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続くオンライン授業、親の叫び「大学生に日常生活を」カラ家賃も払い続け

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
(写真:アフロ)

秋学期が始まり、新型コロナウイルスの影響で、オンライン授業が続いている大学も少なくない。ある地方都市に住む母親から、「大学生にも小中高生のように日常生活を送らせてあげたい」とメッセージが届いた。大学1年生の長男は、上京した直後に実家に戻り、大学へは入校禁止、新歓・サークルもなし。新しい友達もできない。オンライン授業のため、実家にひきこもって過ごした。あと半年も、ほぼオンライン授業の生活になるという。学費だけでなく、東京で借りた部屋の家賃を支払い続け、進学を支える親の立場から話を聞いた。

→参考記事「オンライン授業9割」早大の秋学期も…学生の本音・願い・おカネのこと

〇上京後、すぐ実家に戻った

引っ越しや、新学期のことを教えてください。

「息子は、東京都内にある私立大の1年生です。地元の大学より都内に行きたい!と言い張って、進学しました。今となっては、地方の国立大であれば、キャンパスライフを味わえたのではと思います。すでに、対面授業をしているそうなので。

2月末に部屋を探して、3月末に引っ越しました。スーツを買った数日後に、入学式中止の連絡があり、4月初めの新入生のガイダンスも中止と聞き、実家に帰ってきました。ガイダンスは、オンラインになりました。

コロナのことを考えて、引っ越し自体を中止しようかと思ったけれど、すでに荷物を出していたし、家電類も到着日指定で購入済み。引っ越し日は変えられなかったため、とりあえず一緒に部屋を整えに行きました」

「当時、感染が拡大していた時期だったので、東京に行ってきたことは地元では口に出せない雰囲気でした。こっそり行ってこっそり帰って来た感じです。

当初は4月の10日頃に、ガイダンスがあるかもしれないと聞いていたので、その頃にまた上京すればいいねと話していました。それが中止になり、GW明けからオンライン授業しますという連絡も、GWに入る前ぐらいまで連絡がなく、長男は実家で悶々としていました

東京には、引っ越しの日までしかいなかったです。東京でロックダウンするかもしれないという噂があったので。引っ越しが済んだら、さっさと実家に戻りました」

〇対面授業1回・家賃40万支払い

前期はどんな生活を送っていましたか。

「前期に1回だけ、対面授業があり、7月に2週間、上京しました。その際、借りたままにしている部屋に、ネット回線を引きました。費用は、今も払ってます。

9月までに、払った家賃は40万円弱です。光熱費は基本料金を払っていると思います。前期に滞在したのは、1回だけです。長男は、『一度、東京に住んでみたい気持ちもある。絶対、行きたい!』というので行かせました。東京生活を体験して落ち着いたのか、実家にいることについて、不満を言わなくなりました。それまでは悶々として見ていて辛かったです」

「大学のオンライン授業は、月曜日から金曜日まで、1日に多いときで4コマ、少ないときで2コマでした。動画配信のときは、あとで見ると言っていました。割に、ライブ授業が多かったと思います。顔出しをする授業は1個か2個。顔出し・会話型のときは、着替えてパソコンの前にいました。

地元の友達とは、連絡を取っていません。大学で新しい友達を作るのを、楽しみにしていました。会社の同僚のお子さんたちは、やはりカラ家賃を払って、実家でオンライン授業を受けています。文系のお子さんは対面授業もないそうです。

サークルも入りたかったけれど、サークル活動も禁止、入校禁止。図書館も使えないと言っています。2週間、東京にいた時は、友達もいないし誰ともしゃべらないし、感染が怖いから出かけられないし、という毎日だったようです。実家にいて、家族と話しているほうがまだましかという感じです」

〇「なぜ引きこもり?大学開けて」

親として言いたいことは?

早く大学を開けてということです。中3の下の子は、受験生だけど学校生活を満喫しているのに、大学1年生だけ、なぜ引きこもり状態にさせるのだろうと思います。

小中高でできるのだから、大学生も授業を分散して、マスクさせてやってもいいのでは。経済を回さないといけないと、いろいろ緩和しているなら、大学生の1年は今年しかないのだから、大学も緩和して欲しい」

サークル活動も、させて欲しいなと思います。自分が大学生の時も、飲み会やサークルが楽しみだったので、クラスターになったらという心配はわかりますが…。

今年のサークルは1年生が入ってなくて、どうなるんだろうと思っています。長男も、サークルは決めていないみたい。入学前に、『サークルは場が大事だから、新歓期にここはいいなと思うところを探せばいい』とアドバイスしていました。その新歓期がなくてかわいそうです」

〇免許取得で目標…家賃支払いは継続

後期以降の見通しはたっていますか。

「後期もオンライン授業で、大学1年生の間、ずっと実家の田舎で過ごすかもしれません。理系で実験等の対面授業があり、11月と12月に予定されています。10回に満たないので、新幹線で通うか、借りている部屋に滞在するか考えてます。

7月に戻ってきて、当分大学に行けないと諦め、地元で自動車免許を取りに通っています。春から自宅にこもりっぱなしでしたが、出かける用事ができて楽しそうでした。対面授業の日程が決まったら、地元でアルバイトも探してみようかと言っています。

東京で借りている部屋は、家賃と光熱費・通信費を払っていて、使っていないのにと思うと辛いです。解約しようかとも思いましたが、来春には住めるのかも、と思うと、違約金や引っ越し代を考え、継続することにしました」

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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