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習い事も「オンライン化」…コロナ再拡大で「新しいやり方」の模索続く

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
ピアノのオンラインレッスンも人気。手元を映せば見てもらうこともできる(写真:アフロ)

新型コロナウイルスの影響で、習い事も休みになり、その対応は様々だった。オンラインレッスンを取り入れ、緊急事態宣言が解除されて対面レッスンを再開してからも、新しいやり方を試みているところもある。習い事は、大事なコミュニティ活動の一つとも言える。大人にも子どもにも人気の高い、ピアノやダンス・エクササイズ系の習い事について、現場の声を紹介する。

〇今からでも「オンライン化必要」

ある都市で長年、ダンスを教えている女性は、6~7月、Wi-Fiやネット環境の整備に取り組んでいるという。コロナ禍で、レッスンスタジオに生徒が来られなくなった。自粛期間が過ぎても、戻ってこない。保護者の収入が減った、家族が在宅ワークなので気を使って外出しにくい、衛生面が心配、と事情があるようだった。

子どもたちもダンスができなくなって、心身共にストレスがたまっているのではないかと心配になり、「オンラインレッスンをやってみたい」と思うように。またコロナや災害の影響で、出かけられなくなることも考えられる。

ビデオ通話Zoomのような双方向の形がいいか、インスタグラムやフェイスブックのライブ配信がいいか。告知はどうやって?月謝は? 先進例を参考にしながら、手探りしている。

〇月謝の対応も様々

コロナの影響で3月から休校になり、習い事も徐々に開けなくなった。3月中は、まだ続けているところもあったが、4月の緊急事態宣言以降は、ほとんどが休みに。月謝に関しては、「再開後の分にあてる、返還する、支払わなくていい」など、納得できる対応が多かったと聞く。「先生の生活も、あるだろうから…」とは思っても、返金・説明がなかったところには不信感を持ち、休会した人もいる。

オンライン化は、5月に一気に進んだと思う。4月は、「5月になれば、また活動できるようになるだろう」との雰囲気があり、「とりあえずお休み」の教室が多かった。ところが、緊急事態宣言が延長になり、「何もないのはつらい」と、生徒側から声が上がり、先生たちも立ち上がった。

特に、ダンス・エクササイズ系や、ピアノや楽器の教室は、Zoomによるオンラインレッスンを導入したところが多かった。その現場の声を紹介する。

〇振替依頼しやすくなった

ピアノ・楽器(子ども)

「月謝の返金はなく、後日の振り替えと説明されています。スケジュールが詰まっていて、振替できないと思っていたところ、5月からZoomでのオンラインレッスンができるようになってよかった」

「Zoomの場合、子どもの手元が映るようにスマホをセット。弾いてみせると、先生が、違う音を指摘し、良くなるのがわかる。オンラインならではの、効果は感じます」

「教室再開後も、密を防ぐためZoomを推奨されています。子ども本人は、先生に直接、教えてもらいたいといい、Zoomと対面を交互に依頼します。オンラインでも月謝が同じなのは気になるけれど、コロナでZoomが導入されたことで、私用で休む際の振替レッスンがお願いしやすくなりました。以前は、休んだ分は、そのままだったので」

「スカイプでのレッスンは効果的で、上達しました」

「オンラインだと、指づかいや、音色が伝わらないと思うので、レッスンは休ませ、自主的に練習しています」

「個人レッスンは、換気や鍵盤の消毒など気を付けていますが、親子のグループレッスンが密になっている。対策はしているのでしょうが、入れ替え時間に、狭いスペースに密集してしまい、保護者の意識が緩くなったと感じます」

〇画面見えない…でも継続しやすい

ダンス・エクササイズ(子ども・大人)

「レッスン場は、ドアを締め切り、人との距離も近い、まさに3密の環境です。3月以降、公共施設が借りられなくなったこともあり、練習ができなくなった。子どもの運動不足が深刻になり、先生がZoomの準備をしてくれて、5月からオンラインレッスンがスタート。

狭い自宅で、小さな画面を見ながらだったけれど、なじみの先生や仲間の顔が見えて、体を動かせてリフレッシュになった。つながり作りという目的では、今後も役立つと思います」

「Zoomのトライアルレッスンがあったものの、4~5月はレッスンは開かれませんでした。音響や見え方、生徒側の通信環境、料金など課題があったのでしょう。6月、衛生面に気を付けてレッスンを再開し、同じ月謝でZoom参加もできるようになりました。

Zoomは、仲間との一体感が得られる。お互いに知っているから、できることかな。いきなり、知らない人とのオンラインレッスンは気を使いそう」

「細かい振り付けは、画面では見えにくい時もあります。でも、レッスンに出向く交通費や体力、家事・育児との兼ね合いを考えると、オンラインという選択肢があるので、続けられます」

〇ミュート・オフ使いこなす

ヨガ(大人)

「先生が個人で運営しているオンラインヨガは、自粛期間が終わっても希望者が多く、今後も社会情勢がどうなるかわからないため続けるそう。自分の部屋で完結するし、ジムに行くと、着がえやソーシャルディスタンスを気にしなくちゃいけない。料金が手ごろなのもいいです」

「自分の姿を映さなくてもいいし、音声も聞こえないようミュートにできる。子連れで参加しているグループと一緒だったときは、にぎやかで集中できないと感じましたが、すぐミュートになったので、先生のガイドに集中できました」

「1人で動画を見ながらエクササイズって、ハードルが高いです。生徒は、これまでに先生と顔を合わせている人ばかりなので、安心」

「フェイスブックライブで、無料のヨガの企画に何回か参加しました。視聴のみで、Zoomのようにログインしなくていいので、気楽でした」

〇リアルな関係が基本

筆者自身、いくつかオンラインのレッスンに参加して、救われた。ある程度、外出できる今も、元気が出ない日は、オンラインレッスンを利用する。

子どもも、休校中に外部とのかかわりがほとんどなかった期間を経て、オンラインのレッスンを受けると、人とのかかわりを取り戻せて、笑顔になった。施設が借りられない間も、オンラインレッスンを受けた。

改めて考えてみると、もともと顔を合わせていた「リアルな関係」があるから、オンライン化もうまくいったように思う。

〇プライバシー保護も考えて

安心できるオンラインコミュニティ運営に、ポイントはある。筆者も、初めての関係の中でお声かけいただき、仕事の一環でオンラインイベントに参加した際は、緊張した。でも主催者は、プライバシー管理に気をつけ、ミュートの操作やルール説明をしていて、トラブルはなかった。

例えば、「スクリーンショットや録画は、許可された人のみ」と決め、名前・顔出しの確認をする。ずっと画面に映ったり見つめていたりすると疲れるので、流れに応じて画面オフにする、バーチャル背景を使ってプライバシーを守るなど、対処法がある。

習い事であっても、プライバシーが映ってしまうので、バーチャル背景が使いにくい時は、背景を壁やカーテンにするなど、準備を。

〇「リアル&オンライン」両方の構築

「緊急事態・休校・自粛の数か月をお休みにして乗り切ったから、今後も同じ」というスタンスの教室もある。新しい方法の構築には時間がかかり、早く始めたほうがいいと思うので、「オンラインや遠隔の指導を、考えてみてください」と提案したが、対面指導だけ続ける先生もいる。

「元に戻そうとするのではなく、新しいやり方を考える」。仕事・学校・習い事・コミュニティ活動…どの分野でも、この考え方で、オンライン環境を整えれば、コミュニケーションの選択肢が増える。

たかが習い事、ではなく、今や大事なコミュニティ活動の一部であり、心身の健康を保つのに欠かせないものだ。リアルな関係もオンラインのつながりも、両方を築いておけば、いつでも切り替えができる。感染のニュースを目にするたび、今からでも準備が必要だと、痛感している。

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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