価は気にしないことです。親は過剰に反応せず、参考程度に考えるのがいいですね。

西村則康さん・プロ家庭教師集団「名門指導会」代表・塾ソムリエ。40年以上、難関中学・高校受験指導を続ける。また、親子のコミュニケーションや家庭環境が学習に与える影響についての提言を続ける。著者に「中学受験は親が9割」シリーズ、「中学受験基本のキ!」など。

(2019年10月5日、Forbes JAPANに掲載した記事に加筆)

 コロナ禍の今、改めて西村さんに尋ねた。「コロナ禍で、子どもと接する時間が増えた家庭が多い。そのために、家庭のコミュニケーション力が、子どもの学力に直接関わるようになってきたと感じています。『細かい欠点は目をつぶり、大らかに子どもの長所を伸ばしましょう』いうメッセージを伝えたい」と話している。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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